ガンダムビルドアウターズ   作:ク ル ル

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6章22話『負け続けた』

「はぃ、今日も今日とてチーム戦だよ〜班になってね〜」

 

 その声に普段から元気のあるクラスの喧騒が更に大きくなり、タケモトは苦笑しながら後ろ頭を掻いた。

 

「今日の授業が終わったら今度は電脳世界(アウター)での実戦が主になるから、君達が今まで培ってきた全てを出すよう頑張って下さい」

 

 そんなタケモトの声も半分以上届かずに初等部クラスの関心は今から行うチーム戦に注がれる。

 予め決められた班が机を寄せて作戦会議を行う中、アオカの在籍する班も寄り合って話し合っていた。

 

「作戦は前回と同じく(わたくし)が先行して他の人間は左右からの挟撃、アオカさんには狙撃を担当して貰おうかと思いますわ」

 

 この班のリーダーは北上院ネネ。自他ともに認める初等部のエースであり、初等部最弱の異名を持つアオカを抱えていてもチームの戦績は辛うじて及第点となっている。

 今までも彼女が立案した作戦で勝っており、他の班員も納得しかけたその時、おずおずと細い手が隅っこから挙げられた。

 

「ネネちゃんごめん、またお願いしたい事があるの」

 

『……』

 

 他の班員がじっとアオカを横目で睨む。

 どの口が北上院の戦略に物申しているのか? そんな無言の圧力を正面から耐えて、それでもちょっと涙目でアオカはネネへと具申する。

 

「──―、なんだけど。ど、どうかな?」

 

「ふむ……」

 

 特徴的なツインテールを僅かに揺らしてネネが顎に手を添える。

 その数瞬後、視線だけがアオカへと向いてそのまま身が強張った。

 

「だ、ダメだったかな!」

 

「今の立案、例のナナさんのお兄さんからかしら?」

 

「ううん? そのお友達の方から。私の強みを活かすならこうだって」

 

「成る程」

 

 そう短く切ってネネはアウターギアを起動、班員の中央に立体映像が浮かび上がった。

 

「作戦は今アオカさんが言った通り。──勝てますわよ、今回は」

 

 断言。

 その物言いに先程まで口を挟もうか身を乗り出していた同級生達も腰を下ろして同意を示す。

 

「ありがとネネちゃん!」

 

(わたくし)は勝率の高い作戦を選んだだけでしてよ。……それにしても貴女はなんというか」

 

「うん?」

 

「いえ、今のは忘れて下さいまし」

 

 琥珀色の視線がアオカから外れる。

 その後はミーティングが進み、試合の立ち回りを練るだけとなった。

 

 …………………………

 

 

「やっと雑魚機体(ジム•コマンド)からおさらば出来るよ〜、長かったなチーム戦の授業」

 

「レギュ400とかノロマ過ぎて無理! ブーストいっぱいの跳躍(ジャンプ)でも全然進まねぇもんな! こんな機体乗り込んでる奴らの気が知れねぇよ」

 

「分かる〜! 早く自分達の機体乗りたいよね〜! 俺決めた、電脳世界(アウター)行ったらジム系統の機体虐殺する!」

 

「俺も俺も! ……ってか居んじゃん、レギュ400乗り込んでる奴が対面のチームに」

 

「あっ本当だ、しかも俺たちの戦績を上げてくれる親切なカモじゃん。今回も感謝して墜とさねぇとな」

 

 明かりを消した教室。

 机を隅へと移動した室内には集団の輪が出来上がり、その中心にバトルを行う班同士が距離を取って向かい合っている。

 

 プラフスキー粒子による操縦席(コンソール)内で口々に言葉を吐く少年達。

 初等部でレギュレーション400の授業が始まって以来高得点を出し続けているチームであり、今回の試合に勝てば最優秀成績で今期のチーム戦を終える事となる。

 

「索敵開始、と。こちらブルー2視界良好」

 

「ブルー1りょーかい〜。各機適当に前出て良いよ〜。猪女が出たら数で叩いて〜」

 

「猪女って、誰」

 

「言わせんなよ! 居んだろ1人、ドリルみてぇな髪型の猪がよ!」

 

「ぎゃはははは!!」「うわ、ひっど〜い」「言いやがったこいつ!」

 

 4機のジム・コマンドが雨の降る市街地を歩く。

 菱形の陣形を組んで後方に狙撃仕様、他はブルパップ・マシンガンを装備した仕様の小隊でありこれは全ての班が共通の兵装だ。

 教材として学園から提供されたジム・コマンドは性能が大きく変化しない程度の改造を許可されており、中でも狙撃仕様である75mmスナイパー・ライフルを持たせた機体は教師であるタケモトがアオカの愛機を参考にして授業に反映させた背景がある。

 その事実を思うとリーダーである小年の口角が自然と上がる。

 

「残酷なもんだよなぁ、自分が作った装備を他人の方がより上手く使えるなんて」

 

「ん? 何か言った?」

 

「なんでも。索敵続けろ」

 

「分かってる分かってる。……ん?」

 

 菱形の頂点であるブルー2が疑問符を口にする。

 構わずに小隊は前進しながら何の気無しに通信を続けた。

 

「どうした?」

 

「いや、音紋センサーが敵機捉えたかも。しかも1機」

 

「は? 単独で?」

 

「真っ直ぐこっち来てる、ほら。見えるよ」

 

 声と同時、ビルとビルの合間から唐突に機体現れた。

 雨を割いて水飛沫を上げながらブーストを吹かすジム・コマンドが小隊を前にして、すらりと伸びた銃口を先頭のジムへと向ける。

 撃発(トリガ)

 

「──なっ」

 

 突如の射撃に思わず回避行動を取るも弾丸は大きく上に逸れビルに風穴を開ける。そしてあろうことか射撃を行ったジム・コマンドは射撃の結果を見る前に反転し再びビルの合間へ潜ろうとしているところだ。

 

「雑魚の分際で凸砂たぁ舐めやがってッ!!」「どうする? 追う?」「八つ裂きだよなぁ!?」

 

 狙撃仕様のジム・コマンドを駆るのは、あの学年最弱の異名を持つアオカ。そんな彼女の射撃に少しでも窮した自分達に腹が立ちそれぞれ少年は額に青筋を浮かべる。

 

「左右から挟め! マップは見て付いてこい!」

 

「こちらブルー4。狙撃は必要?」

 

「いらねぇよ! あの雑魚は俺が直々にサーベルで貫く!」

 

「あーはいはい」

 

「いつもヘラヘラ笑ってる雑魚の分際で、許せねぇ!」

 

 ……………………………………

 

 

「アオカちゃんには今日、付け焼き刃の回避行動を覚えてもらう」

 

 人差し指を立てたエイジさんが笑顔でそう告げた。

 付け焼き刃の回避行動、これが果たしてどんな意味があるのか。先程行ったザクへの狙撃は残念だけどいつも通り外して、陣形についてもおかしな事を言われてほんとは頭の中がグルグルしている最中だ。

 

 そんな少女の顔が固まって数秒、しゃがみ込んだエイジがアオカの視線と同じになりながら言葉を続ける。

 

「アオカちゃんが練習してる間、アウターギアで試合のリプレイを何個か見たんだけど。……アオカちゃん相当舐められてるね」

 

「うっ……! そ、その通りです」

 

「これは武器だよ。逆手に取らなきゃ勿体ない」

 

 不思議な事を言うな、と思った。

 弱い事の何処が武器なのだろう。わたしはネネちゃんのように突き抜けて強いわけないし、他のチームメイトのようにそつなく何でも出来るわけでもない。

 居るだけでチームの邪魔でCPUの機体の方がまだ仕事をしてくれるとさえ思う。

 

「この試合を見て」

 

 少女が思考に耽る中に投影されたのは別の市街地での戦闘映像だ。戦場には定点カメラが複数設置してあるのか、ワイプが4つ端に表示されて戦況を細かに確認出来る。

 

「多分勝手に流しちゃいけないんだけど、……これヴィルフリートさんって人の戦闘映像」

 

「ヴィルフリート? ど、ドイツの英雄と同じ名前ですね?」

 

「いや、本人だね」

 

「えぇっ!?」

 

 思わず声が出てしまった。

 普段バトルの事は必要以上に見ないアオカでも、その人物が動画サイトやテレビで毎週のように取り上げられている事は知っている。

 ドイツの英雄、軍神、軍略。軍人としてもガンプラファイターとしてもトップレベルのヴィルフリートの知名度はアオカでさえ知っている程だ。

 

「彼がこれから行う行動、これの真似事を覚えてもらう」

 

「ヴィ!? ヴィルフリートさんのですか!? むむむむ無理に決まってます! わたしなんかに出来っこないですっっ!」

 

「まーまー、物は試しって事で」

 

「ひえええええ!!」

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