表立った通りとは正反対の印象を覚える裏路地。学園都市自体人間の出入りが始まったのがここ数週間前からであるため殆どの施設や道路は新品の輝きを放っているが、ここ裏路地には居酒屋や露店が多く展開され、ゴミこそ落ちていないがあちらこちらに掃除で出来たシミや、早くも排水溝に溜まっている汚れが目につく。
昭和という時代に見られた大きな円柱形の青いゴミ箱の蓋、その上で大きな猫があくびをし近くを通り過ぎたリュウ達を警戒することなくそのまま眠りについたのを見、コトハが駆け寄ってじゃれあうが対して猫は太く長い尻尾でコトハの手を払いのけて見もしない。
「着いたさね、まぁ広くはないがゆっくりしてってくれ」
扉の鈴が小気味良く鳴り、暖色色の照明にうっすらと照らされた店内が目にはいった。広さは学園の教室よりも一回りほど小さいか、木製のテーブルと椅子が点在し奥にはカウンターと雰囲気の出る酒瓶が置かれいかにもといった具合の印象。イメージとしてはファンタジー世界の酒場に近いか、幼い頃に行った遊園地にこんなところがあったなとふと記憶が
「そういう記憶は覚えてるんだよなぁ、何故かガンプラの記憶だけ──お?」
呟きと共に珍しげに店内を眺めているとコトハの視線の先、リュウの背丈ほどの棚にガンプラ達が並べられている。どれも丁寧な作りだ、それぞれの機体の特徴を活かしたポージングで配されたガンプラからは作り手の愛情を感じ、腰を折って上段から下段を追って楽しんでいると、
「恥ずかしいから見ないでおくれよ、昔作ったガンプラ達さ」
カウンターから声が飛ばされる。どこか気恥ずかしそうな
「このガンプラ、カレンさんが作られたんですか? どれもすっごいカッコよくて綺麗です! あ~このプチッガイ達も可愛い!」
「殆どがあたしが作ったもんかねぇ……、スズが見てるそこはうちの看板娘が作ったプチッガイ達さね。ったく客が来たんだから早く来ないかねぇあの娘は──お~いお客さんだよ、サボってないで早く来ないかい!」
店奥にカレンが声がけ、暫くすると足音が木の床を鳴らす。
「お客さん? こんな時間に来ることもあるんだね~ママ」
気だるげな声。看板娘というには少し愛想が薄い言葉に苦笑いし、コトハが歳が近いであろう声の主に店奥の扉に注目する。床がギィと軋み人物が姿を現し、思わず絶句した。
「はいはいはい看板娘のユナちゃんですよ~っと。こんな時間に訪ねてくるお客さんてママのフォースの人? ──てて、リュウさんっ!? ななな、なんでリュウさんがママの店に…………はぅあっ!? ココ、コココ、コトコト」
あろうことか姿を見せたのはユナ。割烹着に身を包んだ彼女も突然訪ねてきたリュウに驚いたようで、しかし視線はすぐにコトハへと移される。尋常ではない驚愕にコトハもその表情を笑みから疑問へと変えユナと視線が重なった。
「ゆ、ユナさん? わたし達どこかでお会いしましたっけ」
「コトハっ! コトハ・スズネさんですよね!?」
「は、はい。一応コトハ・スズネです、あ。一応って何だわたしっごめんなさい」
「私ユナ・ホシハラと言います! あのそのあの、ファンなんです。私、コトハさんのファンなんです!!」
喜びと興奮に扉を開けたときの気だるげさは鳴りを潜め、ジオン系特殊
そんな彼女らを見、リュウとカレンは顔を合わせ呆れにも近い笑みを交わし、長くなるであろう2人の会話を妨げない声でとりあえずはと飲み物を注文した。