7章1話『緋の瞳』
低確率でドロップする高レアリティのアイテムに心をときめかす時期が自分にもあったと、カレンは撃破した敵機の残骸を確認して思う。
数週間前から始めた
書き込んだ者も不明で内容も眉唾物だが、確かに腕に見合わない随伴機を従えているプレイヤーも最近になって散見されている現状、カレンが首魁を務める星震の探究団も実情を把握する為機体を倒し続ける日々が続いている。
『運が良ければ一千万GPかぁ、夢あるよなぁ』
『確率は低いなんて物じゃあ無いらしいけどな。宝くじが当たるより低いって噂もある』
「お前たちお喋りも大概にしな。漁夫が来る可能性だってあるんだ、索敵を怠ったら承知しないよ」
『『イエス! マム!!』』
「──ったく、威勢だけは良いんだから」
言いつつ音声通信を切り、カレンも先刻から覚えている眠気を頭を軽く振ってやり過ごす。
居るか居ないか分からない存在の為に毎日徹夜なんてまっぴらごめんだし、そんな生活が毎日続くんじゃたまったものではない。
『今のザクII、後期生産型か?』
『確認する前に姉さんが撃ったよ。あの人もうリポップする位置覚えてるんじゃねぇか?』
「覚えてるわけないだろ、お前達には見えないのかい出現する時のエフェクトが」
『いや、見えてますけど反応する前に姉さんが撃ってるんですよ』
不甲斐無い、と溜め息を漏らしカレンは撃墜した敵機が居た位置を正面に捉える。
ドロップしたのはランナーのチケットにGPチケット。いつもの顔ぶれだが、これでも数を揃えれば現実でガンプラや学園都市で使用できる通貨に変換出来ると考えると気分は幾分かマシではある。
──レーダーに反応。大型MA。
『なっ』『え、ちょ』『来たかこれもしかして!?』
スピーカーに聞こえる団員の高揚した声には釣られずカレンの思考は冷えていく。
今までにない出現パターンだ。中央ステーションは遠く救援は臨めず、退却すればこの敵機を他のプレイヤーに譲る事となる。しかし挑むにも連日の疲労に加えて消費した弾薬を思うと判断を瞬時に下すのは難しい。
「本当に居るなら居るって言ってくれよ……! ──お前達こっからが本番だ! コイツを逃したら1週間飯抜きだよ!」
『『押忍!!』』
ペルセダハックの副腕が展開され、高出力の展開のまま次の瞬間には敵機が現れるであろう空間を捉える。
エフェクト、確認。
「……! こいつは……」
ビームが掻き消える音と共に空間から現れたのは真紅の威容だった。
ジオンのシンボルの象徴とも呼べるMA、ノイエ•ジール。人気の高いその後継機は今この瞬間においては忌みされる最悪の敵機だ。
味方機の実弾装備が少な過ぎる。長時間の戦闘を考慮しての武装構成が仇となったか。
『ノ』
『ノイエ•ジールIIッッ!!?』
特徴的な起動音と共に巨大なアイセンサがこちらを覗き、瞬いた胸部を確認するや否や半ば反射的に操縦桿を横に押し倒す。
「──ッッ!!」
偏角メガ粒子砲、その2門による照射範囲はこれまでのMSとは文字通り桁違いであり、避けきれなかった団員を瞬く間に溶かして現実世界へと強制ログアウトさせる。
ペルセ•ダハックの装甲でさえ避けた筈が赤熱しており、その威力の程が嫌にも伝わった。
「行くよ野朗供!! アタシがバリアを剥がすから、それまではターゲットを減らしておいてくれ!」
『『押忍ッッ!!』』
合図と共に星震の探究団の団員が四方から回り込み、標的を決めあぐねるノイエ•ジールIIの胸部に拳を叩き込む。
「来てくれて嬉しいけど、アタシ達が探してるのはアンタじゃないのさ……!!」
そこはiフィールド•ジェネレーターの中心部。間接強度を金属パーツにより増した拳が、剥き出しの装置にヒビを入れる。
爆ぜた火花がカレンの表情を照らした。
鮮烈な笑顔に燃える、何故か憂いを帯びる瞳の色。
「どこにいるんだい。──最終のMAは……!」