ガンダムビルドアウターズ   作:ク ル ル

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6章12話『転校生』

「ふわぁ~、ナナちゃん凄い人気だねぇ……」

 

「初めは大体あんなものじゃないかしら。どうせすぐに人だかりも消えるでしょう」

 

 ナナちゃんの人気は凄まじいものだった。

 さっきの自己紹介が終わって一時間目開始までの10分間、クラスの大半の生徒がナナちゃんへと殺到し、普段淡々としているタケモト先生もちょくちょく気に掛けているのが見てとれる。

 

「はぁ、ガンプラバトルもわたしよりも強いんだろうなぁ」

 

 自分で言って悲しくなり、ぐで~んと机に伸びる。

 容姿端麗、銀髪美少女の転校生。そんなナナちゃんに比べたらわたしはナメクジかミミズだろう。使う機体も空飛べないし。

 そのまま腰のポーチを開いて伸びた姿勢のままジムを取り出して眺める。

 地味で弱いわたしに似合う。そうクラスメイトから呼ばれた事もあるジム・コマンド。

 両手を伸ばして何気無く弄っていると。

 

「あっ」

 

 急に教室の入り口から男子が駆けて来て、運悪く私の机に当たってしまった。

 結構強い衝撃で、手の中のガンプラが落ちる。

 

「ちょっとオオジマぁ? 教室の中で走んないでよぉ~」

「へへ、わりぃわりぃ。アオカもごめんな? ほらよ、お前のジム。もしかしたらパーツどっか壊れたかも」

 

 丸坊主の男子がわたしのガンプラを投げ渡す。

 よくよく見れば男子を茶化した女子は共々同じように口の端を上げていて、タケモト先生からは表情が見えない位置取りだった。

 わたしはジムをキャッチして具合を見ずに再びポーチへ。

 

「ううん。わたしの方も不注意な取り扱いだったから」

 

「本当に傷無いのか?」

 

()()()()()()()()からガンプラ全体の強度の確保はしてあるんだ」

 

「んだよ、つまんねぇ」

 

 わたしにだけ聞こえるように吐き捨てて男子が去っていく。

 あの様子だと今日もまたガンプラバトルで狙われちゃうんだろうなぁ……。

 

「悔しくないのかしら貴女」

 

「あ、……見てたんだネネちゃん」

 

 アウターギアで何処かのガンプラバトルを観戦していたネネちゃんが視線も変えずにわたしへと投げた。

 悔しいか悔しくないかで言われたら、それはすっごく悔しい。

 

「でも、……わたしには皆を負かせる実力も知識も無いから」

 

「まだ気付いてないのね貴女」

 

 またポツリと投げられた。

 でも言葉の意味が分からずに首を傾げているとチャイムが鳴って。

 タケモト先生が淡々と授業を始めると同時、また嫌な視線がわたしに刺さっているのを感じた。

 

「はぃ、てな問題なんだが、アオカさん分かるかな」

 

「わかりましぇん」

 

 一時間目の半ばに飛んできた問題の内容がさっぱりだった。

 授業は社会の項目で、プラフスキー粒子に関する物だ。プラフスキー粒子が何かなんて知らないしガンプラが動けばそれでいいと思うわたしにとっては全くちんぷんかんぷんな問題だ。

 

「はぃもう一度言うぞ? プラフスキー粒子が発見されてから20年。今は2045年な訳なんだけど、そもそもこのプラフスキー粒子が見付かった場所は何処かな?」

 

「えと、アリアンですか」

 

「はぃ違うねぇ」

 

 クラスで失笑が起こる。

 

「じゃあアオカさん。分かる人にはぃ訪ねていいぞ」

 

 そうタケモト先生が後ろ頭を掻きながら言って、わたしは教室を見渡す。

 勿論誰も目を合わせようとはしないで、けどネネちゃんに聞くのも気が引けて。……わたしとネネちゃんが万が一仲良さそうに見えたら、ネネちゃんきっと迷惑だし。

 そういった訳で孤立無援なわたし。うさぎのウエストポーチは何も答えてくれない。

 

「え……?」

 

 今のは誰が声を上げたんだろう。

 わたしか、どれとも他の誰かか。綺麗に上へと伸びた手はナナちゃんの手だ。

 

「お! ナナさん分かるんだねぇ! じゃはぃ、頼むよ」

 

「はい」

 

 予想外のピンチの脱出に安堵して、わたしは立ったままナナちゃんを見詰めていた。

 そして「まず」と一息置いてからナナちゃんは口をもう一度開く。

 

「プラフスキー粒子が発見されたのはラグランジュ1。当時構想されていた国連宇宙基地の建設上地点です。正確な位置としてはラグランジュ1を中心とした外周部α、デブリネットの網に掛かっていたものを発見したとされています」

 

「パーフェクトだねぇ。教科書での答えは『宇宙』なんだけど習ってないところまで全部言ってくれたね、素晴らしい。はぃみんな拍手!」

 

 歓声が上がった。

 皆が笑顔でナナちゃんを誉めている中、ぽつんと立ち呆けているわたしも遅れて拍手を始める。

 すごい! ナナちゃんあんなこと知ってるんだ! 

 そんなことを思いながら拍手をしていると、ナナちゃんの目線がわたしの方へと向いた気がして。

 

「……笑った?」

 

「はぃ皆次に進むね~。アオカさんナナさんありがとうございました。座っていいよ~」

 

 ……………………

 

「ナナ・タチバナさん! 貴女に話しがあってここまで来た次第ですわ!」

 

 わたしのクラスメイト、北条院ネネちゃんがクラスに響く一際大きな声で宣言したのはお昼前の授業の休み時間だった。

 ちなみに「話しがあってここまで来た」と言っているけど実際の距離はクラスの端に行くだけの10秒程。カッコいい台詞回しが言いたいだけなネネちゃんであった。

 

「はい……? 話しとはなんでしょう。北条院ネネさん」

 

 そんなネネちゃんの高圧的な物言いにも静かで凛としたナナさんの対応。ナナさんの周りに居た同級生達が引いていく波の様距離を取っていく。

 わたしはネネちゃんが暴走しないか近くでスタンバイしながらやり取りを見守っていた。

 

「話してもいないのに(わたくし)の名前を覚えたその殊勝な姿勢、誉めてあげるわ」

 

 顔が赤いよネネちゃん。嬉しいんだね。

 

「けれど、(わたくし)を差し引いての先程の発言、許すことは出来なくてよ!」

 

「先の、発言」

 

「とぼけないでくれるかしら。先程のプラフスキー粒子の発見場所についてよ。(わたくし)が発言しようとしていた内容をほんの少し早く言っただけで得意にならないことね。今の貴女のようなちやほやされている状況もすぐ終わるわ」

 

 要約。(わたくし)より目立つな。

 

「ご忠告ありがとうございます。それで、用件とは」

 

 少し首を横に傾けながらナナさんが返答するも、それはネネちゃんが欲しかった返しではなかったようで。

 言うなれば軽くあしらわれたネネちゃんは手を握り締めて必死に次の言葉を探していた。

 

「わっ! (わたくし)とガンプラバトルなさいっ! 今! ここで!」

 

「お断りします」

 

「なっっ! は……っ!?」

 

「私は個人のガンプラファイターではありません。2人1組でガンプラファイター、そう登録してあります」

 

 咄嗟に出たネネちゃんの言葉にも即応するナナさんにクラスがどよめく。

 口をわなわなさせたネネちゃんが勢いのまま1歩詰めよって綺麗な金髪ツインテールがふりふり揺れた。

 

「ならその人間にも申し込むわ! このクラスに在籍した以上、ガンプラバトルの上下関係はハッキリさせるのがルールでしてよ!」

 

「ルール、ですか。それなら仕方無いですね」

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