次々とデブリに穴が穿たれ、その軌跡上。2度3度とビームを回避したドライセンだったがその背にビーム刃を発振したダガーが突き刺さり沈黙する。宇宙空間の色に溶け込んだ
『坊ッ!その機体、肩の接続部はポリキャップかい!?』
オープン回線からの声。
活気ある女性といった印象に知り合いを探るが心当たりが無く、救援に来た人間が誰なのか顎に手を添えた。数秒の間か、ペルセダハックがビームライフルの銃口をこちらに向けたと思った瞬間、何の前兆もなく閃光が
「あぶねぇ!? 急に何だよアンタ!」
『なんだい聞こえてるじゃないか。坊、そのガンプラの肩は凸型のポリキャップで胴体と繋がっているね?』
「あぁ繋がってる……、それが何だよ───後ろッ!」
ペルセダハックの左後方。デブリに紛れてデナン・ゾンがガスマスクにも似た頭部を覗かせてショットランサーで狙いを付けているのが見え警告を飛ばす。だがリュウが全て言い終わる前にペルセダハックが背部アームド・アームを展開、振り向くことなく砲口が炸裂しデナン・ゾンが機体を周辺に漂う小デブリの如く散らせ爆散した。
『ペルセの左腕をそっちに投げる。上手く使いなッ!』
「は、はぁ!? ちょちょ、ホントに投げてるし!」
最早
その間にHi-ガンダムが左肩をパージし、空いた胴体のポリキャップに受け取った左肩を装着した。モニターに複数の警告とエラーが表示されるが全て消去し、新たに加えられた武装の把握に目を走らせる。
『坊はその男と
「あ、あぁ。ありがとう、……ございます」
リュウの声を聞き届けると全身のスラスターを噴かし、ペルセダハックが彼方へと翔んでいった。
再び静まり返る宙域、Hi-ガンダムとV2ガンダムが武器を構えるでもなく互いに機体を向け時間が流れる。Hi-ガンダムはその手にあったバスターライフルを失い、右脚は機能を停止、粒子残量も先程よりは回復しているが雀の涙程度でしかなく良いとこ攻撃を数度回避出来るかどうかだ。勿論ビームサーベルのエネルギーは本体供給式であるため使用不可能、絶体絶命の状況にスピーカーが音声を拾い、あの男の声がコクピットに響く。
『今の奴には少しばかりビビったが、へっ。こっちに来なけりゃどうとでもなる。おいガキ、覚悟は出来てんだろうな』
機体に備わっていた武装、それら余すことなく全てが使用不可能であり迎撃行動も取れない。
だからこそ、リュウは下っ腹に力を込めて男の言葉を真正面から返す。
「そっちこそ覚悟は出来てるんだろうな?───負けるぜ、アンタ」
『抜かしやがれッ!!』
V2ガンダムがビームライフルを構え無造作に放つ。Hi-ガンダム胴体へ放たれた粒子を右へ回避、続けて放たれた数度の連射も左右へ機体を振ることでやり過ごした。この時点で粒子残量は残りカス程度、スラスターを噴かすこともままならず画面に表示されたエネルギー切れを知らせる警告が激しく点滅する。Hi-ガンダムの歪な回避に状態を察したのかV2ガンダムが両手でビームライフルを構え、最大出力の射撃を行うために姿勢を制御し男が吠えた。
『口だけのガキがよぉッ! 死んで詫びろッ!』
先のビームなど話にならない大きさの粒子が放たれる。ビームの熱で周辺のデブリが焼け
『───────────な、』
光が灯った。
警告音は鳴り止み、モニターを点滅する
『な、なな、なんだとぉッッ!? あの状態からどうやって……、てめぇ何のインチキを使いやがったぁ!!』
「やっぱり知らなかったか、まぁアニメでも良く分からない描写だったからな。気持ちは分かるぜ」
今のHi-ガンダムが見せた現象を認めないとでも言うように喚きながら男がビームを連射、計3発放たれた粒子を先程の光景をなぞるように左手を構え閃撃と相対する。
直後。掌にビームが触れ数度閃光が走り、損傷どころか傷1つさえ見当たらない腕部が健在として構えられていた。
「“プランダー“俺も初めて使って見たけどとんでもねぇなコイツは……、いわゆるビームを吸収出来る武装だ」
『ふ、ふざけんな、なんだその武装! チートじゃねぇか!』
「チートじゃない。ガンプラバトルは武装の1つ程度で左右されるほど単純じゃないし、必ず両者どちらにも勝てるように設定されてある────なぁアンタ、ガンプラは好きか? ガンプラバトルは好きか?」
『……あ? なんだ急に』
「教えてくれ。もしガンプラが好きだったら…………これからで良い。他人のガンプラを笑わないで欲しい、ガンプラバトルが好きだったなら一生懸命頑張っている人達を笑わないで欲しい。どうだ?」
問い掛けにHi-ガンダムが左手を下ろす。
スピーカーからの返答は無く、リュウは心で願いながら操縦桿に手を掛けていた。他人のガンプラバトルを
『ガンプラもガンプラバトルも好きだぜ』
「────そうか! じゃあ」
『必死に努力している人間を負かすほど気持ち良い事はねぇからなぁッッ!! ──このガンプラも俺の物じゃねぇ、弟から奪ったもんだしなぁ!!』
ビームライフル下部に備え付けられた
「───トランザムッッ!!」
2度目の
『ギャハハハハハハハハハハ………………は?』
「だったらアンタ。────ガンプラバトルをする資格なんて無ぇよ」
ずるり、とV2ガンダムがその身を上下に別つ。驚きとどこか
※ ※ ※ ※ ※ ※ ※
「とっととずらかるかね、さぁ行くよ坊。あの娘は外に逃がしてある」
スピーカーから聞こえていた女性の声が今度は後ろから、プラフスキー粒子によって形成された疑似コクピットの背後から聞こえて思わず
「坊。なんか失礼なこと考えちゃいないかい」
「あ、いや。あの、……助けてもらってありがとうございました」
「礼なんざいいからとっとと逃げるよ。ペルセダハックを
手を引かれ、一息に駆ける女性に困惑しながらも未だ意識は先程の男性に向いていた。彼らの心無い言動も何かがあったから歪んでしまったのではないかと性善説を信じたい傍ら、日本のガンプラファイターの多くはどうしようもないほどモラルを欠如させている危機感にヴィルフリートの言葉が、泣きそうなコトハの顔が鮮明に浮かぶ。
やがて店を抜けて大通りに出た。飲食店が立ち並ぶ通りの端、膨れ顔のコトハが近付いて視線で威圧をしてくる。
「リュウくん! 馬鹿っ、もう無茶しないでよ」
「俺も無茶するつもりは無かったよ、あいつら集団でかかってきやがって。──V2使ってた奴が光の翼を駆使するタイプだったらいよいよヤバかったな」
ビームライフルとビームサーベルしか使ってこなかったあの男、V2ガンダムにおける最大の兵装“光の翼“を使ってこなかったのは手加減していたか、はたまた使い方を知らなかったか。俺のガンプラじゃないと、今も耳に残った声に苛立ちが
「立ち話はそれくらいにして、あたしの店で飲み直さないかい? すぐそこに店を構えてあるんだ」
「お店を経営されてるんですかっ? あ、でも気持ちは嬉しいんですが、わたしたち未成年なんで……」
「だったら料理を振る舞うよ、いや振る舞わせてくれないかい。久し振りに見掛けた元気な坊達をこのまま返すのは惜しいし、なにより店の看板娘にも会わせたいしねぇ」
「あ、ありがとうございます。だそうだけど、リュウくんはどうする?」
気遣いの心が見える問いにリュウは短息で返す。助けてもらったのに誘いを無下にするのはどうにも気が引け、胸の内を整理したいのも山々だが顔だけは少し出そうと返事を返した。
「俺も行くよ。さっきは助けてくれてありがとうございました、リュウ・タチバナです」
「わたしもっありがとうございました! コトハ・スズネですっ」
「そういえばこっちも名乗ってなかったね、坊にスズ。あたしの名前はカレン・キリル。宇宙海賊【