外伝『Gun Through the Dust Anima』1話
〈スペクター1より各機。プルーマの数が想定より多い、入り乱れた戦闘に
〈了解ッッ!!〉
バトルフィールド『峡谷』は機動戦士ガンダム鉄血のオルフェンズに登場したステージの1つで、全高150mを越える岩肌が入り組んだ
青く開けた空に
〈────こちらスペクター5。谷の底にプルーマの集団を発見しました。奴等はこちらに気付いていませんが攻撃しますか?〉
〈こちらスペクター1。良くやった、最大火力で一気に数を削れ。その地点を押さえれば今後の作戦が楽になる、だが無理はするなよ?〉
〈スペクター5了解っ!石破天驚拳を使用しますッ! ────はあぁぁぁあ……! 石・破ッ! 天ッ! 驚ッ! けぇぇぇええええんッッ!!〉
スペクター5が搭乗するマスターガンダムの最大火力武装、石破天驚拳が気合いの入った声と共に
遠く峡谷、
〈────こちらスペクター5。プルーマの6割を
〈良し。充分に注意して
〈スペクター5了解! この地点のプルーマを
自分と隊長を除いた隊員達の
次の瞬間、引いた血の気のまま正面モニタを見れば表示されているのは部隊内回線のモードを表すアイコン。つまるところ今の自分が発した笑い声も全員に聞こえてしまった訳だ。涙目を浮かべているであろうスペクター5の
〈すっ、スペクター4! 貴女までも笑うのですかっ! そんなに私のバトルスタイルが
〈あああ、ごめんなさい! 違うんです!あの、何かちょっと
〈
逃げろスペクター4、奴は拳で語る口だ! という通信がスペクター3から聞こえ再びスペクター5が噛み付く。彼の忠告が迫真であった事から過去に何があったのかは察するまでも無いが、口には決して出さない。怖い。
〈────各員お喋りはそれくらいにしろ。スペクター5がプルーマを発見したということは、逆もあり得るという事だ。〉
《────了解》
短く切った、力強い返事。続いて隊長の
自分が所属するこのフォースは結成されて3年ばかりの至って平凡なフォースだ。隊長とスペクター5が恋人関係でスペクター2と3は隊長達の後輩。自分は全国を野良でガンプラバトルして回っていたら
フォース結成1年目、都市のそれなりに大きなフォース戦で結果を残してからプロになることを全員が意識し始め、ガンプラバトル運営が定める試験を直ぐに受けた。試験に合格すれば晴れて資格を持ったフォースになれるのだが、過去に3回その試験に落ちており、今回で4度目となるこの試験を最後に隊長とスペクター5は不合格ならガンプラバトルを引退するという決断を下す。将来の家庭を見越しての判断に誰も反対せず、いつも通り笑って付いていくことを決めた訳だが、それを告げたときの隊長の顔といったら珍しく鼻頭を抑えて涙を流していた。
「この調子ならっ」
試験は初めて最終審査まで通過した。
全4過程ある試験の3つを信じられないくらい快調にクリアし、最後に課されたのがこの“ハシュマル討伐試験”。提示された情報を元に作戦を練り上げ、今日まで全員が訓練してきた努力をぶつける時が今この瞬間だ。
右上スクリーンに表示されたマップデータが間も無くポイントに到着することを伝える。機体ステータスに不備が無い事を確認してから咳払いを1つ、少し大きめな声で隊長に繋いだ。
〈こ、こちらスペクター4! もうすぐ作戦エリアに到着します!〉
〈了解。俺も間も無くエリアに入る。スペクター1からスペクター3が到着した
〈スペクター4、了解っ!〉
ハシュマルとの戦闘シュミレータは全員が
自分の駆るケルディムガンダムが務める役割は“プルーマ掃討の補助”。ナノラミネートアーマーを
煽られた砂塵が峡谷を等しく風と共に覆い、視界が一瞬
〈うぃーっすこちら
〈
〈馬鹿言え。お前らを作戦エリア手前でずっと待ってたんだ悪餓鬼共。────さて、こちらも始めるとするか。早く片付けないとスペクター5がお前らを撃破しにやって来るぞ〉
2人の笑い声がコクピットに反響する。良い雰囲気だ、皆がリラックスしていて心にはちゃんと張り詰めた緊張感を持ち合わせている。
「なら私は、1匹でも多く撃破して皆の負担を軽くする」
武装トリガ、GNライフルⅡと連動した操縦桿を決意と共に握り、砂塵が吹き荒れる峡谷その谷底が見渡せる狙撃ポイントへとケルディムガンダムが着地。
アイセンサユニットが数度の望遠調整を行った後、砂色に
〈スペクター4。狙撃位置に到着しました、いつでもどうぞ〉
〈だそうだ。各員準備は良いな?プルーマを掃討した後ハシュマルを捜索してこれを撃破……これで終わりにしよう〉
《了解ッッ!!》
〈砂が晴れたら攻撃だ、集中しろ〉
自らにも言い聞かせるような、語尾の強い声だった。
集中しろとの命令に変わり映えの無いモニタ情報を確認し、全ての
久し振りに吐く長い溜め息と共に目を閉じようとした、景色が黒に移り行くその時だった。
〈────? な、アイツら何処を向いて……〉
〈スペクター4どうした、プルーマに気付かれたか?〉
〈いえ、此方には気付いてはいません。いませんが、全ての個体が1つの方向を向いていて────〉
短いノイズ音がスピーカーを強く鳴らし通信が不意に
モニタコールマークはオフライン。異常事態と脳が判断する前に訓練の成果からかそれともファイターとしての勘か、視線は意思に反して正面モニタの機体情報を確認し事態の
計器が観測している異様な力場の乱れ、これは……ッ!
瞬間。空気がスパークした際に発する低い破裂音の連続と、
「な、何が……」
過去に何度も見た光景の筈だった。あるときは砲撃機が持つ強力なビーム兵器、あるときは戦艦から放たれる高圧粒子砲。
記憶の
「え……。す、スペクター5、反応…………ロストっ!? そんなっ!」
〈
再び輝きが正面モニタを覆い、通信が断絶される。目をしかめる中レーダーを恐る恐る見やれば印された各隊員達のマーカーそれらが全て
彼方から
「ひッッ…………!」
部隊の残機1。私だけだ。
把握も何も出来ていないこの事態にただ口が渇く。
どうやって。
何故。
どこから。
試験は。
私は。
疑問が脳内を埋め尽くした頃合いか、真白の閃光が遠くから私に
※ ※ ※ ※ ※ ※ ※
照明が消された個室。高々と積み上げられたコンピュータの駆動音が低く
モニタに映し出されているのは“学園都市”に在住する
──“学園都市”とは新しいガンプラバトルシステム研究の実験場兼、今後世界に配信される“
長く伸びた
「まぁ私?やれば出来る女ですから?今日の仕事を明日に持ち込むなんて真似は
候補の人物をピックアップ。
これまで選んだのは会社員に子供、そして軍人。
軍人の肩書きはともかく全員顔が良い。仕事を行う以上、
「あら、この人……? “フォース”リーダーじゃないですか。ファイター兼ビルダーそしてイケメンに加えて勝率も高い! 超・優・良・物・件ッ! この人にしちゃいましょう、はいっぽち~」
クリックと共に人物へチェックが付けられ、これで4人のファイターが決定された。後は彼らに招待メールを送信すれば仕事が終わる事にとりあえずは一息付けるとチェアに寄り掛かる。手元の紙カップに入ったコーヒーを流し、長時間の経過によって冷えた苦味に思わず顔をしかめた。
────対して。
「今丁度お熱い時期らしいですね、この人が所属しているフォース。……ええと名前は────フォース“ファクトリア”」
彼なら、彼らならこのミッションをクリアしてくれるかも知れないという期待が4人を眺めると沸いてくる。
調整ミス、耐久値ミス、AIミス、全て上限値
モニタ手前のファイルを手に取り、“社外極秘”と判子の押された茶封筒を開封。留められた厚用紙をめくり、本ミッションの破壊目標が大きく書き出されていた。
「────主亡き後の亡霊、