そこは暗く、大きな空洞だった。
メインカメラを横に向ければ、黒く
横幅縦幅共に広くMSならば3機は横に並んでも余りある広さの大穴は峡谷に元から存在する物ではない。4機が隊列を組んで移動中のこの空間はハシュマルが放ったビームによって開けられた天然の通路だ。
遠くに
「もっとも、撃たれた時点でこちらは避ける術が無いのだがな」、先程ヴィルフリートがぽつりと発したこの言葉に対して誰も反応しなかったのは少し可哀想だなと、トヨザワが笑い混じりに口を開いた。
「それにしても大胆な作戦だね。まさかハシュマルが開けた穴を辿って向かうなんて」
「ハッ、折角向こうから招いてくれたんだ。今はご招待に預かろうぜ」
「────ちょっといいかな。気付いてると思うけど、言いたいことがある」
僅かに
「先程のプルーマにしろ、初めにこちらが受けたハシュマルからの攻撃にしろ、向こうはこちらを倒そうと思えば倒せる状況だった」
峡谷に侵入した時点でハシュマルはこちらを察知していたのは紛れもない事実だ。小隊の分断のタイミングに、こちらが持つプルーマの前提知識を逆手に取った戦略。
プルーマは緩やかな坂は上れるが直角となれば話が違う、筈だった。分断の原因となった1機目のグレイズ・ランサーが撃破された際、ヴィルフリートが見た映像は崖を這い上ってくるプルーマの姿。崖を伝って移動する機動性は従来のプルーマでは考えられず、その見誤りがこちらが犯した最も大きな
そしてそのプルーマの集団は1度レン、アキラが配置したグレイズ・ランサーを無視している。
明らかにこちらの裏を突いた戦略に加え、先程
「恐らく、ハシュマルは僕らを
「気味の悪い話だ。学園都市が作った高度な自律AIもそうだが、……まるで人間と駆け引きしているような気分になるな」
ヴィルフリートが目を
「まっ、ここで考えても仕方ねぇだろ。難しい事はこの後酒でも飲みながら考えりゃ良い。おら、そろそろ出口だ」
削がれていた意識を正面に向けると、眼前に広がる白い光。
黒の空間を見る見る内に
気が付けば足元まで伸びた白い世界にガンプラを委ね、一同は闇を駆け抜けた。
※※※※※
インレ、というMAが在る。
“機動戦士Zガンダム外伝”、“ADVANCE OF Z”に登場するこの機体は全長100mを越え巨体には外惑星への武力侵攻を可能にする
そのインレに搭載された装備の1つ。“インレのゆりかご”。
惑星間航行を可能にする大型ブースターと居住区画が設けられたこの装備は巨大な球体状の外見を
「な………………んだ、あれ……」
空洞を抜けた先。岩壁によって囲まれた空間は宮殿が1つ収まると思える程の広さを有し、空に迫る岩の山は遥か高くまで
だからこそだろう。
“インレのゆりかご”。それを背部に取り付けたハシュマルの異様はさながら卵を抱えた女王虫の
疑問とも言える質問を吐き、アキラがラファールのメインカメラの倍率を上げた。
「プルーマ……! あれ全部プルーマだよッ!」
ハシュマルの全長は約30m。比べて100mの大きさの“ゆりかご”はラファール及び他3機のおおよそ10倍の全長だ。埋め込まれたプルーマが全て排出されたらどれ程の数になるか、思考して背筋が凍る。
この空間は岩壁で外部から
『公式がプルーマ生成ユニットのイラスト出さねぇからってそれっぽい装備を付けたってか? ハッ、センスの欠片もねぇミキシングだな、思考停止は好きじゃねぇ』
『あのプルーマが全部出たとして200機以上、戦力差は絶望的。運営の変な人はこのミッションをクリアしなくて良いって言ってたけど……、ここまで来たなら皆でクリアしよう』
『同感だな。……恐らく奴はユニットを装備している分動くことは出来ない、私は本体を叩くとしよう。』
そうだ。ここまで来たんだ。多少の性能差、機体相性なんてものは
「どうせ次は無いんだ。ボクたちにやれる全部を出し切って……。終わらせよう、笑ってさ」
4機が武器を構え、ハシュマルも“ゆりかご”を引き