「肉を焼けぇー!! カルビを焼けぇー! あっ、姉ちゃん生ビール追加で!」
「声がでかいよおっさん、隣で叫ぶなっ! あ、ボクはオレンジジュース追加で」
学園都市第一学区、ショッピングエリアに建てられたビルの最上階。
あらゆる飲食店が建てられている学園都市の中でも有数の高級焼肉店入り口に建てられた“貸し切り”の看板。その向こうから聞こえるレンとアキラの声に肉を切り分ける厨房のシェフもたじろいでいる。
「それにしても、サクラさん本当にこんな高そうなお店で打ち上げやっても良いんですか?」
「心配する顔も素敵ねトヨザワ・フミヤ。大丈夫安心して、経費は全部学園都市で落とすから。気にせずに食べて
学園都市どころか周囲の山岳地帯も
外の風景を見やるトヨザワの横顔に、珍しく
「失礼な事を言うが、フミヤはこういう場は苦手なのか?」
「たはは、そりゃ苦手だよ。こんな場所
「私の場合は娘と一緒に入る事が多いからな。別段苦手という事もない。……この
目を
成る程確かに嫌ではないなと、トヨザワも烏龍茶を煽りながら目の前の大人と子供を眺めた。
「てかガキんちょ! てめぇ墜ちて無いんならさっさと出てこいよ! なんだよ最後の狙撃! 普通に当たるかと思ってハラハラしたわ!」
「はぁ~? 崩落するあの広間でプルーマ全滅させた人間に向かって言うことかな?ボクが居なかったら最後プルーマがうじゃうじゃ下から這い出て来てたんだから、感謝しろ」
「
「カッチーン!! 表出ろ、上等だよッ! おっさん倒すためにずっと腕磨いてたんだからな! ボクが勝ったら死ぬまで敬語だぞ!」
『お待たせしました。こちら生ビールとオレンジジュースでございます』
「「ありがとうございますッッ!!」」
苦笑する店員にレンとアキラを除いた3人が頭を下げる。
飲み物に口を付けた2人が黙ったせいで
視線がサクラに注目し、頭を軽く下げて僅かに
「まずは、学園都市ガンプラバトル運営を代表して礼を言わせて
冗談を言う素振りを見せないサクラの言葉に、全員が素直に感心する。
1人1人見渡す
「それと、今回のミッションは口外無用でお願いしたいの。……一応あのハシュマルは学園都市における最新AIの素体だから、会社で言うところの
「ここにいる全員口外とかそういうの考えちゃいねぇよ。自分のガンプラにおける
満足気に頷いたレンはジョッキに注がれた生ビールを煽って、酔った勢いのまま隣のアキラを抱き寄せた。
「まぁでも? このガキんちょが男らしい活躍したくらいはポロっと誰かに言っちまうかも知れねぇな」
その、言葉に。
サクラとアキラの表情だけがピシリと固まるのをレンを除く男性陣は見逃さなかった。
抱き寄せられたままのアキラの肩が小さく震え、腕から感じた異変にようやくレンが顔を間近に寄せる。
「んだよ、誉めたんだよガキんちょ」
「ぼ、ボクが男らしい…………?」
頭をわしゃわしゃと撫でられたアキラはレンに負けじと
「ボクは女だよッッ!! ────ま、まま、まさか、…………ずっと男だと思われていたのかッッ!?」
一大フォース
時間にして数秒か。レンがふと口を開く。
「………いやぁ、出るとこ出て無ぇからてっきり男だと……──────ぶふぉおッッ!?
※※※※※※
「娘さんの名前は? 色紙に書きたいから教えてよ」
「ヒトミって言うんだ。……覚えてくれてたんだねサインの事。ありがとね、アキラ君……ちゃん」
「アキラ君で良いよ、急によそよそしくなるのは少し変な気分だから」
打ち上げは2時間程で終わりを告げ、それぞれ明日からの生活のため
居酒屋やファミレスに行き交う人達から少し離れた、ビルの入り口で行われている最後の
ちなみにあの後レンはやけ酒に走って、悪酔いしたサクラが実はバイセクシャルということもカミングアウトした
「私はレンを
「お? あきら……? あきらが、かえるのか? おぉ、あきら! かっこよかったぞおまえ! こんろうちのじむしょにこい! いっしょにガンプラつくろーな! がっはっは!!」
「うわぁ……、あの
「ははぁ~ん成る程。いやアリ、全然アリね。むしろ王道ね。あ、やばい、鼻血出そう」
「空気の読めないサクラさんはまぁ置いとくとして……、気を付けて帰ってねヴィルもアキラ君も。家に帰るまでがガンプラバトルだからね?」
トヨザワの何気なく言い放ったそれが
突然胸へ
もう、男の考えは固まった。
だったら、これを最後の出会いにしてはいけない。彼らはガンプラファイター、ならばこそ。
「僕も、もう一度始めてみるよ、ガンプラバトル。今日あった皆で、もう1度戦いたいから」
胸に
ポーチに入った小箱をビルの明かりに照らされながら開けて、包装材にくるまれた
子供の頃遊んだように、その頃と同じ表情で、笑顔で。
「これからもよろしくな、マラサイ」