夏の陽のぎらつく太陽と天の果てまで伸び尽くす入道雲の
同時に、切れた口内から
「わるもののガンプラなんてなぁ~、こうだっ!」
その公園は小学校の上級生が
子供は善悪の区別が
ジオンのMSが好きな子供を集団で
数歳年上の、体格も1回り程大きな腕に羽交い締めをされて、ある程度固い何かがより固い物に圧迫され耐えきれずひしゃげたような音の方向を、幼いリュウは見開かれた眼のまま受け止める。
続く記憶は断片的で、気が付けば周りに少年達は居らず身体中土まみれ。泣き倒れてうずくまる視線の先、バラバラの『────』が物言わずリュウを見詰めていた。
乾きひび割れた地面の砂が太陽の陽を返して傷口に染みて、その自身の無力さに、張り上げていた泣き声が更に増して響いて。
だから、掛けられた声に初めは気付けなかった。
『大丈夫かい』
リュウから消えていった記憶は、思い返せば笑えるような幸福な出来事の物が大半だ。故にこの後の情景が思い出せないことを無意識的に理解できた。
差し伸ばされた、大きな掌。映像にはノイズが走って
『────リュウさん』
声が聞こえる。
少女の声だ、鈴と鳴り渡るささやかな声音。優しく投げ掛けられた声に記憶の映像は水面に伝わる
※※※※※※
戦場で果てた人間の
帯電したスペースコロニーの残骸の影響で密集したデブリや朽ちたMSに放電現象が発生して、時折
そもこのステージがログイン場所である『中央宇宙ステーション』から遠く離れた位置の上、転移のコマンドも行えず、辿り着いてバトルを始めたとしてもいつ身を焼かれるかもしれない放電のギミックに意識を削がれるのはストレスが大きいようだ。
『リュウさん。そろそろ戦域に到着します…………気分が優れないようですが、大丈夫ですか』
「問題ねぇ。今日を逃したらLinkはもう使えねぇんだ、休んでなんかいられるか」
少女の声と、Hiーガンダムの真横を走った稲妻の閃光に没しかけていた意識が覚醒する。何かを思い出していたような……、
リホに最後の実験の日程を告げられて2日目。
ナナと離れるそのギリギリまで電脳世界でバトルを行い勝率を稼ぎ、今日のバトルでプロへの昇格試験の規定勝率が満たされる計算だ。
休んでなんか、いられるものか。
『帰ったら何か飲みたいものはありますか? 冷蔵庫に確か買い足しておいたココアが……』
「ここらはレーダーが役に立たない。索敵に集中するから……」
少し黙っていてくれ。言外に
「俺の、さ」
少女はリュウの意識の内側に居る。
リュウが思考した物も、感じた感情もそのまま少女には届いてしまう。
だから、感じ取られるよりも早くリュウは思いのまま声に出した。
「俺の記憶が消えている事とナナの感情が豊かになってるのって、何か関係があるんだろ」
『…………』
言葉の無い返答が、そのまま答えだった。
普段なら何を考えているか正直分からない感情の変化が薄い少女だが、リュウが何かを聞けば即答するし分からなければ分からないと言う。
少女が沈黙を選ぶ時は決まってリュウに隠し事をしている時だ。
「責めてるんじゃない。……ただ、俺は。今の俺は、自分でも少し変だって事は自覚してる。記憶が消えるって怖ぇし、ガンプラに関する記憶だけ消えるっつっても、
ある日突然エイジやコトハ。ナナにユナや地元の模型店のガキ達の事。それらさえも忘れてしまったらと考えてしまう事も最近では増えてきた。全てを忘れてしまった果てに、自分は何の為にガンプラを続けているのか。そもそも
疑心暗鬼に囚われている最近だ。自身の言動が尖ってしまうのも、口調が強くなってしまうのも申し訳ないと思いながらも自覚はしている。
「けど、ナナはそんな俺を気遣ってくれる。それは、嬉しいんだ。……言えないことはそりゃあるだろうから言わなくても良いし言う必要もない。ただ、ありがとうって伝えたかっただけだ」
言い終わるや否やHiーガンダムのアイセンサが前方で展開しているMSの小隊を発見する。正面モニタに拡大された宙域の、漆黒の背景に溶け込む機体は────105スローターダガー。
レギュレーション400。『機動戦士ガンダムSEED C.E.73 STARGAZER』に登場する高性能汎用量産機だ。
『……リュウさん、私はっ』
「ナナ頼む。気付かれるのも多分時間の問題だ」
意図せず
言及しようか思考する刹那、背後を取った形にも関わらずスローターダガーの最後尾の1機が
「ナナ、準備はいいか」
『はい……、いつでも』
デブリの影に、それでもHiーガンダムの蒼白の機体色は目立つ。
気付いたスローターダガーが小隊に異変を伝えたのか次々と携行火器を構え、こちらを囲む軌道のまま散開を始めた。
エールストライカーが2機、ソードとランチャーがそれぞれ1機。設定には無いI.W.S.P.を装備した機体は指揮官機か。
開かれた
『──────リンクッ、アウターズ!!』