ガンダムビルドアウターズ   作:ク ル ル

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2章6話『紅い閃光』

 そもそもレギュレーションフリーのバトルにおいて、性能が抑えられた量産機を使う人間は少ない。

 主に量産機が属するレギュレーションは200、400であり1000オーバー以外のレギュレーションを自由に選べるフリーバトルではレギュレーション600、800を使用するのが一般的だ。

 元々のキットに設定されたレギュレーションは追加装備無しの改造では変動せず、如何に改造を凝らしても上のレギュレーションキットは元々のポテンシャルが高い為に性能を抜くのは一筋縄ではいかない。

 故に勝利のみを求める場合はレギュレーションが高い機体を使うのが手っ取り早い、それが世界中のガンプラファイターの共通認識だろう。

 

 ───しかしガンプラはあくまでアニメや書籍が出展の商品。

 

 雄々しく無双する主人公機が好きな人も居れば卑怯な敵役の機体が好きな人も居る。

 であれば、儚くも散る量産機に魅せられた人が居るのも道理だろう。

 

 自分だけの量産機で劇中苦汁を飲まされた主人公機体を倒すために知恵を絞り、戦略を練り、プラ板を加工する。低レギュレーションの機体で上のレギュレーション機体を倒そうとすればそれらの作業は上レギュレーションの機体と比べ膨大な時間を必要とし、ガンプラを制作するにはビルダーの愛と意志が何よりも不可欠。

 

 ───エイジはそんな、劇中で主人公機体に撃破される機体を愛してしまう。罪深き低レギュレーション乗りだ。

 

「でっ! ゆなに何を教えるって言いましたっ!? 逃げてばかりじゃないですかっ!」

 

「逃げていない! 戦術的転進だッ!」

 

 地を滑るようにザクⅢが【プラクティス】を右へ左へ滑走し、上空から降り注ぐビームをやり過ごす。向かう先はフィールドに設置されたブロック、その内の1つだ。ザクⅢを狙う粒子は回避せずとも当たらない物が多く、難なくブロック影へ到達。障害物で射線を塞がれるもブロックに構わず撃ち込まれるビームにエイジは苦笑いを浮かべる。

 

「流石レギュレーション800赤文字……ビームライフルの威力が桁違いだな」

 

 冷や汗が額から頬へと伝う。ザクⅢの装甲はプラ板や艶消しで装甲性能を上昇させているが、あのビームライフルを1発でも貰えば被弾箇所はただでは済まない。幸いパイロットの腕がお世辞にも高いとは言えずそれが要因で致命傷を負わずにいられているが、それに甘えたマニューバを取れば思わぬ被弾で敗北が狭まるだろうと慢心を殺し操縦棍を握り直す。

 チェーンマインを鳴らし右手で掲げ大きく振り回す、その様は端から見ればカウボーイの綱回しに見えた。充分遠心力が付いたところでブロックを加速で抜け、突如姿を現した敵機にSDストライクフリーダムは射撃を反射で行う、が。やはり狙いを定めずに撃ったビームはザクⅢを大きく外した。

 

「ふッ!」

 

 遠心力を増幅させ、最大の所でトリガーを引く。並んだチェーンマインの内、先端の3つがストライクフリーダムへと投擲され、これを迎撃するためビームライフルで標準を合わせた。

 迫る素直な弾道にゆなを名乗る少女は鼻で笑いながら最も近い円盤を撃ち抜き、気付く。

 

「煙幕っ!?」

 

 炸裂した円盤から白い煙が瞬く間に広がり、続く放たれた2基も爆発。計3発のスモークに視界が機能を停止し、次の行動が躊躇われる。数秒の思考の後、敵機であるザクⅢの武装を考え後退すべくストライクフリーダムのバーニアを噴かした。

 相対するザクⅢの武装は今のところ全て近接武器でチェーンマインを今の様に投げるには予備動作が必須。つまり距離を取ればこちらを仕留める術を持たない。

 煙が吹き荒れSDストライクフリーダムが後方へと抜ける。移動の余波で煙幕が全て掻き消える様は機体の恐るべきスペックが否が応でも見て分かる。

 煙を抜け、ザクⅢの位置を確認するため右上のレーダーを確認しようと───。

 

「随分と出てくるのが遅かったな、読みが外れたのかと思った」

 

「なん……でっ!?」

 

 煙幕から抜け出したストライクフリーダム、それを待っていたかの様にザクⅢが背後へと回っていた。迫る奇襲の刃にビームサーベルでの反撃。ビームサーベル同士が反発し迸る。

 力比べのこの状況ならば機体性能が物を言う、ストライクフリーダムが姿勢を構え直し押し切る形でザクⅢのビームサーベルを斬り破り、そのままサブアーム毎腕を落とす。

 

「動きを読んだってザクじゃゆなのストライクフリーダムに勝てないですよっ!」

 

 ザクⅢがチェーンマインを振るうが、それを根本から粒子の刃で断ち斬り、そのままがら空きの胴体へ突進。桁外れの推力から成る体当たりを受けたザクⅢが地面へと激突し背部プロペラントタンクが潰れ爆発した。

 

「視聴者さんっ! 見ましたっ今の!? ゆなかっこよくなかったですか!?」

 

 先程までの脅威はどこへ消えたのかと、黒い煙が立ち込める中そんな事を思う。堕ちた敵機を追うようにゆっくりと下降し、着地。満身創痍のザクⅢその手前まで歩く。

 見れば敵ながら悲惨な状況だ、爆発でスラスターは潰れ片腕は無い。両足は黒く燻りアンテナは真ん中で折れている。

 

「やっぱり撮れ高といったらビームサーベルでのとどめですよねっ! ……最後に何か言うことはありますか~っ動きだけは良かったザクの人~?」

 

 ビームサーベルが音を立て空気を震わし、ザクⅢの喉元へと突き付けられる。誰が見ても圧倒的な優劣の構図に少女は笑みを浮かべ、ノイズの入り交じった通信音声に唇を舌で濡らしながらスピーカーへと耳を向けた。

 

「……ゆ……ゆなちゃんだっけ?」

 

「はぁ~いっ、ゆなですよぉっ!」

 

「ゆなちゃんさ…………に……るよ」

 

「えぇっ? なんですかぁっ、聞こえないのでもう1度言ってくださいっ!」

 

 スピーカーへと耳を寄せる。

 ゆな自身ザクⅢが繰り出していた挙動には驚いており、その相手を倒せたことに声がうわずっていた。

 

「───ゆなちゃんさ、芸人に向いてるよ」

 

「な……──は?」

 

 言われた言葉の意味が分からずに素で聞き返す。

 瞬間ザクⅢが後方へ引き摺られるように遠ざかった。嫌な予感がよぎり、驚異的な加速を持って瀕死の敵機へと接近。見ればザクⅢのアンカーがブロックへと突き刺さっており、巻き付けを回収する形で地面を高速に移動している。

 だがSDストライクフリーダム、オリジナルのストライクフリーダムよりもフォルムの関係上空気抵抗が小さく、集中したバーニアの恩恵もあって一瞬でザクⅢの眼前へと追い付く。

 

「悪あがきはそこまでですっ!」

 

「あぁ、悪あがきはこれで終わりだ」

 

 ───どこか余裕を感じさせる声だった。思わず眉を潜めながらも既に機体の挙動を変えることは叶わない。

 ビームサーベルをコックピットへ突き立てようと降り下ろしたその時、有り得ない光景が視界に飛び込んだ。

 

 ───紅い、閃光。

 

 事態を理解する前にGNバスターライフルから放たれた光線に胴体を撃ち抜かれ、SDストライクフリーダムは胴体を膨らませた。

 

「なっなんで、その武器……そこで倒れてる青いガンダムのっ」

 

「そうだな、リュウが発射する寸前にオレが斬り落としたGNバスターライフルだ」

 

 まさか、まさかまさか、まさか。

 まさかと、開いた口は驚きを表すため言葉を出そうとするが次々と思い浮かぶ驚愕の連続にただ口を開閉させるだけだ。

 

「ゆなちゃんを油断させて、バスターライフルの地点まで誘導したのさ」

 

「───っ!」

 

 気障な口調に頭に血が昇るのを実感する。しかし機体は既に操作を受け付けない。

 ハッと、戦闘を生放送モードに変えていたこと、今この状況が全世界に中継されていることを思い出す。ほぼ反射的に表情を笑顔に変え、カメラに向けて……叫んだ!

 

「次回の放送も楽しみにしててねぇ~っ! 以上っ学園都市バウトシステム編でしたぁ~っ!」

 

 放送を切るのと、機体が爆発するのはほぼ同時。

 SDストライクフリーダムから目映い光が漏れ出て、プラクティスを爆発音と共に白く染めた。

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