ガンダムビルドアウターズ   作:ク ル ル

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6章19話『小さなモヤ』

「で、どうなんだリュウ。お前の新機体の調子は」

 

「やっと動かし方を理解出来た感じかな。宇宙世紀の機体にGN粒子を運用すると挙動の癖が強くてさ、そこがまだ違和感として残ってる」

 

 放課後いつもの部室。

 室内の一角にある製作スペースでガンプラの箱を開けながらエイジとリュウは互いに近況報告に花を咲かしていた。

 

「エイジはどうだ? 見つかったか?」

 

「……いや」

 

「そっか」

 

 リュウの問いに対してエイジは僅かに視線を下げる。彼の座る机には宇宙世紀からアナザーまで、量産機からワンオフ機といった様々な機体が並べられており、そのどれもが丁寧な塗装とデカールが施されていた。

 

「自分の器用貧乏さをここまで呪ったのは初めてかも知れないな」

 

「悲観しすぎじゃねえか? どんなレギュレーションも使えるのは確実に長所だろ〜」

 

「逆にオレはお前が羨ましいよ。俺は、好きな機体が多過ぎて使い続けたい機体が決められない」

 

 エイジは全レギュレーションをそつなく使えるオールラウンダーだ。

 レギュレーション指定の大会やバトルでも一定以上の戦績を収め、ガンダム作品の知識も深い彼が最近悩んでいるのは特進クラスへの加入条件について。

 即ち、2種類以上のレギュレーション機体を自身の使用するガンプラに加える事だ。

 

「″使える″と″使いこなせる″は違う。俺は機体性能を全て引き出せる程1つのガンプラを扱ってこなかった。さて、どうするかな」

 

「珍しく弱気だなぁエイジさんや。あ、塗装に埃噛んでるよコレ」

 

「はぁ!? 埃!? どこだそれ! 毎回確認しながらトップコート吹いたのに!!」

 

「ゴメン。ウッソ•エヴィン」

 

 たっはっは、と笑っていたらエイジが無言でポリッシャーに番手40の紙やすりを付け始めたので即座に謝った。

 番手40はガンプラでは使わないだろうという疑問を残しつつ、リュウは今日エイジを部室に呼んだ本題を切り出す為に手元のザクI•スナイパータイプを顎で指す。

 

「エイジって狙撃機も扱えたよな?」

 

「なんだ急に。……まぁ、人並みには扱える」

 

「そこを「扱える」と断言しちゃう辺り頼もしいよ」

 

「誰かさんと違って真面目に学園通ってたからな」

 

「うるせぇよ! 病んでたんだよ!」

 

「で、先生ってなんの話だ? オレがお前に狙撃教えると言っても、お前はもう──」

 

「俺じゃない。今日は生徒を呼んでてその子に教えて欲しいんだ」

 

「生徒?」

 

 エイジがメガネの位置を直しながら訝しげに眉を潜めていると控えめなノックが部室に響いた。

 絶好のタイミングに指を鳴らして、小躍りのままに部室のドアをリュウは開く。

 

「良く来たね! 待ってたよアオカちゃん! 今日はもっと詳細な狙撃についてを練っていこうか!」

 

「むすっ」

 

 ナナが立っていた。

 ハムスターみたいに頬を膨らませてジトっとこちらを睨む様に思わず冷や汗が一筋伝う。

 

「あ、あれ。ナナさん、今日はコトハとの練習は……?」

 

「機体が完成したので後はリュウさんと調整しろと言われました」

 

「あ、アレー。おかしいな、コトハさんからは一言もそんな事言われて……」

 

「ここでアオカさんと夜遅くまでお稽古されてたんですねリュウさん」

 

「あ! アオカちゃん! そんな後ろにいたの!? ほら、入っておいでよ!」

 

 ナナから背筋が凍る様なオーラを感じて思わず廊下の真ん中で立っているアオカちゃんに声を掛けた。

 小動物のように震えながらアオカちゃんはおずおずと近寄ってきて、ナナとリュウを交互に見ながら最後にリュウを見る。

 

「さ、三角関係……!」

 

 そんな様子を見てエイジは再びズレた眼鏡を直しながら愕然と呟くのであった。

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