戦闘が終了しプラフスキー粒子で構築されたフィールドやガンプラが消える頃には夜空に星が覗き始め、暗い室内の中筐体に反射する星の明かりがやけに幻想的だった。
「これが、バウトシステムか……!」
感心のため息をつく筐体の向こうのリュウガは、先程まで筐体の上で戦闘をしていた自身のガンプラの影を見て呟く。暗がりに浮かぶ笑みは徐々に大きくなり、くわっ!っと目を見開いた。
「すっっっげェなこのシステムは! 粒子がガンプラを完全に再現すんのか! これがありゃいちいちバトルの度にガンプラをメンテナンスしなくて済むのか!」
「なぁ、アンタ本当にさっきの……」
「と、なると今まで使ってた筐体はどうなるんだ? バウトシステムが普及してるんならもういらねェじゃねぇか。なぁ?」
「……バウトシステムは学園都市内だけの新しいシステムだから、まだ世界的にメジャーな筐体は遠征する人間の事を考えて残してるんじゃないか?」
「確かになァ……。実際のガンプラを動かさねェと分かんない連中もいるか……」
「そ、それよりもアンタ! さっきのバトル!」
リュウの声に目の前の男は何食わぬ顔を向ける。
先程のバトルは戦績が残る正規のバトルであり、学園のアウターギアを介した以上勝敗の結果はは全生徒が閲覧できる仕様だ。
「アンタ特進クラスだろ! 萌煌学園を代表する生徒が俺みたいな生徒に負けて良いのか!」
「……やりてェことあんじゃねェのか?」
瞬間、男の周囲が冷えた。
三白眼から発せられた圧は殺気と呼ばれるもので、リュウは当てられて口ごもる。
「言っとくが、特進クラスの全員は化けモンだ。並のファイターなら秒殺されるのが関の山だ。けどな、特進へ入るための試験は幾らかラクで、今回の勝ちはそんとき役立つ」
「特進の、試験?」
「バトルロイヤルにタイマン。現特進クラスの俺に勝ったテメェは確実に試験の台風の目になる。大勢の奴から狙われるだろうが、試させて貰うぜ」
そう言ってドン、とリュウの胸に拳が当てられた。
見上げると意思を宿した決意の目。
「そいつら全員ブッ飛ばして特進入ってみろ。俺ぁテメェが気に入った」
「や、やってみる」
「テメェ、師は誰だ」
「へ?」
「師匠だよ師匠。俺とやりあえる普通科の生徒がいるわけねェ。居るとしたら、そいつに教えた人間が優れてるって話だ。単純に興味がある」
リュウは顎に手を添える。
表向きではトウドウとリュウが師弟関係になっていることは内密だが、それをリュウガに隠すのは気が引けた。
「……トウドウ・サキだ」
「っ!」
「悪いけど他言無用で頼む。せんせ……あの人は一応学年主任だから、一人の生徒に肩入れしてるみたいな噂広がるのは、そのあんま良くないから」
「言うつもりはねぇぞ? だがまァ……そうか」
落ち着いた様子でリュウガが下を見る。
やがて踵を返し、月が反射する筐体を眺めた。
「……特進にも、もう余裕が無ェってことか」
「どういうことだ?」
「なんでもねェよ。オラ、行くぞアオカ」
「え、折角ならリュウさんから送ってほしかったな……」
「リュウテメェおらァ!! 人の妹に手ェ出しやがって!」
「アンタ思ったより忙しい性格してんだな!!」