ガンダムビルドアウターズ   作:ク ル ル

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6章13話『強襲の兄』

それが昼間のアレに繋がるって訳か」

 

「ご、ごめんなさいっ、でもネネちゃんは良い子なんですっ!」

 

 アオカちゃんが頭をぺこぺこさせている最中リュウは遠く聞こえる蝉の鳴き声を辿るように窓の外を見ていた。

 ナナが言ったとされる2人1組のファイターのガンプラバトルについて、そこの認識の解釈がまだナナが出来ていないのか。

 

「俺とナナは2人1組のガンプラファイターだけど、それは別に個人でバトルしちゃいけないってわけじゃないんだ」

 

「へ? そうなんですか?」

 

「公式の試合とかじゃそりゃダメだけど野試合なら全然問題ない。それこそクラスメイトとバトルしちゃいけないなんて不便だしな」

 

「ふむふむふむ」

 

 大きな兎のウェストポーチからメモ帳を取り出して書き込むアオカちゃん。

 ふと、リュウは気付いて目を開いた。

 そうか、ナナがバトルしなかった理由。()()()()()()()()()()()()

 

「タチバナさん……? どうしたんですか笑って」

 

「あ、いやなんでもない! ナナにも友達が出来たみたいで嬉しいな~と!」

 

 ナナの事だ、初出撃はちゃんとした形でやりたかったんだろう、と。あの感情が薄い顔の下でそんな事を考えていると思うと自然と笑みが溢れてしまった。

 ジジ! と蝉の飛び去る音に、室内に満ちていく静かな夕暮れの気配。

 

「というか、操縦桿周りの説明で日が暮れかけるとは……」

 

「ごめんなさい。高等部3年生の、それもナナさんのお兄さんの手を煩わしてしまって。ぐすん」

 

「おあぁーッッ! 泣かないでくれ! 俺の認識も甘かったんだ! そうだよな! 冷静に考えてモニタや操縦桿から飛べるメニューって多いもんな!」

 

 結局あの後マンツーマンで操縦桿の操作や、普段使いする基礎的な項目だけを教えて、気が付けば外には夕陽が沈む陰りを見せている。

 初等部3年生アオカ・オオゾラちゃん。中々骨が折れる子だ。

 

「アオカちゃん帰りはどうすんだ? 流石にいつもこんな時間に帰ってないよな? 学園のバスとか電車とか時間あるか?」

 

「あぅ、それが私すっかり電車の時間を忘れていまして、どうしようかと……。家に電話入れますね。帰りは夜遅くなるって。う~んと、ここから歩いてだと……、わっ3時間です」

 

「送るよッッ!! 俺が悪かった!」

 

「そんな、悪いです。私なんかに教えてくれた上にまたお時間を使わしてしまうなんて」

 

「ここで歩いて帰らせたら俺は鬼畜か悪魔だよッッ!! いいから、俺がなんとかすっから。取り敢えず親御さんに電話させてくれ、俺から事情を伝える」

 

 そう言って「でも」と遠慮する少女はややあって根負けし、大きな兎のウエストポーチをごそごそし渋々両親への連絡画面が映るスマートフォンを渡す。

 ボタンを押そうと指を近付けた、その刹那。

 

「お、電話だ。相手は……お兄ちゃん?」

 

「あぁっ~! そうですっ! 新学期からお兄ちゃんが帰っていたんでした!」

 

 そこには着信の相手が「お兄ちゃん」と表示された画面。

 視線でアオカちゃんに許可を取って通話を押す。

 

『アオカ? お父さんやお母さんがメッセージ送っても返信が無いって心配してっぞ? なんかあったか?』

 

「アオカ・オオゾラさんのお兄さんでしょうか? すみません、自分が彼女の時間を拘束してしまいまして」

 

『あ? んだ、お前』

 

 ……めっちゃ声色変わった!! 

 

「自分は高等部3年生普通科リュウ・タチバナと言います。現在3号棟のガンプラバトル用貸し出し教室17室に居まして……」

 

『何者だァ? てめぇ。……アオカを彼女呼ばわりしたなオメェ? あ? 今行くから首洗って待ってろ』

 

「タチバナさんっ、お兄ちゃんはなんて?」

 

「アオカちゃん。俺殺されるかもしれない」

 

 アオカちゃんは怪訝に首を傾げて真ん丸な瞳をこちらに向けている。かわいい。

 対して俺は冷や汗ダラダラ。スマートフォンが手汗でヌルヌル。

 

『まだ通話は終わってねぇぞ! アオカに何かしたらタダじゃおかねぇぞ。今ボコボコしに行くからそこを動くなよ』

 

 ブツッ。

 不穏な言葉を最後に通話が切れる。

 あとお兄さん、その言い方だと俺がタダじゃおかれているんですけども。

 固まった笑顔のまま少女へスマートフォンを返すと悪寒と共に1つの疑念が湧いてきた。

 

「お兄さん、俺の学年聞いても何の変化も無かったな……。もしかしてタメか? オオゾラなんて名前居たっけなぁ」

 

 リュウは研究生を除けば学園の最高学年であり、通う生徒からすれば大抵の生徒は後輩である。自分の学年を傘にして先輩面するつもりはないが、高等部3年生という学年を聞いて怖じ気づく様子が一切無かった相手に純粋な疑問が湧いてくる。

 もしかして妹を持つ兄の強さなのか、とリュウは腕を組んで考えていると。

 

 ────ズゥン。

 

「え、なんだ。地震か?」

 

 ────ズウゥゥン……! 

 

 地の底から響いてくるような地響きに似た音が聞こえ、傍の少女を庇うようにするとリュウと対照的な顔でアオカが扉へ視線を移す。

 

「あ、お兄ちゃん来ました」

 

「は?」

 

 ────ズウゥゥン!! 

 

 ────────バッッゴオォォーンッッ!! 

 

 扉がとてつもない力で蹴破られ、変形したそれが室内へと音を立てて倒れる。

 あまりにも唐突な緊急事態に思わず拳を固めていると、ぶち抜かれた扉があった箇所から男が現れた。

 

 身長175を越えるリュウが頭1つ見上げる高身長。ギラつく蒼の髪を逆立てて、三白眼がギロリとリュウを捉える。

 違和感を覚えたのは男の服装だ。

 リュウが通うこの萌煌学園は私服通学が認められており、学園の生徒の殆どが私服である。

 しかし萌煌学園にも制服は存在し、推奨制服として一応形だけ存在しているその制服は、とある生徒達しか現在着用をしていない。

 

 それは、今日出会った生徒会長。

 それは、生徒会長属する()()()()()

 

 そしてあろうことか右腕上腕に付けられているワッペンへ記載された文字に、リュウは目を見開いた。

 

「し、執行部────」

 

『あ? その声、テメェが電話に出た野郎か。覚悟は出来てんだろうなァ?』

 

 生徒会執行部。

 生徒間で発生したトラブルや危険な生徒の問題を処理する、萌煌学園でも選りすぐりの精鋭達。

 そのワッペンと制服で男の素性をここでやっと察した。

 側の少女の兄だから、と()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()

 

「ぶち殴る前にいちおー言っとくぞ? 俺ぁ、生徒会執行部部長。特進クラス4席────リュウガ・オオゾラ」

 

 ピピ、と。

 アウターギアが反応して投影画面(ホロウィンドゥ)にガンプラバトルの申請画面が表示される。

 

「ぶん殴るのはガンプラバトルでだ。断ったらぶん殺す」

 

 投影画面(ホロウィンドゥ)を視線で操作して、申請を受託。

 両手を宙へ掲げると床に埋められたナノチップからプラフスキー粒子が瞬く間に発生し、両者の間にフィールドが形成される。

 絶対的な、強者の風格。佇まいで理解する。こちらを睨むその眼に、自身の脚が震えている事にリュウは漸く気付いた。

 相対するリュウガ・オオゾラから感じるその圧に、しかし口の端を小さく上げる。

 

「リュウ・タチバナ。アイズガンダム、行きます」

 

「何にやついてんだテメェ」

 

「試せる機会がもう来るなんて思ってなかった。今日はついてるぜ……!!」

 

「意味不明野郎が……! 人の妹に手ぇ出したんだ、顔面の1つや2つ、爆砕させっぞ!!」

 

 叫びと同時、男の眼前に構築される蒼白の機体。

 筋骨隆々として、それでいて引き締まった格闘選手を彷彿とさせるあのガンプラは噂だけ知っている。

 国内だけに留まらず国外の大会でも優勝を総なめした機体。レギュレーション800、ゴッドガンダムのミキシング機体。

 凍てつく氷を思わせる蒼がグラデーションとして各部を彩り、纏う粒子が機体に触れると氷の本流となるそのガンプラは。

 

「行っくぜェ!! ────ゴッドガンダムグラキエス!!」

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