ガンダムビルドアウターズ   作:ク ル ル

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外伝『Gun Through the Dust Anima』22話

「女の匂いがするっす!リーダーどこほっつき歩いてたっすか!?私に内緒でデート行ってたっすか!?」

 

「うるっせぇよ……耳元で(わめ)くんじゃねぇ……」

 

 頭に響く声に顔をしかめながら、カガミ・レンはフォース工房(ファクトリア)の事務所に備えてあるソファへ横たわる。

 目が覚めてからとにかく頭痛も酷く、本来であればアストラルホークの調整を行いたいところだが体調的にそれは無理があった。

 内心釈然(しゃくぜん)としないながらも頭痛に耐えながら口をゆっくりと開く。

 

「イヌチヨ……」

 

「はいっ! フォース工房のNo.2。ヒメジ・イヌチヨっす! 何ですかリーダー!」

 

「だから、(わめ)くんじゃねぇ……、頭に響く……」

 

 名前の如く駄犬のアホ面が横たわるレンを(のぞ)き、うっとおしげにそれを手で払う。

 頭のなかで鳴り止まない轟音に眉を寄せ、何とかテーブルの(かばん)へと手を伸ばし────アストラルホークの入ったケースをイヌチヨへと渡す。

 

「ん、なんすかこれ。私へのプレゼントすか?」

 

「相手にすんのもダリぃ……。その中にアストラルホーク入ってるから動かしてみてくれ、お前の意見が聞きたい」

 

「………………っ」

 

「あ?」

 

 頭痛の中顔を見やれば、イヌチヨが箱を両手に震えている。

 どうしたか、と聞こうとした矢先、ぱぁっと輝いた笑顔に嫌な予感が(よぎ)った。

 

「いやっほぉーい! リーダーの新作私が使えるんすか!? 任せてくださいリーダー! このイヌチヨがリーダーの納得するレビューを叩き出してあげますよぉー!」

 

 二日酔いじゃなかったらこれ(バカ)の顔面に今頃アイアンクローの跡が焼き印のように付いていたなとレンは()めて笑う。

 そそくさと隣の部屋の、ガンプラバトルの筐体が置いてある場所へ向かったイヌチヨを横目で見て、そこで悟る。

 

「あ、イヌチヨ。実物じゃなくてバウトシステムで試験しろよ?ただでさえアストラルホークは俺用に調整してあんだから────

 

 どんがらガッシャーン!!

 

「ひゃーっ! このガンプラ動作が過敏(かびん)過ぎますよ!? なんすかこれぇー!? 欠陥! 欠陥品!」

 

 わなわなと、血管が浮き出るのを二日酔いの中でも鋭敏(えいびん)に感じ取れた。

 目を見開いて上体を起こす。他に人が居たならばレンの表情を阿修羅(あしゅら)(ごと)き顔と評していただろう。

 

「欠陥なのはテメェの脳みそだぁ────ッッ!! なんでいつも俺の言うこと最後まで聞かねぇんだよこの駄犬がよォ────!!」

 

「ぎゃ───! リーダーが怒った!! ここは逃げるっす! 逃げるが勝ちっす!」

 

「待てやこらァ────!! 今度こそ糞が詰まってる脳みそ取り替えてやるよォ────!!」

 

 ※※※※※※※※※※

 

 照明の消された暗い部屋だ。

 中央に配置された椅子を中心として大小のケーブルが部屋の端へと伸びており、椅子には1人少年が座っている。

 耳に掛けられたアウターギアが起動状態(アクティブ)から非起動状態(ノンアクティブ)移行(いこう)した事を知らせる青のライトに切り替わり、やがて少年がアウターギアを外した。

 (からす)()れ羽のような髪色と、暗闇でも明々と灯る深紅(しんく)双眸(そうぼう)(わず)かに苛立(いらだ)った声で手にしたアウターギアを放り投げた。

 

「やれやれ、遊んでやったら付け上がって……全く(もっ)()(がた)い」

 

 深く呼吸をし、年相応の身体が(ともな)ってゆっくりと上下する。1度目を閉じて、先程の戦闘を思い出した。

 成る程、()の使い方は大方(おおかた)理解が出来た。MAとやらの挙動にも慣れたし次に会った時は容赦(ようしゃ)しない。

 開いた瞳が(わず)かに復讐(ふくしゅう)の炎で揺れながら、呪詛(じゅそ)(つむ)ぐよう(しか)と誰も居ない部屋に響かせる。

 

「あの4人、次に会ったら今度こそ本当に」

 

 ────殺してやる。

 少年の顔が(いびつ)なものに変質するよう狂楽(きょうらく)じみた笑みに染まって、嗚咽(おえつ)を含んだ笑みが胸の内から溢れ出た。

 今の自分に()が加わったのならその時は。

 

 ────────電脳世界(アウター)の神として君臨することも容易(たやす)いだろう。




 まずあとがきの冒頭に謝罪をさせて頂きます。大変お待たせして申し訳ありませんでした。
 生活の環境が少し変わって執筆が遅れる日々、こんなこと書きたいなーという脳内妄想は捗るのに執筆は一切進まない。
 ガンプラ製作も小説の執筆も、同じ創作物なのでそこは似ているんですね(書け)。

 さてさてとりあえず終わりを告げた外伝『Gun Through the Dust Anima』ですが、やはり書き初めは「こんな新キャラと新機体書けねぇよ!何考えてんだよ自分!」と嘆いていた訳ですが、いざ書いてみたら登場ガンプラが好きになり、キャラクターにも愛着が湧き、筆が進む進む。
 この場を借りて参戦を承諾して下さった4人のフォロワーさんに感謝であります。
 リアルの方で仙台の展示会に行く機会がありまして、そこでアストラルホークとガンダムラファールの実物を見たとき、いやぁ感動しました。ビルドアウターズあわせをしてくれてたんですもん、感激。

 今回外伝と銘打った訳ですが時系列的には3章の後なのに加えて、本編と関係する事象が進行したので実質3.5章ですね。盛り込んでいくうちに合計文字数が大変な事になりました。

 次に自分が書くのは恐らく1章と2章のリメイクかと思います。辻褄合わせの修正と新規エピソードの大幅追加!
 いやぁ!更新はいつになりますかね!

 そんなわけでビルドアウターズはまだまだ続きます。
 どうか読者の皆様、これからもビルドアウターズとクルルをよろしくお願いします。皆様のガンプラライフに幸あらんことを。

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