萌煌学園生徒会長ナガト•シュンの駆るMGフリーダムが降り立つも山は見上げる程に高く聳えていた。
『──どこを見ているでおじゃッ!』
その、山の切先が縦二つに分かれ、高速に回転するビーム•リングが地表へと吸い込まれるように落ちる。
「このステージ、まだ公表前ですよね? とても素敵なステージだなぁ、と」
『──ぬぅ!? 馬鹿にするなでおじゃッ!!』
「あ、鳥」
ビーム•リングから発生する衝撃波によって周囲の木々を紙吹雪のように吹き飛ばされる。
直撃すれば豆腐のように対象を崩壊させるそれを、フリーダムは敵機を見ないままに白羽取りで受け止めた。
そも、スケールが違うのだ。
ナガト•シュンのMGフリーダムに対して織田院博士のHGカバカーリーでは全長も馬力もかけ離れており、小回りを利かした戦闘にカバカーリー側が誘い込もうにもフリーダムは一切それに付き合わない。
かけ離れた実力差は遠目で傍観を決めているリュウ達の目からも容易く読み取れた。
『麻呂は学園都市ガンプラバトルの創設者じゃぞ! 手加減せんか莫迦ものッ!!』
「手加減した僕に勝って貴方のカバカーリーが喜びますか?」
『麻呂の喜びがガンプラの喜び!! 当然であろう!!?』
「その傲慢さ、僕にも欲しい──ですッ!」
フリーダムがリングを逆に引き寄せ、空中で姿勢制御をしているカバカーリーの体勢が崩れる。
バーニアを逆噴射しようにも、フリーダム背部のメインスラスターから成る推力の前では無駄な抵抗だ。
『のじゃじゃじゃじゃー!!?』
地表に滑り込んでくる軌道のカバカーリーを横に回転しながらラケルタ•ビームサーベルを抜刀で迎え撃つ。何度かの閃光が走ったと思えばカバカーリーの姿は五等分程になり扇状に地面へと横滑りした。
『まだまだじゃあ──!!』
「「っ!!?」」
画面が転瞬する。
瞬きをしたと勘違いする程にいつの間にかステージが変更され、リュウ達は宇宙空間に漂っていた。
「今のバトル結果が計算されていない……?」
『うむ。麻呂の権限によりバトルシステムをメンテナンスモードへと移行させた。今のバトルは無効じゃ』
((ずっる!!))
思わず声を出しそうになったが、モニタに映る面々もリュウと同じ顔をしてその様子を眺めていた。
例えるならばスマブラで負ける直前にキャラ選択画面に戻るみたいな、そんな理不尽。
『しかも麻呂ならこんな事も可能じゃあ!!』
スピーカーが鳴り響き、その言葉と共にカバカーリーの姿へテクスチャの乱れが現れる。
そして、
『見るのじゃ!! これぞ全人類が夢に見た、1/60PGカバカーリーじゃ!!』
ナガトの駆るフリーダムの全長を大きく上回るカバカーリーが周囲のガンプラを睥睨していた。
メインカメラで細部をフォーカスしてみると、ただ大きさを変えたようでは無くパネルラインやディテールも増されており本当にPGとして存在していたかのような作り込みだ。
『どうじゃナガト!! これでも貴様は麻呂のカバカーリーがフリーダムよりカッコ悪いと申すか!!?』
「──え?」
『な、なんじゃその反応は。だから、麻呂のカバカーリーがフリーダムよりカッコ悪いと申すのか!?』
「……ごめんなさい。勘違いしているようなので訂正します。──織田院博士」
『の、のじゃ』
「博士がこの作品を作られたんですか?」
『勿論でおじゃ!! カバカーリーへの愛は誰にも負けないのじゃ!!』
フリーダムが武装を放棄して片手を前にだす。女性の頬を触れるような、そんな優しい手の形で。
ウイング部分すら外して、カツンとフリーダムのマニュピレーターがカバカーリーの首元へと触れた。
「僕は今まで博士には及ばないものの、それでも沢山のガンプラを見てきたつもりです。そんな中でも、これ程までにカバカーリーへ解釈を深めたファイターは他に知りません。──貴方のカバカーリー、とってもカッコいいです」
『……………………』
「愛の深さで言うならば、僕の負けかもしれません」
『……麻呂の完敗じゃ』
その言葉の途端、世界が再び転瞬する。
目に映るのは広い座敷であり、一同が呆気に取られている中織田院博士だけがどかっと絢爛な造りの座布団へと座った。
「麻呂も新作が出来て多少興奮していた。許してたもう」
大きく下げた頭に乗っかるちょんまげが揺れて、隣のユミが視線で座る事を促す。
ナガトを代表として先頭に置く形となったところで、織田院は先程までと変わらぬ溌剌な高い声で続けた。
「して皆のもの。あと1ヶ月もしないうちに世界が滅びると言うと驚くかの?」