給食の時間が過ぎた昼休みの教室は、遊び盛りの3年生達がたむろしているとは思えない程に不気味な静けさが満ちていた。
ひそひそと生徒達が耳打ちを行なっているその中央、午前中の授業の感想戦を行っているのは3人の少女達で、ドリルのような栗毛のツインテールを揺らした1人の少女が渋面で鼻を鳴らす。
「初チーム戦で全戦全勝、随分と可愛げがあります事ね。ナナ•タチバナさん」
「ありがとうございます。……クラスメイトから可愛いと言われた、連絡帳にメモ」
「褒めてなくてよ!? ……ですが初めて組むチームの仲間にも的確な指示を飛ばしたのは見事と言うほかありませんわ。戦術レベルも非常に高度で
「ネネちゃんとわたしのチームが丁度戦うってところでチャイム鳴っちゃったもんね。ネネちゃん悔しがってたよ」
「いつ、誰が、誰に対して悔しがっていたのかしら?」
「ぴぃっ!? ごめんなさいごめんなさい!」
先程の授業でレギュレーション400のチーム戦授業は終了し、全敗を予想されていたアオカとネネのチームは今回の授業で全勝。クラスに在籍する全ての人間達はその結果に驚愕していた。
教室が異様な空気なのは、得体の知れない短期間での成長を見せたアオカと、突如牙を見せた北上院ネネの戦闘力の一端、そして同じく別ブロックで全勝を果たした転校生ナナの3人が机を合わせて居る事態が原因であり、3人の関係性に他の生徒は耳を澄ませている。
「珍しく今日は静かな事ですわね。紅茶の香りも相俟って思考が捗りますわ」
3人はそんな空気を露知らず、お互いの試合をアウターギアによる投影映像で観戦しており、不意にネネの視線が正面のナナへと向けられる。
「どうかしましたか」
「いえ、揺らいでいた考えが固まっただけでしてよ」
ティーカップを受け皿に添えるように置いて小さな音が鳴る。
「ナナさんのお兄さん、リュウ・タチバナさんのスケジュールは把握されているのかしら?」
「2週間先からは予測が介入し不確定要素が多くなります」
「今日だけで結構ですわ」
「就寝までなら把握しています」
「今日の放課後だけで良いですわ!? え、
「す、少なくともわたしは違うかな……」
困ったような表情でアオカが頬を掻く。
そうして咳払いを1つ行ったネネが立ち上がり、向かい合う形でナナをビシリと指差した。
「──本日の放課後、北条院の名において、ナナ・タチバナさんリュウ・タチバナさん両名に対しガンプラバトルでの決闘を申し込ませて頂きますわ」
相対する両者の瞳。
未だ謎に包まれる白銀の少女の眼には僅かに感情の揺れが見て取れた。