ガンダムビルドアウターズ   作:ク ル ル

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6章11話『鈴の音のような』

 好きって感情だけではこの世の中はどうにもならない。少なくともわたしはそう思うし、ここ萌煌学園ではそれが強いなと感じた。

 

 ジムが好きだ。狙撃機が好きだ。

 わたしが小さい頃。初等部に通ってるわたしが言うくらいもっともっと小さかった頃。

 世間は今も変わらずガンプラブームの真っ只中で、だから行く先々にはガンプラに関する物が沢山置いてあった。

 そんな中見掛けた1つの雑誌。ありふれた模型雑誌に載っていたありふれたキットの作例。

 

 RGM-79G ジム・コマンド。

 

 当時のわたしはガンプラどころかガンダムが何かすらあやふやで、だから雑誌の表紙を飾っていたジムが量産機のやられ役なんて事知る由も無くて、アレンジとして大型の狙撃銃を携えた作例をわたしは、きっと白馬の王子様が乗っている機体に違いないと思って帰りに親から元のキットを買って貰った。

 

「なんかちがうけど、いいや!」

 

 HGジム・コマンド(コロニー戦)を組んだ当時の感想。

 雑誌で見掛けたジムは色が違ったし大きな銃を持っていたけどキットを組んでみたら全くの別物で。

 それでも一番かっこいいと思った。

 大きなバイザーと大きな足に大きな盾。なのに持っているブルパップ・マシンガンは小さくて可愛い感じがして、そんなあべこべな見た目が凄い好き。

 それからわたしは記憶に残る作例を思い出しながら、あの大きな銃がジムスナイパーK9の銃の改造と言うことを突き止めて、わたしなりにあの作例を再現した機体を今でもガンプラバトルでずっと使っている。

 

 家族が萌煌学園に通っているという事でメリットがあったのか、わたしもなりゆきで萌煌学園に入学して。

 そこで初めて自分と周囲との違いを知った。

 周りの同級生は色んな賞を取っていたりガンプラバトルが強かったりガンプラを作るのが上手かったりするなか、わたしはポツンと1人だけ浮いていて、気が付けば周りから嫌煙されていた。

 

 そもそもわたしはガンプラバトルが弱い。

 工作の方は少しだけ自信があるけど、それでも他の生徒と比べれば平均レベルの域を出ずにいて。

 初等部の多くのガンプラバトルはレギュレーションフリーなのも相俟って、基本性能が劣るわたしのジムを味方に欲しいと思う同級生は誰も居なかった。

 

「はぁ…………」

 

 そして今日の朝、学校。

 自分の席に座って昨日の反省ノートを眺めているけど改善案が見付からず、仕方無しに机へジム・コマンドを置く。

 うん。いつ見てもカッコいい! 

 

「──ちょっと、何を1人でニヤついているのかしら? 朝からそんな不気味な雰囲気を隣で漂わせないでくれる?」

 

「あ、ネネちゃんおはよ~。今日も美人さんだね」

 

「ふんっ、(わたくし)が美しいのは当然でしてよ。この北条院ネネ、何時いかなるときも美を欠いたことはありませんわ」

 

「へへへ~、ジムさん今日もかっこいい~。カチャカチャ、ばきゅんばきゅん!」

 

(わたくし)への接し方が雑ッッ!! その振る舞いが不気味だということは自覚してッ!?」

 

 隣の同級生は北条院ネネちゃん。

 とってもガンプラバトルが強いのに工作も凄くて、色んな賞を取っているわたしの尊敬している人。

 他の生徒がわたしから距離を遠ざけるなか、ネネちゃんだけは変わらずに話しかけてくれる。

 

「まぁ、いつも褒めてくれるその姿勢だけは好感が持てるわ。お礼にとっておきの情報を教えてあげましょう…………知っているかしら? 今日からこのクラスに転校生が来るの」

 

「えっ? ……今日!? すごい急だね!」

 

「先週先生が言っていましてよ。全く、やっぱり覚えていなかったのね貴女」

 

「へへへ、皆やネネちゃんに倒された原因とか纏めてるので頭がいっぱいだったんだ……あぅ」

 

 自分で話している最中に悲しくなった。

 授業でのバトルではわたしを引いたチームが負けるのが定例で、それもネネちゃんと戦う時はこっぴどく負けてしまう。

 

「ナナ・タチバナさん」

 

「へ?」

 

「今日来る転校生よ。貴女みたいな鈍臭い生徒が居たらこのクラスの評判も下がってしまうわ。だから教えてあげたの」

 

「にへにへ~ありがとネネちゃん~」

 

「なんですのそのお餅みたいな顔はッッ!! もちもちした顔を近づけないでくださいましッッ!!」

 

 そうしてネネちゃんとやり取りをしているとクラスの中から嫌な視線が。

 じっとりと刺すようなクラスメイトからの視線が向けられている事に気が付いてお腹のあたりが痛くなる。

 たぶん、わたしの事が疎ましいんだと思う。

 けどそんなわたしに直接何かしようにも、学年内でも優秀なネネちゃんがわたしの近くにいるのでそれが出来ない。だからああやって遠くから嫌な視線を飛ばして、ガンプラバトルでわたしをけちょんけちょんにしてくるんだ。

 

「うぅ……」

 

「貴女って本当に顔の変化が早いですのね。お腹を押さえてどうしたのかしら、悪いものでも食べたの?」

 

「そういうんじゃないんだけど」

 

「あら。トイレに行く時間も無いみたいね」

 

「うぅ?」

 

「来たわよ」

 

 腕を組んだネネちゃんが特徴的なツインテールを少し揺らしながら片目で教室の入り口へと目を向ける。

 するとガラガラとドアが開いて担任のタケモト先生がいつも通り入ってきて、実験に失敗したみたいなボサボサな髪の毛を弄りながら教壇へと着いた。

 

「はぃ静かに、静か~に。はぃ元気があるのはとても良いことだけど、それを活かすのは授業の時にね。……と言いつつ君たちがソワソワする理由も僕には分かるよ。はぃ、来たよ。転校生が」

 

 丸眼鏡を光らせて微笑するタケモト先生。その表情は嬉しそうだ。

 さっきまでの喧騒が奇妙な静寂に切り替わり、程無くして開いたままの入り口からお人形さんみたいな白い綺麗な脚が一歩教室へと踏み込む。

 

「わぁ……!」

 

 脚から受けた可憐な印象はそのままに。腰まで伸びた白銀の髪と、澄み渡った青空のような蒼の瞳。

 そして彼女が着ている同じ服──学園指定の初等部が着る制服は絵本の中から飛び出したお姫様と思うくらい似合っていて。

 溜め息混じりに見とれるわたしに対して、隣のネネちゃんも腕を組ながら相手を観察するようじっと彼女を見詰めていた。

 

「はぃ。今日から皆のクラスメイトになるナナ・タチバナさんだよ。自己紹介出来るかな」

 

 そう促されると半歩前に出て一礼。そして彼女──ナナ・タチバナさんが印象に違わない澄んだ声で教室へと自己紹介を始めだした。

 

「ナナ・タチバナです。本日からここ、萌煌学園初等部3ーAに転校させて頂く事になりました。私自身至らない点が多くあり色々訪ねる事が多いと思いますが、その際教えていただけると嬉しいです。どうか皆様方、よろしくお願いします」

 

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