案内された部屋は天井までは10m程、広さは学園の小会議室と同じか少し狭いか。
清潔感を通り越して不気味な
前回の実験よりも明らかに人数が少ない研究員の数は3名、2名は記憶にないが1名は前の実験でリュウを部屋に連れ込んだ薄毛の男性だ。照明が光沢に反射する床を足音が
「心拍数正常、同調率も問題無しと……良いわね」
ナナに繋がれたモニターに映る文字の
「で、タチバナあんた」
じろりと横目がリュウを睨む。
ただでさえ声の低いリホの声が一段と低くなり思わず身が
「な、何か問題あったんですか?」
「問題もなにも、ナナよりアンタの方が同調率が低いってどういうことよ。“Link“を利用したいって言い出したのはアンタの方じゃない」
「うぇっ!? 同調率低いんですか俺、……そもそも同調率って何ですか?」
「相手に対する信頼度安心度友好度。今は支障が出ない無い数値だけど後々響いてくるわよ、精神的な問題なら解決しておいて頂戴」
一方的に言い終わるや否やリホが研究員へ指示を出す。
意識を思考に集中すると、初めに頭を
あの時はトウドウ・サキに負けた直後、カナタとのやりとりがあった後か。トウドウから春休みと“学園都市“での生活を否定され、カナタへは最後まで謝罪をしなかった自分への
「ちなみに、ナナの同調率はどのくらいなんですか?」
「100%ね」
「全面的信頼ッ!?」
「それに対してタチバナは71%。アンタ、気の良い振りをして意外と相手を信頼してないのね、人間関係が知れるわ」
「ほっといてくださいよッ!」
エッジの効いた半分に分けた眼鏡のようなそれを起動して直ぐ、じん、と
“
装着した人間の脳波から健康状態を確認し“
「おぉっし……! 何でも掛かって来いって感じだな」
「タチバナ、最後に忠告しておくわ。前回と同じ内容だけど、操作するガンプラに対して思い入れや印象的な出来事があるならそれを強く思い浮かべなさい。────あと、“Link”を惜しまないこと。“Link”状態のアンタは間違いなくアウター内で最強に近い存在になるわ。それでも敗北は死に繋がる事を忘れないで、……今のアンタじゃ、死ぬわよ」
静かで、強い口調だ。
ふと仰向けに寝転がるリュウの右手に小さな手が添えられる。首を倒せばナナが
「大丈夫です。私が、リュウさんを守りますから」
それは、自分自身に言い聞かせるようにも聞こえた。
「時間よ、“ミッション・シングラー”始めるわ。ログインのタイミングをタチバナに一任、いつでも」
「────リュウ・タチバナ、“
ぎゅっと手を握り視線で項目を操作。ログインを選択した直後、アウターギアから発せられる熱が脊椎から頭全体に広がる。瞬間、天井の光から来る目映い白が徐々に視界を端から埋め、耳に入っていた機材の駆動音も果てへと遠ざかっていった。
薄れていく景色と意識。最後まで感じていたのは右手に添えられた、少女の暖かな体温だった。