ガンダムビルドアウターズ   作:ク ル ル

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6章20話『さくせんかいぎ』

「ナナさん、あの、そんなに見られても……」

 

「つーん」

 

「あと前に居座られると操作がしづらいし……」

 

「つーん」

 

「やべぇめっちゃ拗ねてる」

 

 部室を真ん中で隔てて片方はエイジとアオカ、もう片方をリュウとナナのペアでそれぞれ練習へと移りはや1時間。

 未だまともに会話を交わせていないリュウが戸惑いながらも目の前の敵機を撃墜していく。

 

「これもおわ、りと。次はどうする?」

 

「このミッションで」

 

「りょーかい」

 

 戦場を構成するプラフスキー粒子が切り替わり目の前には一面の砂漠が一瞬で広がった。

 見たところ無人飛行機(ドローン)を撃墜するミッションらしく空に浮かぶ複数の機影は陽炎で揺らぎ正確な距離が肉眼では観測出来ない。

 数にして、60。

 

「時間制限とかはあるのか?」

 

「30秒です」

 

「上等」

 

 言われリュウの口角が鋭く上がる。

 これは意地の張り合いだ、少女から誘われたじゃれあいのような物だ。

 ドローンの挙動は不規則にして素早い。過去の自分であったら5分は掛かるだろうとリュウは瞑目しながら呟いた。

 

「だとしたら、時間は15秒にするんだったな、ナナ……!」

 

 ……………………………………

 

 一方その頃、二分化された筐体の向こう側。

 戦場の設定は薄暗い雲に覆われ雨が降り(しき)る廃墟群、遮蔽物が多く射線が取りづらいこのフィールドには左右を一定距離交互する挙動のザクIIがランダムに配置されており、標的を探す少女はその仕様を教えられていない。

 

「アオカちゃん良い? スナイパーで一番大事なのは待つ事」

 

「は、はいっ」

 

 少女が陣取った位置は戦場で一際高いビルの屋上。

 灰色の装甲に鼠色が迷彩色として彩られたジム•コマンドが曇天の空に同化してスコープを覗く。

 

 良い集中だ、と。エイジはモニタへ集中する少女を見てザクの挙動を変えた。即ち自ら少女の射線へ移動するように変更し、次の瞬間ドンピシャで少女が狙いを付けていたビルの隙間からザクが姿を現した。

 

 同時に、撃発(トリガ)

 

 75mmスナイパーライフルから放たれた高速の実弾は雨ごと空気を切り裂いて標的へと放たれ、しかし着弾は僅かにズレた。

 

「ま、また外しちゃいました……」

 

「いや、これで良い」

 

「外した……のに?」

 

「そう。()()()()()()()()

 

 少女から聞いた話が本当なら、これでクラスでの勝率は大幅に上がる筈だ。

 システムを切ると戦場を構成していたプラフスキー粒子が瞬く間に消滅して、自然と少女の視線はエイジへと移る。

 

「アオカちゃんがこれから覚える事は、逃げる事」

 

「にっ、逃げですかっ」

 

「そう。これを見て」

 

 そう言うと筐体の上に少女が今日行ったクラスでの戦闘が投影された。

 エイジは映像をコマ送りしながら指を伸ばす。

 

「アオカちゃんを後衛に置いた傘型の陣形は良く出来てる。攻めっ気が強い子達が前で暴れて、後衛であるアオカちゃんが前衛に気を取られた子を撃ち取る、本来なら隙が無いけどこれは破綻している。どうしてかもう分かるね?」

 

 停止された映像は丁度少女が狙撃を外した場面。

 戦局はこの後少女の誤射を恐れた味方が動きを乱して押し返されるという流れだ。

 

「わ、私の狙撃が当たらないから……」

 

 涙目で、口をわなわなさせながら少女が声を震わせる。

 目尻に溜まった雫が今にも伝いそうになりながら見つめてくる眼差しにエイジは正面から首を横へ振った。

 

「違う。根本の考えがおかしいんだよ」

 

「根本?」

 

「アオカちゃんの狙撃は当たらない。それを活かすならまずこの陣形にするべきだ」

 

 エイジが指を流れるように動かすと小さなフリップが小隊の人数分浮かび上がり陣形を形成した。

 少女が赤色で他はグレー。やがて完成された陣形を見て少女は目を見開く。

 

「こ、こんな陣形ですか?」

 

「これ以外有り得ない。個人プレーが多い初等部だとまず見ない陣形だね。今日はこの陣形を用いた立ち回りを徹底的にやるつもりだからよろしく」

 

「はいっっ、よろしくお願いします!」

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