わたしの名前はアオカ•オオゾラ。栄えある萌煌学園の初等部に通う学生で、同じく学園に通う兄は昨日まで海外遠征に行っていた超エリートのガンプラファイターだ。
「はぁ〜〜〜〜」
「なんですの、これから楽しい放課後が始まると言うのにその倦怠な溜め息は」
「だって今日も負けちゃったんだもん〜! 昨日教えられた事何も活かせなかったよ〜!」
優秀な兄と非凡なわたし。いや、非凡なんて言葉じゃ生ぬるいほど酷いバトルの腕を持つわたしはクラスで見事にハブられていて、そんなわたしに唯一声を掛けてくれるのが偶々隣の席に座っている北条院ネネちゃん。特級の変わり者だ。
「今凄い失礼な事を考えてませんこと?」
「ううん? 隣のネネちゃんは凄い良い子だな〜って」
「そんな当たり前な事いちいち言わなくてよろしいですわ、毎朝爺ややメイド達から言われ慣れているもの。それより」
「え、な、なに? そんな近付いて」
胸を張って腕を組んだネネちゃんがジト目でわたしに近付く。嗅いだことの無い良い匂いに思わず顔がにやけてしまいつつも何とか平静を保った。
「アオカさん今日のバトル、正直見違えましてよ」
「へ?」
「ああいう思い切った指示はかえって動き易いですし、索敵する側も心強いですわ」
「あっ、もしかして、索敵を全部ネネちゃん達に任せた時のかな……」
わたしが指示を出したのは前衛への索敵の申し出と敵位置の割り出しだ。
相手が1番弱いわたしを無視するのは今までの経験で分かっていたから、昨日リュウさんから教えてもらった方法で叩く戦法、つまり至ってシンプルな『狙撃機の射線上に敵機を呼び出す』という基礎戦術だ。
「そ、その後狙撃を外してあろうことか味方を撃っちゃったんだよね……」
「それは結果、そしてここは学舎。学舎とは失敗を重ねる場であり愚が褒められる場所。もっと狙撃の精度を磨けば勝敗は変わっていましてよ」
「ネネちゃん変なの食べた?」
「……昨日まで貴女コンソールでのメニューの開き方すら曖昧で通学してから何を学んでいたのかと正直思っていましたけれど」
「ぐへぇ!!」
し、仕方無いじゃん! バウトシステムにまだ慣れてないだけだもん!
と反論しようにもわたし以外の生徒はみな新しいガンプラバトルシステムに適応しているのでこの反論は通用しない。
「で、本題なのだけれど」
「うん?」
「誰が昨日アオカさんを育てたのかしら?」
「そうなの! リュウさんって覚えてる!? あの人がわたしに合わせて色々教えてくれたの!」
「リュウ……、ナナさんのお兄さんよね? あろう事かこの私のバトルを振ったあの」
そう言うとネネちゃんは顎に手を添えてじっと床を見詰める。
普段余裕綽々としている彼女があまり見せない姿に驚きつつ邪魔にならないよう静かに席を立った。
廊下に出ると同時に視界へ入る同級生達。
「アオカさん」
「あっナナちゃん! どうしたの?」
「これから、どこへいかれますか」
そんな中ふと背後から声を掛けられた。
白雪のような銀の髪に鈴の様な聞き心地の良い声。
現在クラスで人気者であり転校生のナナちゃんがそこには立っていた。
「リュウさんのところに! 昨日からガンプラバトル教えてもらうことになったの!」
「わたしも行きます」
「え? あ、うん! 一緒に行こ!」
「じー……」
「ど、どうしたのナナちゃん?」
「なんでもありません」
こうして何故かちょっぴり不機嫌そうなナナちゃんと一緒に今日も例の部室へと赴くことになったのでした。