ガンダムビルドアウターズ   作:ク ル ル

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1章7話『相棒』

 地下鉄、モノレール、ショッピングモールに自動運転バス、最新鋭のリニアモーターカーと。学園都市開発計画が我が萌煌学園周りで始まり2年、学園生活に慣れ始めた頃には既に急速で工事されていった街並みを授業中配られたジムをやすりがけしながら眺めていたが、それらが遂に解禁された今日、アウターにログインしなければならない1時間前でもSNSに写真を投稿する為、自分のガンプラと自撮りをする人達が多く見られた。エイジと俺は人混みに巻き込まれないよう学園生徒の寮生だけしか知らないであろう抜け道通称【アリアドネ】を通り最短距離で寮へと帰宅。

 

 アリアドネとはただの「森林地帯にある特徴的な樹を目印に寮を囲う塀へと行き、寮を管理するラスタル・エリオンに似たおじさんから気付かれない裏口から侵入出来る経路」であり、名前負けしている感は否めないがそれほど当時この秘路を発見した寮生が興奮し、命名したのだろう。

 アリアドネは寮の門限を過ぎた寮生の先輩たちが開拓した獣道で、いかにして門限が過ぎるまで沢山遊んだ後エリオン公に見付からず寮へ帰宅するかを目的に開拓された裏道だ。そして俺達も過去の偉大なる先輩方の後に続き、見事見付からず寮へ侵入出来た。

 

「アウターギア……アウターギア、ウフフフ」

 

 八畳の部屋の右端、ベッド前の姿鏡に学園から支給されたデバイスを眺めにやついている自分が映る。

 大きさ、形が半分割されたメガネもしくはインカムに近いそれは耳にかけ起動するとエイジいわく、装着した人間の脳へ特殊な電気信号を送り直接VAGPCS(ヴァーチャルアクションガンプラバトルサイバースペース)へ意識を繋げるデバイスらしい。こうして見るとインカム等とはデザインの差違があり本体に走ったラインが仄かに発光しているのが特徴的だ。流線的な外見は装着した人間を外で見ても違和感がないように思える。

 何度も部屋の時計を確認するがログインが出来る時間の19:00まであと1時間もある。既に風呂とコンビニ弁当で夕飯を済ませ後は時間を待つばかりで世界での本アップデート前にβテストへ参加出来るという実感で胸の高鳴りが鳴り止まない。

 

 そういえばと、ログイン前に出撃するガンプラを登録しておけと別れ際に言ったエイジの言葉を思い出し、ベッド前の展示ケースに飾ってある愛機達を眺める。

 アイガンダム、アイズガンダム、リボーンズガンダム、リボーンズガンダムオリジン、リバーシブルガンダム、アイズガンダムの改造機体達と、その殆どは機動戦士ガンダム00の機体群、その中の更に限られた機体に属するガンプラだ。

 どれをアウターに登録するか、1度見渡し目に留まったのは薄い蒼の機体色が目を引くアイズガンダムだ。

 

 ケースを空け、手に取り状態を確認する。放課後のバトルで使用したリボーンズガンダムに近い外見だが、両肘のツインドライヴが背中に1基のGNドライヴへと変わりキャノンモードが存在せずそれに伴いジムタイプのヘッドも撤廃されている。機体背部に搭載されていた大型GNフィンファング、シールド及び腰の小型GNフィンファングも姿を消し、左手に構えた大型シールド、背部には2基のバインダーが特有の存在感を放ち、リボーンズガンダムの面影を残しながらもしっかりと別のモビルスーツと分かる珠玉のデザインだ。

 アイズガンダムには無数の傷があり、瞼を閉じると幼い頃から共に歩んできた思い出が昨日の事のように甦る。

 

「やっぱりお前だな、アイズガンダム」

 

 初めてのアウターは最も使い慣れたガンプラで行こうと心に決める。登録のためデバイスをリュックから取り出そうとまさぐった瞬間だった。

 

「あれ?」

 

 リュックからは見付からず、キャリーケースを調べても、逆さにして揺らしてみても出てくるのは紛れ込んだプラ板のカスばかり。

 先程まで興奮で火照っていた身体が悪寒に1度震え急激に冷えていくのを感じ最後にデバイスを触ったエイジとのバトル後を思い出す。

 

「あぁっ!もしかして学園か!?」

 

 恐らくバトルルームの筐体に設置しっぱなしのまま帰ったのだろう、デバイスが無ければアウターギアの初期設定が行えず起動が出来ない。アウターへのログインに乗り遅れる事だけは、いちガンプラビルダーとしてガンプラファイターとして、そして抽選に落ちて今頃涙を飲んでいるであろう全世界のガンプラファンの方々に示しがつかないと慌てて学園へ向かう支度をする。

 握ったアイズガンダムそのままに、最低限の装備を手に取り外へと出る。昼間の陽気な気温は鳴りを潜め、肌に刺さる冷たさといつもより強い風が頬を撫でた。もう一枚羽織ろうかと逡巡するが今は何よりも時間が惜しく肌寒さに耐えながら夜の森へと駆け出した。


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