「まず、状況を整理しよう。アキラ君。マップの更新状況は?」
「ちょうど終わる。────周囲に敵性反応は無し、と。うわ、地形はあまり良くないな、今皆にも送るよ」
機体のメインカメラから出力された荒野の光景。景色を薄く
バトルフィールド峡谷、その東端。
枯れた大地と時折
解析を進めるアキラの引いた声にこの場の誰もが良い印象を持つわけが無く、程無くして送信された地形データにレンも同じく声にならない声をあげる。
「予想通りステージの大半は岩山の迷宮と……。ガキんちょ、峡谷の詳細な構造データはねぇのか?」
「観測しようにも粒子の乱れが酷い、多分ハシュマルのエイハブリアクターの影響だよ」
エイハブリアクター。
機動戦士ガンダム鉄血のオルフェンズに登場する機体の動力源であり、大きな特徴は電力を半永久的に生産し続けること。エイハブリアクターにはそれぞれ特有の周波数がありそれを周囲に発しているが、今回のハシュマルの場合どれ程強大なエイハブリアクターを積んでるのか推し量れない程に発している電磁波が
4機の中で最も探査系統が高いガンダムラファールでも解析を行えないとなると、いよいよ自分達の目で確かめながらハシュマルを探しだす他無い。
溜め息を1つ挟んでトヨザワが苦々しく
「うん、そうなるとネックなのは敵の数だね。こっちは4人、あっちはその10倍以上、まともにやったら
「グレイズランサー達か?主な役割は
言われ、ヴィルフリートを除いた3人がメインカメラをニヴルヘイム後方へと向ける。
グレイズ・ニヴルヘイムの背後。長槍を地面に突き立て整列をしているグレイズその数3機。シルエットは獣を思わせる4脚と、首にあたる箇所から伸びたグレイズの上半身で、見てくれは半人半馬のケンタウロスに良く似ている。1目で
「話を戻そうか。……先程フミヤが言った通りこちらの戦力数は遥かに相手と劣る。
「ん。数の不利に加えて相手は
じろりと見やる半眼にヴィルフリートは微笑で返す。
「とすると作戦は決まったが、他に代案がある者はいるだろうか?」
モニタ左上に表示された各々の表情。
口を開く者は居なかった。
※※※※※※※※※※
敵の侵攻経路に迎撃兵器を構え、複雑に設計された道中には無数の罠が侵入者を
正攻法で攻めるとするなら籠城側の3倍以上の戦力を用いて進撃する人海戦術が兵法だが、今回のように攻略側の数が極端に少ない場合は使う手が限られる。
「ちょっとヴィルフリート、この編成に悪意は無いよね?なんでボクがおっさんと一緒に行動なのさ」
「今回の作戦で早急に求められるのはハシュマルの位置と峡谷の地形データだ。
「だってよガキんちょ、宜しく頼むわ」
ぐぬぬと言わんばかりのアキラが見せる表情にトヨザワは
峡谷の手前、城壁にも等しい高さの岩壁の前に小隊は2つに分かれていた。
「グレイズランサーを無線の中継としてこちらとそちらの中間地点に配備する。緊急時は戦闘に参加するがあてにはしないでくれると助かるよ」
声に応じるようニヴルヘイム後方に控えたグレイズランサーがアストラルホーク後方へと硬質な接地音を響かせて再び
その、手にした長槍の
「フミヤは私と行動、地上から峡谷へと入る。……頼りにさせてもらうよ」
「プレッシャーだなぁ」
苦笑を浮かべるフミヤの駆る機体。マラサイ。
宇宙を連想させる深い青色とメタルパーツに彩られた機体各部。金属パーツによって補強された放熱機構と推進部、そして
「フッ、────では、作戦開始と行こうか」
『────了解』