ガンダムビルドアウターズ   作:ク ル ル

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7章9話『やるべき事』

 トウドウ先生の声が聞こえて、ガラスが割れて、吹き飛ばされて。

 気が付けば目の前には大きな白いシャッターが向こうの状況を完全に遮断していた。

 立ちこめる煙と警告音で遠目に見える同級生達はここからでも分かるくらいパニックになっていて。

 

「そうだ……! わたし、みんなを安全な場所に!」

 

 立ちあがろうと脚に力を込める。座り込んでいたことにすら気付いていなくて、どこまでもおっちょこちょいな自分に嫌気がさした。

 震える足と身体は現実めいてとても怖くて、それでもなんとか立ち上がって前を向いて。

 ──もっと怖い気持ちなのは他の3人の筈なんだから。

 

「みんな! 先生から伝言があるの! 聞いて!!」

 

 わたしに出来ることを。

 先生達が思い切って戦えるように、わたしに出来る事を今やらなきゃいけないんだ。

 

 ────────────────────。

「あら、本当に攻撃が通らないのね」

 

 ブリッツガンダムの機体装甲に施されたフェイズシフト装甲。一定の電圧の電流を流すことで相転移する特殊な金属でできたこの装甲は物理的なあらゆる攻撃を無効化する。

 対してゾンネゲルデの持つヒートショーテルは一般的なビームライフルの熱量を超える高温で敵機を焼き切る実体剣であり、その熱はフェイズシフト装甲にも有効だ。

 ──目の前の機体以外には。

 

「ディ=バインド•ファング、出力最大」

 

 装甲を食い破ろうと火花を上げるヒートショーテルを無視した反撃の逆袈裟を背部6基に搭載された擬似GNドライヴから発せられる高推力によって後方へ回避。

 敵機の死角へと射出されたファングはトウドウの操縦桿の入力によって即座に撃ち出された。

 

『ファング直撃を確認』『やりましたわね』

 

「……いいえ下がって」

 

 痙攣のような挙動を示してメインカメラの灯りがブリッツガンダムから消える。それも数瞬すると再び不規則な動きで再起動し不気味な茶色のメインカメラがゾンネゲルデを睨む。

 

「ネネさんは周囲の警戒を。この機体は先遣隊だから間も無く後続の機体がこの宙域に侵攻してくるわ。ナナさんは今のまま周囲の座標情報を私に送って頂戴」

 

『了解』『不死身、と言うか攻撃が通らない事に何か打開策はありまして?』

 

「そうね……それに関しては少し試したい事があるわ」

 

 言い終わる前にトリケロスから発振されたビームサーベルが宇宙の空間に大きく揺らいで、バーニアの推力と共に振り下ろされる一刀を横へと避ける。

 

「推力とビーム出力、馬力も上がってるわね」

 

 一目で理解る稲妻をなぞるが如き動き。今まで見てきたCPUの駆る機体とは一線を画す機動とビームの出力を見て、それでもトウドウ•サキの瞳には一切の動揺は見て取れない。

 

「確か同じジョイントよね」

 

 部屋の探し物を取る、そんな声の弾みのままにブリッツガンダムの右腕。トリケロスを備える腕部へ機体を組みつかせて、引き剥がす。

 電光が走り、肩部と腕部を繋ぐボールジョイントが快音を発しながらねじ切れた。

 曰く、目の前の反転色の軍勢と戦闘した者によれば高出力のビームや大質量の攻撃ならば一定のダメージは通るがそれらを装備してなければジリ貧になると言う。しかしトウドウ•サキにはその資料に疑問が幾つか生じた。

()()()()()()()()()使()()()()()()()()()()()()()()()()

 答えは居ないのでは無く、出来る人間が皆無。

 敵の武器を即座に奪いそれで反撃などガンプラファイトの技術では無く現実世界の軍人が用いる高度な近接戦闘術だ。人体とは違う動かし方のガンプラでそれをこなすには桁外れた修練を要する。

 

「仕方ないわね。これだけ頂くわ」

 

 未だスパークする腕部からトリケロスを引き剥がし自らの機体に装備。

 撤退の為にミラージュ•コロイドによる風景との同化をブリッツガンダムは図るが、蛇の目は赤熱した肩部の切断面を見逃さない。

 中央モニタに幾つも出現する不明ユニット搭載によるエラーを全て無造作に消し、最大出力。

 ゾンネゲルデの要する粒子の3割を瞬時に持っていかれるも、規格外の桃光は宇宙に溶け込んだ敵機を両断する。

 

「──ッッ!!」

 

 北条院ネネが息を呑む。

 ブリッツガンダムと会敵して間もない、()()()()()()()()()()

 その間に繰り広げられたトウドウ•サキの戦術に畏怖の念を胸中に抱く。

 

『さ、手本は見せたわ。危なくなったら今の真似して良いわよ』

 

 瞬間、マップに赤色のフリップが表示。

 敵機を意味するそのフリップは瞬く間に増えて、数十数百となる軍勢がこの前線基地へと向かっていた。

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