ガンダムビルドアウターズ   作:ク ル ル

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6章8話『北条院ネネ』

(わたくし)の名前は北条院ネネ。初等部の身でありながら高等部の学舎に足を踏み入れた事の非礼を詫びると同時に、リュウ・タチバナ。貴方に言いたいことがあってここまで来た次第ですわ」

「この(わたくし)と、ガンプラバトルなさいっっ────!!」

 

 そう高らかに宣言した目の前の少女。

 見てくれは初等部の3年生あたりだろうか、ナナと同じ位の背丈と制服を身に纏うも気に掛かったのは名前とお嬢様めいた口調。紫のドリルツインテから発せられる威圧感は言わずもがな。

 指を刺され困惑する中、隣のエイジが眼鏡の位置を正しつつ少女へと問う。

 

()()()? 萌煌東西南北の、あの北条院か?」

 

「いかにも、ですわ。そして気に食わないですわねその言い方。北条院を他の家名と一緒にするなんて、眼鏡の貴方

 ナンセンスでしてよ」

 

「これは失礼した。いっしょくたにした言い方は確かに俺が悪い。……それで北城院さん、リュウが何かやったんですか」

 

「……そちらにいらっしゃるナナ・タチバナさん。彼女に正式な決闘を申し込んだところ頑なに断られまして……。(わたくし)とて北条院が娘、相手の物言いを理解した上で事に及びましてよ」

 

 リュウに指された指が次にナナへとビシィ! と向き、不敵な笑みを浮かべて胸を張る。

 

「さぁ、これで言い逃れ出来ません事よ! ナナ・タチバナさん、そしてリュウ・タチバナさん、ガンプラファイターとして申し込みます。この(わたくし)と正々堂々ガンプラバトルなさいっ!」

 

 いちいち効果音の付きそうな振る舞いがいかにもお嬢様らしくリュウは苦笑い。

 北条院という名前は萌煌学園に通う生徒なら知らない人間が居ない程に有名であり、惰性で学園生活を続けていたリュウでも多少の知識は入っていた。

 詳しくは知らないが、()()()()()()()()()()()()()()。彼らに干渉するのは面倒だと、そう自身に常識付けてリュウはこれまで生活してきた。

 家に歴史あるいは力がある家系は日本における名前の表記を旧体制で記すことが許可されており、その背景には企業的にも政治的にも莫大な力を持つ存在がおり、仮に盾を付こうとしようものなら即座に社会的に抹殺されるという噂さえ流れている。

 

「え、と」

 

「日時は本日の放課後。そうね、ギャラリーも多い方が良いと思うから体育館で仕合いましょう!」

 

 言い淀むリュウ。

 断れば反感を買い、ガンプラバトルになってしまえば()()()()()()()()()()()()()

 残された道は、接戦を演じてその末に、負ける。

 

 それしかないと判断し乾燥した唇を開いて返事をしようと────。

 

『ちょ~~~っと待ってくださいっっ!!』

 

 第一印象は小動物の鳴き声だった。

 兎のようなふわふわした声は北条院ネネの後ろから聞こえ、その場の全員が声の方へと振り向く。

 またもや初等部の少女。ちっこい身体の黒髪ショートはいかにもな初等部で、腰には大きなウエストポーチを付けて肩で大きく息をしていた。

 

「やっぱり3号棟(ここ)にいたんですね! ほら、先輩達に迷惑だから帰りましょ! お昼の授業の準備私たちの班なんですよっ!」

 

「なっ!? アオカさん!? は、離しなさいっ! (わたくし)はいちガンプラファイターとして正式な決闘を申し込むためにわざわざこんなところまで!」

 

「だ~めですっ! 次の授業トウドウ先生なんですっ! 準備に遅れたら失望されちゃいます!」

 

「トウドウ教諭!? 最優の……、忘れていたわ…………それもそうね。あの方がいらっしゃる授業ならば、その準備は最善を尽くさねば北条院の名が廃りますわね……」

 

 もみくちゃになっている少女達のやり取りを眺めていると傍らの銀髪の少女の視線が自身に向けられている事にリュウは気付く。

 初めての学校生活。初めて出来たクラスメイト。

 彼女達とどう接したら良いのか、と。無表情染みたナナの視線が僅かに困惑の色を滲ませてそう言っていた。

 

「仲良くしてこい。教えただろ?」

 

「はい。……『大事なのは歩み寄る事だ。相手を理解する為に傷付く事を恐れないで近付く事だ』、ですよね」

 

「そだ」

 

 頭をくしゃくしゃと撫でると少女の口角が上がり心地良さそうに目を閉じる。

 

「行ってきます」

 

 そう呟いてナナも少女達の輪に加わり、どうやら話し合いは取り敢えず自分達の校舎へ戻る方向へと纏まったようだ。

 

「リュウ・タチバナさん、この話はまた後日!」

 

 指を指しながら廊下へ消えていくドリルツインテを複雑な心境で見送ると、床で息を潜めていたキノシタが台車に仰向けで寝そべったまま姿を現す。

 軽いため息を付いて、彼もまた少女達が出ていった廊下へと視線を向けた。

 

「リュウ。お前もまた厄介な奴に目を付けられたな」

 

「…………あぁ」

 

 リュウにとってはキノシタも充分奇妙と言う意味で厄介なのだが。

 新学期初日の昼下がりからどっと疲れが肩にのし掛かってくるようで、少年もまた溜め息を教室へと深く吐いた。

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