「先生、あの、プラ板同士の合わせ目消しの方法が自分でも定まらなくて……」『なに? プラ板同士の貝合わせがさだまさし
?』「会長! 自分が作ったガンプラ見てください! どこか変なとこありますか!」『どれどれ……。うん、良いガンプラだね。ディテールの彫り直しと追加のスジ彫りが破綻無く合わさってる。変なところなんて無いよ。自信もって大丈夫』「テンドウ先生、私のノーハンドスジ彫り見て貰っても良いですか? 自信はあるんですけど、有識者から見るとどう見えるかの意見が欲しくて……」『女の子はテンドウちゃんで良いから~! ……で、なに? ノーハンドの裏スジ? 昼間からナニ言ってんだよ!』
ナニ言ってんのはアンタの方だ。
突然の自己紹介と人物の登場に1度はざわついた教室内だったが、『プラ板を用いたガンプラの製作』という授業の内容が出されてからは生徒達の関心は授業へと向く。
流石に世界最高峰のガンプラ教育機関。その3年生ともなれば生徒の全員がガンプラ馬鹿だ。
「……生徒会長」
リュウの呟きを皮切りに広い作業机に座る3人も、会話では無く自身の感想が呟きとして漏れる。
「間近で見たん初めてや……」
「萌煌学園で一番強い人……」
「特進クラスの教諭テンドウ先生……」
『…………化け物だ』
そしてハモった。
そして偶然にも4人の呟きを小耳に挟み、偶々近くを通り掛かった生徒会長が足を止める。
「おや、君は……」
生徒会長がコトハの顔を数瞬眺め、やがて微笑みに変わる。
「コトハ・スズネさんだよね。遅くなってしまったけど春のシンガポールでの大会おめでとう。1位を取ってくれたのは同じ萌煌の生徒として嬉しいし誇りに思う」
暖かな言葉だった。
心の準備が出来ていないリュウを含めた4人は言葉に詰まり、声を掛けられた張本人に至っては、はわわわと口をくにゃくにゃさせて目がグルグルになってしまっている。
「かっ、会長……!」
コトハは乾いた声をやっとの思いで吐き出し、続く内容に3人は耳を澄ます。
「わ、──────私とガンプラバトルしてくださいッッ!!」
な──────ッッ。
「な~~~~にを言っておるか馬鹿もんがぁ!! 相手はこの学園の生徒会長だぞ! お前のような頭パッパラパーがバトル挑んで良い相手じゃないわぁ!」
「だ、だってだって師匠! ……じゃなくてリュウ君! 生徒会長だよ!? こんな機会逃したら次会えるかどうかも分からないし、それに何か身体が戦いたいってウズウズしちゃって!」
「そ・れ・で・も・だ! 良いか? 会長はもう既に
少女の肩を揺らしてリュウは指摘する。
ボクシングのプロが一般人に対して拳を振るう事が重罪なように、ガンプラファイターのプロが一般人と試合をする事は世間的にタブーとなっている。プロということはスポンサーが彼らには付いており、万が一野試合に負けた上にそれがネット上に晒されたりもしたらプロ個人だけではなくスポンサーを初めとした多くの人間に迷惑が掛かる。
たかがガンプラ、されどガンプラ。あくまでプロを名乗るなら振る舞いもまたプロで無ければならない。
───────が。
「うん。良いよ。今からにするかい? それとも日を改めるかい?」
「ほら生徒会長もこう言ってんだろ! お前もプロ目指してんなら少し頭冷やして……って、え?」
「エイジ……こいつは面っ白い事になってきたで」
「良しマルヤマ、カメラを回せ。このバトル、いずれプレミアが付いて膨大な金額で取引出来るぞ……!」
席から少し離れた男2人がヒソヒソと何かを話しているが、リュウの頭には入ってこない。
今しがた生徒会長が良い放った言葉が脳内でリピートされ、少年は生徒会長へ振り返る。
「いっ、良いんですか!?」
「何がだい? 僕は構わないよ。寧ろ嬉しいと言っても良い。野良のファイターとバトルするのならそれは少し考えちゃうけど、同じ門を潜った仲でのバトルなら何も問題はないだろう?」
それに、と付け加えて生徒会長がその朗らかな雰囲気を纏ったまま、一切の嫌みや疑問を持たず良い放った。
相対する瞳と瞳。
「肩書きに懸けて、僕が負けることは無いからね」