『仕事が終わったら
目的地点は“最果て”と呼ばれる、現時点で解放されている電脳世界の最深部。その手前に位置する暗礁地帯であり、出現する敵機NPCはどれも強力かつそこでしか見掛けることの出来ない機体も存在するため、倒してデータを手に入れることが出来れば儲けものだ。
『ストップ、
『……アレ、NPCじゃねぇな。機体データをマスクしてるプレイヤーだ、またハズレかよ』
デブリの影に潜んだ敵機のシルエットは闇に紛れ、スローターダガーが捉えたセンサが暗闇を縁取るようロックオンマーカーは空間を捉えている。
────機体名、不明。
────戦績、不明。
────プレイヤー名、不明。
「舐めやがって」
素性を隠すということは他人に正体を明かされたくないということだ。大方
声と共に舌打ちが
「外したッ、悪ぃ! 頼んだ!」
『後で何か奢りな!』『お前が外すなんて珍しいもんだ、ごちそうさま!』
続く2機のスローターダガー、エールストライカーを装備した2機が両翼から挟みこむ陣形で距離を詰める。大容量バッテリーを積んだ高機動戦闘用ストライカーパックだ、距離は瞬く間に詰められて発振したビームサーベルが
しかしあの敵機、何故回避行動をしない?
そもそも────
「待て、なんかおかしいぞそいつ。一旦距離を取って射撃で」
レーダーマップ更新。味方機数5から、味方機数3。
味方を示すレーダーフリップが青から灰色へと変化した意味が理解できなかった。灰色のフリップがレーダー更新の際に消されて、挟まれ撃墜される予定の敵機の敵性マーカーがその場から動かず赤を主張している。
一体、なにが。
『バカ野郎! 近付いて来てるぞ!』
「…………ッッ!?」
瞬きの瞬間だった。
相対した距離のまま真っ直ぐに突っ込んできた敵機の進行上に、味方のI.W.S.P.によるレールガンが割って入る。
瞬間、敵機の顔が機械じみた動きでそちらへと向き無機質な挙動で回頭。同時に現れた羽虫を殺す順番が変わっただけとでも言うように、こちらを見もしないで敵機が背部バーニアを噴かせた。
「このっ!」
武装スロットを同時展開。
350mmガンランチャー、120mm対艦バルカン砲、超高インパルス砲アグニ。その同時射撃だ。
誘導ミサイルと弾速に優れる対艦バルカン砲。
「避けただとッ!?」
潜った、という表現が正しいか。
バルカンを回避した後にミサイルをバルカンに誘導し爆散させ、アグニを回避の延長のマニューバでやり過ごす。
後ろを向いた状態の、見もしないでだ。
レーダーマップ更新。味方機数3から、味方機数1。
援護虚しく味方機がやられ、スローターダガーのアイセンサが点滅しやがて光を失う様を身動きが出来ずに見届けた。
敵機の発振するビームサーベルは蒼。見慣れない色だなと、逆光で
「────アイズ、ガンダム?」
改修はされているが、恐らくはアイズガンダムだろう。稲妻が止み、再び敵機の全容が闇に消える。
敵機が地を蹴った。そうとしか表現できない初速と動作に、抗う思考を捨てた脳が操縦桿から手を離させた。