ガンダムビルドアウターズ   作:ク ル ル

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1章15話『求めていたものと逆』

「つまり、俺はガンプラ……アイズガンダムの思い出を思い浮かべてれば勝手にそっちが操作するって事だな?」

 

《正確には機体の構造と貴方の『観測』があれば、その情報を参照に私が最適解で敵を殲滅する事が出来ます》

 

「じゃああれか、例えると俺が火器の情報を送る生体ユニット、そっちが機体を動かすパイロット……か?」

 

《その認識で構いません》

 

「逆だよ!求めていたものと逆!普通こういうのって作った俺がパイロットだろ!?」

 

 ガンダムや他のロボット作品では男パイロットが操縦、女性やロボットが火器管制を努めるというのが一般的なはずで逆の例は少ない。リアルでのガンプラバトルでも少数だが2人1組のコンビで活躍するガンプラファイターも存在し多くは男性が機体の操縦、女性が火器管制というのが殆どのケースだ。

 しかしガンプラを作ったガンプラファイターが生体ユニット、その意識内の少女がパイロットとは如何なものか。自分で作ったガンプラは自分で使いたいというのがガンプラファイター兼ガンプラビルダーの性だ、製作したガンプラを自分より上手く使えるから寄越せ、お前は装備を思い浮かべろというのは生殺しにも程がある。

 

「第一、どうやって俺の体を動かすんだ?現に言葉は俺の意思で喋ってるし自由に体を動かせるぜ」

 

《敵を確認したら同調状態に移行します、負担が大きいので今は使用を制限しています》

 

 不安しかない。というか任せる方がおかしい。

 アイズガンダムを製作したのは間違いなく俺であり、カスタムした部分の特性や塗料による防御力の上昇、センサーに塗ったクリアカラーで向上した索敵能力。例をあげれば無数にあるが、それらの素組みとは違う性能を全て把握し、手足のように……とまではいかないが概ねイメージ通りに動かせる自信がある。

 

「条件がある」

 

《はい》

 

「最初は俺がアイズを動かす、もしピンチになったらそっちに操作を委ねるってのはどうだ?」

 

《分かりました》

 

 案外物分かりが良いことに安堵する。

 内心ではアイズガンダムの操縦権を渡すつもりなど毛頭無い。勘繰られる前に話題を変える。

 

「戦闘区域はここであってんのか?センサーは何も示してなかったけど……───

 

《この座標で正しいです》

 

 ぴしゃりと確信めいた声音。その自信がどこからくるのか興味が湧くが、詮索はやぶ蛇だろうと再びモニターへ視線を移す。

 

「そういえばそっち……ナナって敵を目視出来んのか?」

 

《はい、貴方の身体とリンクしているので視界がそのままこちらにも見えています》

 

 名前で呼ぶのは少し早いかな?と懸念してたが意外にもすんなり流され、調子に乗った俺は思いきり目を瞑る。

 

「見えてる?」

 

《何も見えません》

 

「はい目ぇ開けた!……見えてる?」

 

《見えます》

 

「はい目ぇ瞑った!……見えてる?」

 

《観測の邪魔です》

 

「ごめんなさい」

 

 怒られた、年端のいかない少女にマジのトーンで怒られた。

 謝罪の念を頭いっぱいに思い浮かべイメージを送る、すぐに《あ、いえ》と返答されやや気まずい空気。

 ───ナナはこの状態をリンクしていると言ったが『リュウ・タチバナの身体からくる情報』『リュウ・タチバナが記憶する機体情報をサルベージしそれらを戦闘中に最適解で行使する』、これらの情報を踏まえると完全にパイロット任せのシステムだ。仮に機体への理解が少ないパイロットだった場合、戦闘能力の低下が否めないのは確実だろう。

 

「あ、いや、ナナの事を悪く言うつもりは無いんだ。単純に少し不思議に思っただけで」

 

《……》

 

 返答はなく、再び静寂。

 黒の世界からここへ来て、なんとか場を和ませようとボケ等試したが帰ってくる返事は総じて無機質だ。

 

「ま、まぁ生きて帰ろうぜ?」

 

 口走った言葉に我ながらデリカシーの無さを否めず直ぐに後悔、ヘルメットに反射する馬鹿野郎の顔を睨む。

 年端もいかない少女が痛みに耐え、死ぬかもしれない実験に参加を強制され、恐怖を感じないわけがない。

 ……そしてそんな少女を1度は見捨てようとした自分が居たことを許せず拳を握る。

 

《右方向に極大照射反応!来ます!》

 

 ───けたましいアラームとナナの叫びで自己嫌悪が切り裂かれる。

 

「ぐぅっ!」

 

 握られた操縦棍を半ば条件反射で咄嗟に動かしスラスター、バインダーを展開、全力で上昇を試みる。

 視界が揺れる中、続いて異様な程の高音が聞こえ心臓が飛び跳ねる。ちらりと見えたそれは真紅の閃光だ。デブリを融解させながら尚もアイズガンダムを飲み込まんと迫るそれは嫌なほど知っている武装。

 遂にリュウの足元を抉り取っていった照射はデブリ帯を突き破り次々と破壊の軌跡を作り上げた。

 

《敵機接近しています!》

 

 ナナの声にレーダーへ目を動かす。型式番号が表示。

 やがて見えたシルエットに驚愕を隠せない。

 

「CB-001.5……!アイズガンダム!?」

 

 背部から凶悪とも思える深紅の粒子を続かせ、長年連れ添った機体がリュウへと迫った。


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