ガンダムビルドアウターズ   作:ク ル ル

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6章24話『少し貴女が羨ましくて』

 市街地中央。

 本来であれば戦場の只中である筈の区域には1機を除いて誰もおらず、狙撃を担当するジム•コマンドだけが隠れもせずに友軍の連絡を待っていた。

 彼のチームは荒削りだが優秀だ。

 近接に秀でて敵チームを撹乱させるリーダーと彼に負けず劣らずの戦闘能力と獰猛さを備える2人、そして彼等が動かした相手を狙撃する自分。

 連携すらままならない初等部の中でいち早く戦術というものを理解したチームの成績は常にトップで他のクラスと比べても並ぶチームは少ない。

 

 ──友軍機信号消滅(シグナルロスト)

 

 故に突然の表示とレーダーからの味方機の消滅は理解するのに時間が掛かった。

 

「は……」

 

 友軍機3機撃墜……!? 

 目を見開き、そして即座に戦略を練った結果身近なビルに一旦身を潜めて各個撃破を狙おうと建物へ機体を走らせる。

 位置を悟られないよう最小限のスラスター駆動で、滑るように、

 

『あら、どちらへ向かうのかしら?』

 

「ッッ!」

 

 自機とビルへ向かう軌道へブルパップ・マシンガンの3連射。直線状に流れた弾丸は市街地の道路を穿ち、歪みが一切見えない弾痕の様相は初等部の人間にとって致命的な死神との出逢いに他ならない。

 

「北条院ネネ……!」

 

『アオカさんには感謝ですわ。1対1の舞台を(わたくし)に設けてくれるなんて』

 

 硝煙が揺らぐマシンガンを下げてジム•コマンドが1歩、また1歩と歩を進める。

 この場に北条院ネネが居ると言う事は、友軍機が向かった区域の距離を考えるならば恐らく初めから自分へと充てられたカードだ。

 つまり突撃していった友軍機は北上院ネネという切り札ではなく、アオカという最弱の札にしてやられたのだろう。

 

「なに、やってるんだよアイツら……!!」

 

 バンッ! と操縦席(コンソール)を叩く音に北条院ネネは目を(すが)めた。

 

雑魚(アオカ)なんか抱えてるチームに負けたって言うのかよアイツら! その挙句僕は北条院と1対1だって!? どうしようもなく使えないなぁくそッッ!!」

 

 そして75mmスナイパーライフルを構えて標準を合わせる。この距離であればどんな回避行動を取ろうとも間に合わず、せめて1機でも道連れにしてやろうと操縦桿を握る指に力が篭った。

 

 撃発(トリガ)

 

「え」

 

 光の一閃。

 辛うじて見えたその軌跡がビームサーベルの一振りによって生じたものだとややあって気が付いた。

 無造作な逆袈裟斬り、間を置いて両断された弾丸が軽い金属音を2つ鳴らす。

 斬った。斬ったのだ。

 音速を超える75mmスナイパーライフルの、近距離の射撃を。

 

「な、んで」

 

『……』

 

「なんでお前は僕らの誘いを断ってあんな雑魚(アオカ)のチームに行ったんだよ!!? あんなのと組んだら成績が落ちるだけだろっ! 意味が分からない!」

 

 75mmスナイパーライフルを再び構える。

 ボルトアクションによる次弾装填の猶予は近接戦闘おいて致命的だ。その時間を与えると言うことは北条院ネネは既に勝利を確信しておりその姿勢が益々少年の意識を激昂させた。

 恨み言を吐こうとした瞬間、目の前のジム•コマンドがブルパップ・マシンガンを地面へ投げ捨て音声通信のノイズが短く入る。

 

『私は弱者が嫌い、その観点から言えばアオカさんは嫌いですわ。ですが、私が最も嫌うのは弱者を虐げる弱者。現在の立場に甘んじて自分より下のものを虐げる人間こそ私が最も忌むべき存在ですの。つまり』

『──貴方方のような有象無象が、1番嫌いですわ』

 

「お前ェ──ッッ!!」

 

『そのライフルの装填数は5。今ので残弾4。どうぞ、全弾撃ってくださって。(わたくし)は貴方に攻撃は加えません』

 

 撃発(トリガ)

 先程のは何かの間違いだと、そう願って放つ弾丸。

 

『話の途中ですのに……。貴方が全弾撃ったら確実に機体を両に断ってあげますわ。あと3』

 

 コクピットを狙った弾丸はまたもやビームサーベルの一閃によって斬り裂かれた。

 

「化け物が……!」

 

『コクピットが駄目なら動きの軸となる腰。見え見えでしてよ。あと2』

 

「くそッ!!」

 

 ボルトアクションにより排出される薬莢が宙を舞う。

 そもそも回避という概念が通用しない狙撃銃の弾速を見切っている事実が有り得ない。音速を超える狙撃は文字通り音が届く前に敵機を刈り取る魔弾のそれだ。

 そこに人間の反射神経等という物が入り込む余地は無く、そこで気付いた。直前でのフェイントであればどうか。あの化け物が仮に銃口で読んでいるのならそれを狂わせれば直撃する、と。

 

(コクピットと思わせて脚……!)

 

 脚を潰してしまえば遠距離攻撃の手段のないジム•コマンドはなんの脅威にすらならない。

 直撃を確信した狙撃は直前に銃口を下げて右脚部へと必中の軌道を描いた。

 

不正解(ノン)。それも(わたくし)への対処ではなくてよ。あと1発』

 

 下から振り上げられたサーベルによって金属の短い蒸発音が雨音に消える。

 

「ば、化け物がァ──!!」

 

『さぁ、墓前に供えるガンプラは何が宜しくて?』

 

 最後の射撃は再びコクピット。その弾丸の道筋を真っ直ぐ辿るように突き立てられたビームサーベルの切っ先が弾頭を正面から焼き潰し、桃色の刃が逆に機体胸部へと突き立てられた。

 力無く項垂れたジム•コマンドがネネの駆るジム•コマンドへもたれかかる。

 

『……それと(わたくし)、別にどの班でも構いませんわ。付いてこれる人間が初等部に居ませんもの』

 

 独りごちに吐かれた言葉。

 ビームサーベルを突き立てたままネネはそれを上下した。

 その単純な動作はしかし稲妻の速度の如く。踏み込んだ右脚部が駆動系過負荷によるスパークの光を走らせ敵機を瞬く間に両断した。

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