ガンダムビルドアウターズ   作:ク ル ル

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外伝『Gun Through the Dust Anima』20話

 深夜を回った学園都市。

 夜の公園に(たたず)む女性は翡翠(ひすい)の長髪で、やがてブランコに座り空を見上げる。

 尽春(じんしゅん)の夜風は()き通って心地好(ここちよ)く、燦然(さんぜん)と輝く星空は大気汚染を一切排出しない学園都市の賜物(たまもの)だ。

 長かったな、と。(はかな)げに微笑(ほほえ)む少女のような表情でゆっくりとブランコを()ぎ始める。

 あれから何年の時が経ったのだろう。

 フォースは解散して、皆はそれぞれの生活を初めて、自分は真相を究明(きゅうめい)する為にガンプラバトルの運営へと身を移して、今日ようやく。

 黄土色(ヘーゼルカラー)の目を閉じて、想い()せる過去の記憶のまま。(いつく)しむように小さな口を開いた。

 

「やっと。やっとクリアしましたよ。スペクター1……。あのミッションをクリアしてくれる人達にようやく出逢えましたよ……っ!」

 

 あの時の私は皆がやられていくのを見ているだけだったけれど。

 クリアしたのは自分では無いけれど。

 それでも、自分の中では何か救われたような気がして、報われた気がして。

 

「───────スペクター4、ミッション完了しましたよ……っ!」

 

 普段の彼女の陽気さが(うかが)えない表情はしかし明るく、満面の笑みで夜空の星達を見やるのであった。

 

 ※※※※※※

 

 軍服のロングコートをたなびかせる男の表情は、堅い。

 地下の駐車場を歩き、反響する自分の足音をどこか無機質な音楽の代わりに聞きながら男は鉄面皮のままに歩を進める。

 不審(ふしん)な点が(いく)つもある。

 どれも憶測(おくそく)に過ぎない予感だが、軍人であるヴィルフリートの心に警鐘(けいしょう)を鳴らすのには充分過ぎる程だ。

 

()()が、学園都市で起きようとしている……?」

 

 胸中に留めておく疑問の筈が気付けば口から出ていたようだ。周囲の人間に不審がられぬ為に一瞥(いちべつ)して、視線がそこで止まる。

 ヴィルフリートの歩く通路の先、コンクリートの壁に背を預ける2人の人物。奇しくも青年と少女というヴィルフリートの良く知る組み合わせだが知った顔ではない。

 そのうちの1人、今日戦闘したプルーマと良く似た髪色の青年だなと心の端でそう思った。

 横を通り過ぎるその瞬間。そっと呟かれるよう青年の声が耳を突く。

 

「アンタ、ガンプラバトルは好きか?」

 

 冷然(れいぜん)見据(みす)える目は敵意に満ちて、ヴィルフリートを捉えて離さない。


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