ワールワインド改が
地上で3機が結集する中、大広間に浮かぶ1機の機影。ガンダムラファールがミサイルコンテナを展開し着弾箇所の計算を行っている。
「ガキんちょ早くしろ! ここぁもう持たねぇぞ!」
「泣き言うっさいなおっさん! 集中できないから黙ってて!」
ハシュマルの粒子砲によって亀裂の走った箇所や、構造上
3機からは見えない、プルーマの集団に
撃つ気だ。
「────くぅッッ! 間に合えッッ!!」
最後のロックオンはハシュマルの頭部に定めて放った21連装ミサイル。ラファール腰後部から一斉に放たれたミサイルは入り組んだ弾道を描きながらアキラが設定した箇所へ次々と着弾し大きく爆ぜる。
ずん、と。腹の底に響くような衝撃と共に
ハシュマルの口から放たれるのと、最後のミサイルが着弾するのはまさに同時。
峡谷のフィールドに入ってから何度も見舞われた規格外の粒子砲による通信
────みんな、無事でいて。
不思議と
※※※※※※
「な、にが起きた……?」
レンの意識が数秒遠退いて、そして瞬時に回復する。
アストラルホークのメインカメラを見渡せば、目の前にはだかる巨大な岩盤。恐らく崩れ落ちて来た物が眼前に突き刺さったのだろう。
レーダーの異常も元に戻り、レーダーフリップにはアストラルホークの脇に見知った2機が居ることを知らせる。
だが、もう1機の姿は見えず、レーダーにも反応はない。
『なに立ち止まってるんだよアンタら! 早く行けって!もう崩落は始まってる!』
突如響いた
落ちてくる岩石の影響か、激しく揺れる視界の中レンも負けじと声を張る。
「ガキんちょ、テメェはどうすんだよ!
「
「クソったれッッ!!」
コクピット内に吐き捨てた悪態が静まりに落ちて数秒。崩落の音の中、エラーによって真っ黒に表示されたアキラのスワイプが音声によって点滅する。
『何だよ、心配してんの? 顔と態度と性格と悪人面に似合わない事しないでよ、笑っちゃうよ』
「…………顔、2回言ってんぞ」
『実際丁度良かった。観測兵が状況を最後まで見届けなきゃいけないし、ラファールの武装にはハシュマルに通用するものは何も無い。ボクが最適だった』
「て、メェ…………!」
返答に
レンは別にミッション中味方が墜ちようが、自己犠牲しようが別段気にする性格ではない。ただ気に入らないのは、あれだけ自分を嫌っていたガキが必死に踏ん張って、力量で負けているこの小隊の中で食らい付いてきたその最後の結末がこんなつまらない事なのが。
なのに、そんな結末も悟ったような素振りで受け入れてるのが、どうしても
最後まで噛み付いてきたんなら、最後までそれを続けろ。どうして、こんな、下らない事で。
「アキラ君。我々はもう行く。君の功績、忘れはしまいよ」
『世界ランカーにそんな事言われるの、少しだけ恥ずかしいな。まぁ、その。ありがと』
一際大きい岩石が目の前に突き刺さる。
間も無く崩落の限界なのだろう、先程から続く揺れも激しさを増して、アストラルホークにも小石が降り落ちた。
「ガキんちょ……、テメェこのミッション楽しかったか?」
『急にどうしたんだよ。……まぁ楽しかった。色々勉強になったし。…………まぁでも不愉快なのはあれだね、アンタから────
「
『────っ』
「覚えたぜ、テメェの名前。そのムカつく性格と生意気なファイターとしての技術。2度と忘れねぇぞ」
『…………ハッ』
レン達が立っている脱出路にも
最早予断は許さず、直ぐにでも機体を走らせなければ崩落に巻き込まれるだろう。
『行けよ工房長。アンタのその機体、かっこ悪くは無かったよ』
びしり。大きな
岩石が雪崩落ちる速度と同じく3機は
※※※※※※
「行ったか」
崩壊による電波障害の中、僅かに捉えていた3機の反応が脱出路の奥に消えたのを見届けてからラファールを地上へと下げる。
幸いにもハシュマルが最後に放った粒子砲はぎりぎりの所で狙いを
それも後押ししてか、目論み通り崩れた
崩落によって逃げ惑うプルーマの集団が、ハシュマルが開けた他の穴に殺到しようとしているのを横目で捉えて機体を走らせる。
丁度プルーマと穴の間に割って入るようラファールが立ち止まり、
「行かせるわけ、無いだろ?折角
プルーマの数は100を優に越えており、1機のみ立ちはだかるラファールとの対比は比べるまでもない。
GNライフルをミサイルコンテナが搭載されていた箇所に掛けて、両手が空いたラファールが悠然と足を止めているプルーマへと歩きだす。
「と、言うか。誰も気付かなかったな。……支援機がこんな場所にビームサーベルを搭載しているわけ無いのにね」
腕を交差させて、両腰に付けた────支援機には似つかわしくない2本のビームサーベルを手にして発振。
過去、工房長に負けた際は格闘戦の弱さが敗因だった。
トランザムでは速さが足りない。機体を
「行くよラファール。────CODE-“アッティモ”、起動」
声と共に。
ラファールに搭載されていたセンサーパーツ、レーダー補強のパーツが脱ぎ捨てた鎧のよう地面に落ちて、発振した粒子の刃が
散る前の桜が大きく咲き誇るような、そんな危うげな輝きを機体に灯しながら。
燃える揺らめきを