ガンダムビルドアウターズ   作:ク ル ル

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6章10話『狙撃とはなんですか。その前に』

狙撃機と一言に纏めても、狙撃に特化した機体と狙撃()出来る機体の2種類が存在する。

 その点相手の機体は恐らく前者であり、戦闘前に閲覧したデータを見るに相当()()()()機体だ。

 

「ジム・コマンドの改造機に75mmスナイパー・ライフルを持たせた機体か……。MSV設定か? あの年齢ですっげぇ発想だな」

 

 エイジと話が合いそうな子だなと思いながら、普段扱う機体よりも重圧な駆動感を感じつつ操縦桿を緩やかに前へと傾ける。

 選んだ機体はシンプルにザクⅡF型。レギュレーション400の中で最も知られている安定した操作性と多岐に渡る火器を装備する事が可能な、初心者からベテランまで愛用する説明の必要が無いほどの傑作機。

 今回は120mmザク・マシンガンとヒート・ホーク装備のシンプルな武装だ。

 

「バトルフィールドはシドニー。ミノフスキー粒子は散布されている設定。さて」

 

 目についたビルへ背を預け影から戦場を見渡す。

 ザクのモノアイが静かに光を増して、得たマップ情報が正面モニタ右上に表示され顎に指を添えた。

 

 ここで仮に機体を走らせて位置を知らせたとする。そこを相手が狙撃して運が良ければそこでバトル終了。初撃を外しても距離のアドバンテージは相手にあり、そこで次弾を撃つか次の狙撃ポイントへ身を潜めるか、どちらにせよ考えられる戦法はここらが一般論であり、アオカの勝率が低い点はまずここの考え方が違う可能性があった。

 

「そろそろ動くか」

 

 マップ情報も得た。こちらも狙撃機の狙撃ポイントに選ばれそうな箇所を数点見付け、まずはそこへ。

 ザクがその巨体をビルから離すと瓦礫とも言えない僅かな残骸が欠けてそれが意識の切り替えとなった。

 

 操縦桿を、前へ押し倒す。

 

 足裏と機体背部のバーニアを最大駆動させたジャンプで前方へと前進。第一の狙撃ポイントへの強襲だ。

 

「……、ここじゃない? いや、念には念を」

 

 ビル郡に紛れた建物の屋上、立ち並ぶ建造物を盾に出来る造りのそこへ向かって乱雑に撃発(トリガ)

 射撃で銃身がぶれないよう両手でザク・マシンガンを構えての射撃はおおよそ予想通りの射線で狙撃ポイントへと着弾した。

 

『ひゃ~~~~~~っっ!!』

 

「!!?」

 

 耳をつんざく声に思考が一瞬パニックに。

 今しがた聞こえた少女の声、そこに掛かったエコーエフェクトは間違いなく外部スピーカーがオンになった状態の声だ。

 こちらも外部スピーカーをオンにして声を張る。

 

「アオカちゃん対戦中はスピーカー切った方が良い! 外部スピーカーは連絡の最終手段だから後でデフォルトでオフにしとけ!」

 

『はひっ!! すみませんすみません!! えぇと、スピーカーの操作はどこだっけ、ええとええと』

 

「左の操縦桿を下に倒し続けると設定が出る筈だからそこから音声マークにカーソル合わせて項目に飛べる!」

 

『あっ! いけましたいけました! ありがとうございますっ!』

 

「礼はいい位置がバレるぞ! 狙撃機でしょアオカちゃん!」

 

『ごめんなさい! よしっ、これで切れたから、頑張るぞ私っ』

 

 張り切った声で宣言したが外部スピーカーがオンのままだ。

 少し面白いのでそのままにしていると正面モニタの映像が一際強い点滅光を捉える。

 

「アオカちゃんそれガイドビーコンね!!?」

 

『えっ! あ! なんかピコピコしてます! なんでですかこれ! 私のジムにこんな機能あったんですね!!』

 

「大体の機体に付いてるから! 待ってて今そっち行くからモニタの映像切っといて!」

 

『モニタ切りました』

 

「それは分かるのね!?」

 

『負けた後すぐ映像切っちゃうんですよ。大体対戦した人が屈伸したり動けない私に向かって射撃するので。ぐすん』

 

「泣くな泣くな! 今スピーカーの操作以外にも基本的な事教えっから!」

 

 …………………………

 

「アオカちゃんは、そういえばどうして俺を訪ねてきたんだ?」

 

「あっそうでしたそうでした! リュウさん、ありがとうございました!」

 

 操縦桿から手を離し、大きな兎のウエストポーチを揺らしながらアオカちゃんが勢い良く頭を下げる。

 リュウ自身、中等部高等部へ上がるにつれて下の学年との交流が減りこうして二人きりでまじまじと姿を見るのは本当に久し振りの経験だ。

 大きく開かれた栗色の瞳。太陽のように明るい人懐っこい笑顔。

 

「私、今日ナナさんに助けられて……お礼したんですけどお礼ならリュウさんにしてくださいって言われて……」

 

「あ、ありがとう? ナナが何かしたのか? 忘れた教科書見してくれたりとか」

 

「こんなこと初対面の人に言うのは変なんですけど……、わたし、あまりクラスに馴染めてなくて。けどナナさんがわたしの周りの空気を変えてくれてっ」

 

 確かにナナはマイペースなところあるから、そこが上手いことクラスに良い影響を与えたのか。と思いつつ昼に来た北条院

 名乗るドリルツインテの少女を思いだし頭を抱える。

 

「もしかしてネネちゃんの事で悩んでます?」

 

「……北条院とか旧名の人間に関わるとロクな事にならないってのが常識だからなぁ」

 

「でもネネちゃんは良い子なんです! クラスで一番弱いわたしにも話し掛けてくれるし、嫌なことしないですし!」

 

 そう言って儚げに笑う少女。

 似ているな、と思った。地元で元気にしているガキ達やカンナと。()()()()()()()をする人間は大抵何かを諦めている人間だ。

 筐体に反射する自身の顔が目に入りリュウはかつての自分を思い出す。自分もそうだった、と。

 

「アオカちゃん、良かったらなんだけど、今日あったこと教えてくれないか?」

 

「ナナさんの話ですかね。良いですよ!」

 

 ぱぁっと明るくなる少女はそのままはにかんで、歌をくちずさむように夕焼けの覗く雲間に紡ぎ始めた。

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