ガンダムビルドアウターズ   作:ク ル ル

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2章3話『ビームコーティング』

 正方形モノクロの空間に無機質な床、空は灰色。フィールド四方隅に点在する形で設置されたモビルスーツ大のブロック。主に機体練習やCPUとのバトルで使用されるバトルフィールド【プラクティス】と呼ばれるこのステージは1on1でのガンプラバトルの際にランダムで選ばれるステージの1つだ。その中央、格闘を仕掛けるには遠く射撃戦を始めるには近い位置で相対する2機のモビルスーツは片方がアイズガンダム、もう片方は紫に光るモノアイで睨みを利かせていた。灰色の機体色にワンポイントの赤色が彼のパーソナルカラーであり、リュウが知るエイジの相棒である。

 

 ───型式番号BAMX-011機体名ザクⅢ・ウェポティカルアームズ。

 

 まず目を引くのは武器腕に換装された左腕。バックパックのタンクから直接ケーブルでエネルギーを供給される大型のビームガトリングに複数の実弾火器が取り付けられたこの装備は、武器腕のメリットである超重量大型兵器を片手に装備可能な点を最大限活かした兵装だ。通常のモビルスーツでは担ぐ事しか出来ないこの弩級兵器は見た目に違わず強力な威力を誇り、ガトリングと実弾火器の掃射のみで射線上の対象を悉く殲滅可能である。

 近接戦闘を想定されたヒートサーベルは右腕に装備され、右肩部には大型ワイヤーアンカー、継続戦闘能力を向上させる追加のプロペラントタンクは腰後部に取り付けられている。

 以上の点から機体重量の増加と機動力の低下が懸念されるが、ザクⅢが元から持つ恵まれた推進力及び空力を考えられてシャープ化された各部によって機体速度は大きなシルエットから想像される速度よりかは断然早い。

 

 リュウは久しく見るエイジの愛機に懐かしさと多くの敗北した経験が脳裏に焼き付く。

 アイズガンダムのバインダーをいつでもハイスピードモードへ移行できるよう左手に力を込め、幾多の敗北を味あわされたガトリングを警戒する。

 

「リュウ、バウトシステムについての説明は聞くか?」

 

 オープン回線でエイジの声がコックピットに響き、左操縦棍から手を離さずこちらも回線を開いた。

 

「知ってるだけ教えてくれ、後になって知らなかったから損をしたなんて嫌だぞ」

 

「おーけー了解。だが何ぶん情報が多くてな、今回のバトルに関わりそうな事だけ教える」

 

 するとモニターに項目が表示される。どうやら先程エイジが口に出したバウトシステムと呼ばれるルールの詳細らしい。エイジのやり取りに騙し討ちの気配が無いと判断し画面へと意識を集中させる。

 

 ──【バウトシステム】、学園都市内でのガンプラバトルに適用されるルール。バトルを行う事によってアウター及び学園都市で使用可能な仮想通貨通称【GP】を獲得出来、勝者敗者どちらもGPを学園都市から進呈される。

 1日に稼げるGPには限度が存在するが、1度のバトルでGPの額が増える判定が複数ありそれらはバトル終了時リザルト画面と共に表示される形式だ。基本的にはバトルでの最低限獲得GPに加え追加ボーナスとしてファイターに進呈されるシステムらしい。

 

 追加ボーナスの判定は数多くあり目についた項目をあげるだけで、

 ・戦闘時間

 ・敵機が装備している武器の破壊

 ・自機の損傷具合

 ・バトル終了時のプラフスキー粒子残量

 ・他ファイターとの連携

 ・バックアタック

 ・撃墜数

 と他にも膨大な量の項目が書かれてある。

 

「つまり、どれだけこっちに損傷なく相手を倒せるかで貰えるGPが増えるって事か?」

 

「そういうことだ、因みに最低限両者に進呈されるGPは300GPでそのまま300円と考えて貰えれば良い」

 

「300GP……、遅延を考えず1試合長くて10分から1時間。昼から夕方まで連戦すればかなり稼げるな」

 

 時給換算すれば下手なバイトよりも効率が良いがとりあえず限度額が気になるところだ、上手く立ち回れば今日散財した分を多少はマシに出来るかもしれない。

 しかしプロの公式試合でもないのにガンプラバトルをして更にお金を稼げる、こんな旨い話が存在していいのかと思考を走らせ興奮と驚愕の最中エイジが見透かしたようにリュウへと続ける。

 

「要は学園都市のファイター全員が【バウトシステム】のデバッカーなんだよ。学園都市としては貴重な実戦データが収集出来るわけだし両者に得がある関係だな、1日で稼げるのは限度として3000GP、1度のバトルで最高1000GPが貰える。ちなみに同じ相手と戦っても2回目以降はGPを獲得出来ない」

 

「凄ぇな。【アウター】が世界にアップデートされたらGPはどうなるんだ?」

 

「勿論βテスターである俺達はGPを引き継ぐことが出来る。後々【バウトシステム】は世界中で適用されるらしいが国連はガンプラバトルに相当力を入れてるらしいな」

 

 仮想通貨にはさほど詳しくないが、現金と違いネットワーク間でやりとりされる為現金より扱いが楽で輸送費も掛からない。少なくともあらゆる点で現在における現金の管理より人件費が少なく、国が1日で発行出来る仮想通貨の限度額を制限する事でインフレを抑えている……確かこんなことを以前インターネットのどこかで見た記憶がある。

 

「とまぁ、バウトシステムについてはこんなもんだ。そして学園都市限定機能としてアウターギアに登録されたガンプラをプラフスキー粒子で完全再現が可能、壊れるのを気にせず連戦が出来るって事だ」

 

「至り尽くせりだな、デメリットは何もないのか?」

 

「一応あるな、バウトシステムが適用出来る時間帯と出来ない時間帯がある。大体人が混み合う時間と曜日だな……さて」

 

 ザクⅢ・ウェポティカルアームズの胸ダクトから勢いよく放熱され、モノアイが音をあげ妖しく光る。

 語ることはもう何も無いと言わんばかりの挙動にアイズガンダムもまたバインダーをスタンバイモードから回避に秀でたハイスピードモードへと姿を変え、粒子が機体内部を循環し雄々しくも鋭い眼差しが輝いた。

 互いに鯉口を切った形で数秒、リュウは永く感じる時の流れに耐えきれず喉を大きく鳴らし眼前の機体を注視する。

 

 ───ガトリングが緩やかに回転を始め銃口がこちらに向いた。

 

「まずはッッ!」

 

 脊髄反射とも言うべき反応でガトリングに向けGNバスターライフルを構え、迷いなくトリガーを引いた。

 先のリボーンズガンダムと同じく改造を施されている長銃は発射までのラグを半分以下にまで短縮され、朱色の閃光がガトリングへと直撃する。これでまず最大限警戒すべき武装は潰した。

 確信と共にGNシールドを前面に構え突撃する姿勢を取り、即座に前へ滑空──そこで気付く。

 

「ガトリングが……、無傷ッ!?」

 

「弱点をそのままにしておくほど間抜けじゃないぞッ!」

 

 鈍い金属色に輝くガトリングが勢いよく回転し、初動の隙で回避行動が取れないアイズガンダムは自分から突っ込む形で弾幕に曝された。

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