「せ──生徒会長……!?」
「はは、名前で読んではくれないだろうか。僕と君は同い年だろう」
「そういう問題じゃ……」
親しみのある笑顔のままナガト•シュンは頬を掻く。
その柔らかな雰囲気とは対照的にリュウが感じたのは不可解な驚愕だった。
「初めまして生徒会長ナガト•シュンさん。
「初めまして。僕も君の事は良く知っているつもりだ。特進にいる君のお友達が良く話をしてくれていてね」
「ハッッ!! あんな下品な方と一緒にしないでくれますかしら」
盛大に鼻で笑い腕を組んで特徴的なツインテールが大きく揺れる。
その隣の少女も遅れて前へと足を踏み出した。
「初めましてナナ•タチバナです。リュウさんの妹です」
ペコリと頭を下げておずおずとナガト•シュンを見上げる。蒼い瞳をぱちくりと瞬かせると笑顔がナナへと返された。
「うぅ……! 成長したな……! ナナ……!!」
「何で貴方は泣いておりますの……」
「さて。立ち話はこの辺にしておこうか。中に入ると良い」
一同がシュンの後へ続き生徒会室へ繋がる重厚な扉が音を立てて開かれた。
──────────―。
「リュウ君おそ────いっ!!」
生徒会室へ通されるとまず長机が視界の中央の奥へと続いており、その席の1つから見知り過ぎている顔がリュウを呼んだ。
「正直疑ってたけどなんでお前がいるんだよ、コトハ」
「話すと長くなるんだけどね。う〜んと、どこから話そうかな……」
桃色の幼馴染が間抜けそうな顔で額に指を当てる。
唸って何か考えている様子だが恐らく何も考えてはいない。
「そうだリュウ君、昨日の晩御飯何食べた」
「何の話だよ」
「コトハさんを読んだ理由はまた奥で話すよ、皆着いてきて欲しい」
ナガトがそう言うと長机の最奥の椅子に腰を掛けて机の下を弄り始める。
(奥……?)とリュウの中で疑問が
「え、奥ってなんの事ですか。ここが生徒会室ですよね」
「ん? あぁ。そうか、説明がまだだったね。今から特進クラスに行くから他言無用でよろしく」
「は?」
この室内に隠し部屋みたいなものでもあるのだろうかと室内を見渡していると傍の少女が蒼い瞳で天井を眺めている事に気が付いた。
「ナナ? どした?」
「移動しています」
「移動? ……この部屋が?」
「おや、良く気がついたね。驚く顔が見たかったんだけど」
「この部屋自体がエレベーターみたいになってんのか!?」
確かに耳を澄ませば空調の音のような気づかない程度の駆動音が微かに聞こえる。
萌煌学園の生徒会室にこんな機構が備わっている事は聞いた事が無い。
「それで、どこまで行くんですの? 地下100メートルは既に過ぎて、学園からも大分離れているようですけれど」
「そんなとこまで分かるのか? スゲェな」
「ふふん。鍛えていますもの」
鍛えてどうにかなるものなのか?
薄い胸を張っているネネを横目に机で指を組んでいる生徒会長が薄い笑みを浮かべる。
「間もなく到着するけど、驚いてくれると嬉しいよ」
「この段階で既に驚いているんだけどな……」
すると先程まで聞こえていた駆動音が止んで、完全な無音が訪れた。
立ち上がる生徒会長を目で追うと隅っこで桃色の髪がふるふると震えている事に気がつく。
「何してんだコトハ」
「だっ、だって急に地震とか来たら私たち生き埋めになっちゃうんだよ! 怖いよ〜!」
「自分の生き埋めを怖がる癖に俺は何度も生き埋めみたいな事をガンプラバトルでも遊びでもやられた記憶がある。妙だな」
「ま〜、リュウ君だし」
「不憫!!」
「幼馴染みの水を差すようで悪いけどそろそろ行くよ。怒られるのは僕なんだ」
後ろに束ねた長髪を弄りながら生徒会長が扉を開ける。
室内の人間も後ろに付いた事を確認すると扉が自動で開かれた。
「わ〜! すごい〜! 真っ白〜!」
「学園の地下にこんな施設があるなんて知りませんでしたわ……」
「良かった良かった、驚いてくれたようだね。それじゃ案内しよう、今日君達を呼んだ理由もそこで話すよ」
先に進む彼らがそんな話をしている中リュウは動けなかった。
視界に広がる殺菌室の中の様な異様な白色の空間。人が通るには余りにも巨大な廊下は間違いなく記憶に存在するあの場所に似ていたから。
「リュウさん……」
「研究棟……?」