では。
ウェイバー・ベルベットは苛立っていた。
一応共闘した相手である、アサシンのマスター、元級友の現敵対マスターである佐保繍が、さっぱり姿を現さないからだ。
「アイツ、どこで何やってんだよっ!」
折角間桐邸から取ってきた資料だというのに、相方になって調べるはずの繍が出てこない。
性格と性根と普段の振る舞いはともかく、あの魔術使いの書類仕事は速いのだ。それに、認めるのはとても癪だが、ウェイバーより魔術の腕も高い。
「まぁそう急くな、坊主。あの小娘とて何も余たちの味方ではない。来ないなら来ないで、いいではないか」
ウェイバーの潜伏先、一般人のマッケンジー宅にてごろ寝しながらライダーは答えた。
それは、その通り。
顔見知りでも、一時友人とすら思っていた相手でも、佐保繍は決してウェイバーの同盟相手ではない。
「あの小娘に拘るな。それほどの器か、アレは?」
「……アイツは優等生で、ケイネスのお気に入りだったんだ。なのに、全部放り投げてどっかへ消えた。魔術を裏切ったんだよ。一言言って正面から負かさなきゃ、収まらない」
なのに、魔術から背を向けてウェイバーを裏切ったはずのその当人は、極東で聖杯戦争のマスターをしていた。
軽い口調で、土壇場で召喚術式を変えてしまったから、より縁のある東洋英霊が呼べてしまったらしいんだ、と軽い口調で告げられた言葉を、忘れられない。
ウェイバーなど、ライダーを召喚するだけで精々だった。
それをあの魔術使いは、気軽にやってのけてしまったどころか、本来の召喚システムに手まで加えたのだ。
悲願達成のために知恵を絞ってやったなら、まだわかる。だが、繍は自分の召喚を事故とみなしていて、成果とすら見ていない。
これで腹を立てるなというほうが、無理だ。
「なぁにをいじけておる。あのアサシンの真名を探し出して、小娘の鼻を明かしてやろうという気概くらいないのか?ん?」
「そんなのわかったって、ボクの手柄にはなんないだろ」
刀のアサシンとライダーが正面から戦えば、間違いなくライダーが勝つだろう。ウェイバーの助勢など、きっと必要ない。
それだけ、イスカンダルは強力なサーヴァントだ。呼び出したマスターの能力など、関係ないほどに。
「あのなぁ、坊主。相手はアサシン。しかしあのバーサーカーとやり合えるほどの猛者とくれば、正体は掴まねばならんだろう」
「当たりはついてるんだよ!あれだけ神秘が薄いんなら、時代は近い。で、この国のここ百年くらいで、英霊になるほどの知名度があって、かつアサシンのクラスになるんなら、新選組か、人斬りって奴らの誰かだよ」
どちらも、百年と少し前のこの国の首都などで、暗殺者として名を馳せたという。
図書館で少し調べただけで、色々と情報は手に入れられたのだ。この国の人間は、そいつら暗殺者の伝説がよほど好きらしい。
ちなみに、新選組には一目でそれとわかるほどに目立つ隊服があった。
それを着ていないあのアサシンは、新選組ではない公算が高いが、まともなマスターなら服を変えさせて、正体を隠蔽するくらいはしているだろう。
「弱点も特にない。この国の政府が変わった後に、新選組は散り散りになって、人斬りって奴らは、大体罪人として処刑されたらしいけど、そんなのオマエには関係ないだろ。処刑人にまつわる宝具があるわけでもないんだから」
「ふむ。なんだ坊主、貴様やることはやっておるではないか」
だから問題なのだ。
調べてわかったのは、佐保繍の連れていたサーヴァントは、ウェイバーがマスターとして知恵や秘術を駆使しなくとも、勝てるような相手と言うことだけなのだ。
街の真ん中を水が流れている土地だから、なにか目ぼしいものが見つかるかと思ってライダーに依頼した川の水質調査でも、何も引っ掛からなかった。
「オマエがアサシンに勝ったって、ボクがサオに勝ったことにはならないじゃないか」
半ば投げやりに、ウェイバーは言った。
ライダーは頭をかいている。
「なんだ貴様、あの小娘相手にはやけに勝ちに拘るのぉ」
「当たり前だろ!」
ウェイバーが反射で叫んだ、そのときだ。
「ウェイバーちゃん?イギリスのお友だちがまた来てるわよ。サオくんって男の子と、サクラちゃんって女の子に、テツさんって男の人」
階下から聞こえた老マッケンジー婦人の声に、ぴしりとウェイバーは固まる。
─────イギリスの友達……?友達ぃ!?
「ち、ちょっと待てぇぇぇ!」
ドタドタと、階段を転がり落ちるようにウェイバーは玄関へ飛び出す。
そこにいたのは、少年のような少女、その服の裾を掴む暗い顔の幼子、そして解れた裾の目立つ着物の、目つきの悪い男である。
気のせいか、より白くなった肌と髪の少女は、ぜえはぁ肩で息をするウェイバーを見て、ひょいと片手を上げた。
「やあ、ウェイバー。約束通り来たよ」
明日の天気でも告げるような気軽さで、佐保繍は、ウェイバー・ベルベットに訪れを告げたのだった。
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「オマエなぁっ!全員連れてくるなんて何考えてんだよ!」
「だって、ライダーがいるならアサシンは連れて来るだろ?桜はボクらから離れないって言い張るし」
「そうだけど!そうだけどな!目立つなよオマエら!噂になったらどうすんだよ!」
「そうかなぁ?ボクら皆、この国の人間だし、歳の離れた兄弟と妹で観光してるって言ったら、怪しまれなかったよ」
ぐるる、と頭を抱えて唸るライダーのマスター、ウェイバー・ベルベットとかいうこれまた餓鬼臭い魔術師を、以蔵は呆れて見ていた。
繍の元学友……らしいが、どうも繍のほうから彼には負い目があるらしい。
詳しくは聞いていないが、繍が原因で、喧嘩別れのような状態で決裂して、それきりになっていたとか。
「坊主、それでこの小娘にも調べさせるのであろう?性格はアレだが、降霊術の腕は確かだと宣っておったでないか」
「性格はアレ」
鸚鵡返しに呟きながら、繍はウェイバーに手を差し出した。
「君たちに協力して情報収集する対価に、こっちは桜を拐ったんだから、ちゃんと手伝うよ。……って言っても、ボクらが遅れてる間に、君はもう粗方済ませてるだろうねぇ。紙束からの物探しは、君、滅茶苦茶上手いし速いから」
「オマエなぁ……ホントそういうとこだぞ!」
「そ、そこまでキレなくてもいいじゃないか。遅れたことは謝るよ」
ぎゃあぎゃあと騒がしくしながら、ウェイバーは繍の手に紙束を叩きつけるように乗せた。
目を白黒させながら、繍はそれを受け取る。
ウェイバーとやらが潜伏先にしたこの家の一室は、流石に五人の人間が入れば手狭極まりない。
並外れた巨漢のライダーと、そこそこ上背のある以蔵がいるだけで、かなり圧迫感がある。残り三人が小柄だったり貧弱だったりするから収まっているが、これでは満足に刀も振れない。鬱陶しかった。
「アサシン、はい。桜持ってて」
「おいこら」
おまけに繍は、自分の膝の上に乗せていた桜を、さっさと以蔵の膝の上に乗せてくる始末。
桜に、手に持っている間桐の魔術の資料とやらを見せたくないからだろうが、なんで今更、人斬りが子守りをしなければならないのか。
じっと大人しい桜は、何も言わないで背中を預けて来る。突き放すことはできずに、仕方無くぽんぽんと頭を撫でてやった。
おまけに、ライダーの視線が突き刺さること限りない。でかい鬼瓦のような面をしているくせに、瞳だけがやたら煌めいている。
「のう、アサシン。貴様先ほどはテツと名乗っておったようだが、あれは偽名か」
「……別にえいじゃろ」
「まぁ、そう邪険にするでない。余のように、一つ勇ましく名乗りを上げてみようと思わんのか?ん?この国のサムライとやらは、戦の前に自らの名を叫んで挑みかかるが、戦場の作法であろう」
その馬鹿みたいに派手な理屈をこちらに持ち込むなと、罵ってやろうかと思った。
「知るか。わしは人斬りじゃ。そがぁにご立派なもんは、古臭そうてやってられんがじゃ」
「ほぅ、なるほど、やはり貴様は人斬りか。坊主の見立ては正しかったようだな」
したり顔のライダーがますます面白くなく、以蔵は襟巻きを引っ張って顔を隠した。
これだから、自分の頭でものを考えて喋るのは嫌なのだ。
こうやって、己の知らないうちに頭の良いやつに付け込まれて、後で味方に罵られる。
人斬りはやはり、雇い主に言われるがまま、何も考えずに刀を振るっているほうが楽だ。
溜息を吐きそうになったところで、素っ頓狂な声が部屋に響いた。
「う、わぁ……。アインツベルンのこれ、本気だったの……?神霊喚ぶとか……いやいやいや、無理だろ!無理って言ってよ!うちの存在意義皆無になる!」
「ほたえなっちゅうに。落ち着きぃ」
だが、この今の雇い主、時折こうやって以蔵が手を出して、止めてやらねばならなくなる。
刀を、まだこいつのために使うと誓ったからには、そうそう簡単に死なせるつもりもないのだ。
指で額を弾いてやれば、正気に戻ったらしい繍は、恨みがましそうな目で見てきた。
「いちいち額を弾かないでくれってば。凹んだらどうしてくれる」
「ふん」
そっぽを向いてやれば、桜がくすりと笑った。
繍の顔を見た途端泣き始め、一時は、ごめんなさい、と繰り返しながら泣きやまないで大変だったが、なんとか落ち着いた。
わたしは、間桐に帰らなくていいんですよね、と何度も念押しして縋ってきて、結局今もここにいる。
この餓鬼を、一体繍はどうするつもりなのやら。悪いようにするつもりが、欠片もないのは間違いないが。
「そんで、おまんらは何に騒いじゅう?」
「前回の第三次で、アインツベルンが喚んだサーヴァントについて。……ちょっと滅茶苦茶な存在の名前が出て来たから、取り乱した」
これこれ、と繍はウェイバーが渡して来た紙束の一箇所を指した。
「あんり……まゆじゃと?」
「アンリマユだ。大陸の古い宗教、ゾロアスター教の邪神、この世すべての悪を司る、絶対悪に位置づけられた本物の神霊だよ」
繍が言い、後を引き取るようにウェイバーが続けた。
「それを、アインツベルンは一つ前の聖杯戦争で喚ぼうとしたんだ。まぁ、結果は失敗。この街に邪神は降臨せず済んだらしい」
「当たり前だ。そんなこと成功してたら、冬木どころか、下手したらこの国が終わってるよ」
邪神というからには、余程禍々しい神なのだろう。
今ひとつ、以蔵にはぴんと来ないが、繍のまったく笑っていない目を見れば、本気で危ない存在なのはわかった。
「って、サオ。そんなことはどうでもいいだろ。探してるのは、サーヴァントが受肉する方法だろ?ボクが見た限りじゃ、目ぼしいのはなかったよ。大聖杯と小聖杯、聖杯戦争本来の目的、まではわかったけどさ」
「こっちが見た限りでもないねぇ。やっぱり聖杯戦争の仕組みの中でやるには、小聖杯を素直に狙うのが妥当そうだね」
「オマエ……聖杯戦争の仕組みとか、守る気欠片もないだろ?」
指を突きつけるウェイバーに、繍は小首を傾げて答えた。
「あはは、それはどうだろうねぇ。少なくともこの街の人に、迷惑はかけないつもりだけど」
まぁ、ボクの倫理観は置いておいて、と繍は、紙束を叩いた。
「アンリマユ。これが気になる。神霊だよ、神霊。第三次をアインツベルンは辞退してないなら、少なくとも代わりに、彼らは何かを呼び寄せたんだ。何にしても、邪神の名の下に、『座』からサーヴァントを召喚したんだ。まともなものが、喚ばれたと思えないよ」
「そりゃそうだけど、アインツベルンは第三次でさっさと負けてるんだ。こうやって第四次をやれてるんなら、そんなの、とっくに時効じゃないのか?」
「そう思えない。本物であろうと、例えカミの名を被せられた別の何かであろうと、一度カミと名がつけば、呪がかかる。アレはカミだとヒトが認めたら、それはもう、祈りと呪いを集め得るモノとなる。本人の意志も関係ない。……そして、邪神の名を冠した誰かが、或いは何かが、かつて曲がりなりにもここに降りた。尚かつ、偽であろうと神霊の放つ穢れは、ちょっとやそっとで祓えない。禊祓も行わず、六十年放っておいただけなら、薄れていると思えない。まして、ことは絶対悪の概念を神にしたモノだ」
いきなりの長広舌に、ウェイバーとライダーは目を剥いた。桜はぼんやりと、以蔵にもたれて窓の外を見ている。
が、以蔵はなんとなくわかった。
神の名を得た、元人間。
日本で言うならば、天神様であろう。
あれとて、学問の神として祀られ、以蔵も知っているが、元は菅公という人間のはずだ。
アンリマユというサーヴァントが、仮に人間でも、神霊のなり損ないでも、一度神として喚ばれて降りたからには、邪神の側面を持ったはずだと繍は言いたいのだ。
そして神とは、末代までも祟るものである。
「つまり、そのアンリマユの穢れがまだこの街に残ってるって言いたいのか?」
「相手は神霊だ。たまたま自分が降りてきた地脈に根付いたアーティファクトの一つや二つ、呪いをかけたっておかしくない。それに、聖杯はちょっと変だと思う」
「変だと?おい小娘、そりゃどういうことだ?」
「最初に聖杯が選んだ七人目は、ボクじゃないんですよ、ライダー。少し前に捕まった、無差別殺人犯が、本来のマスターでした。ねぇ、ウェイバー。聖杯は無色の魔力塊で、相応しい者をマスターにするんだろう?なのに、選ばれたのは殺人犯。魔力をつくれるボクだって極近くにいたのに、聖杯は殺人犯を選んだ。あれが喚ぼうとしてた英霊だって、真名はわからないけどまぁ、怨霊のように禍々しかったよ。……それが、聖杯の意志なら?」
「ちょっと待て、本当待て!オマエいきなり喋り過ぎだ!そもそも、最初からマスターじゃなかったのかよ!」
「ボクは七人目から、令呪を取ったんだ。で、それ狙った髑髏のアサシンに襲われて、こっちのアサシンを喚んだんだよ。そうじゃなきゃ殺されてたしね」
「なんだ小娘。貴様、下衆からマスター権を略奪しておったのか!これは小気味よいなぁ!」
イスカンダルに褒められても、欠片も嬉しくなさそうに繍は頷いた。
「オマエの言いたいことは、わかった。つまり、真名がアンリマユのサーヴァントがまだ祟ってて、聖杯に影響を与えてるって言いたいんだな」
「うん。……いや、半分くらいは勘なんだけど」
「オマエの勘は馬鹿にできないし、佐保の家って、この国の神霊降ろしやってたとこなんだろ。その家の当主の考えなら、見過ごせないよ。ボクらが間桐家から取れた資料もすべてじゃないんだ。焼けたやつに、そういう記述だってあったかも」
だとしてもなぁ、とウェイバーは頭を抱えた。
「オマエの勘が当たってたところで、どうするんだって話だよ。アインツベルンに聞けば、教えてくれるか?」
「望み薄かもしれない。昨日ランサー陣営がアインツベルンの森を攻めたのに便乗して、あっちのマスターにうちのアサシンが大怪我負わせたところだし、少なくとも、ボクらは恨まれているだろう」
「……もうボクはオマエにツッコまないからな。……それで、マスターって、あのホムンクルスの女のことか?」
「そいつは偽やき、騙されとるが。セイバーのマスターは、衛宮ちゅう男のほうじゃ」
「あの、魔術師殺しの、衛宮切嗣?」
以蔵が頷いて見せれば、ウェイバーはさらに頭を抱えた。
「もし、もしもだ。オマエの言うことが正しかったら、このまま聖杯を完成させて大丈夫なのか?邪神の気配が残った、魔力で一杯になった器を、この世に出したらさ……」
「最悪、この街が祟りに沈むだろうね」
いっそ冷たいとも取れる言い方で、繍はウェイバーの予想の、最悪の形を告げた。
部屋に、沈黙が満ちる。
「……という、可能性もあるってことだ。無いかもしれない。大聖杯がアンリマユを上回るほどの力を持っているなら、さっさといなくなっているかもしれない。確かめるなら、大聖杯を直接見でもしない限り、無理だよ」
「うむ。結論の出ないことを捏ね繰り回しても意味はないからのう。……ではいっそ、アインツベルンへと繰り出して見るとするか」
「はあ!?」
マスターたちだけでなく、以蔵まで思わず声を上げていた。
今、何を言ったこの大男。
「ん?そのアインツベルンが、アンリマユを喚んだのであろうが。このままここで、あれこれと考えても埒が開かん!いっそアインツベルンにあたってみようではないか!」
あそこの騎士王とは、一献酌み交わしたいと思っておったからなぁ、と豪放磊落に笑う征服王に、最早何も言う気力もないらしいウェイバーはうめき声を上げた。
「都合良く、ここにはこの国の人間が三人もおる!おい小娘、貴様、なんぞ旨い酒を知らんか?」
繍は一瞬固まり、首をひねりつつ答えた。
「この国に伝わる物なら、米の酒ですが」
「コメ!おお、ジャパンで有名な穀物か!余は多くの美酒を嗜んだが、極東のコメの酒は未だ知らぬ!小娘、持っておるか?」
あー、と繍は気の抜ける声を出して肩をすくめた。
「持っていますが、生憎先約がありますのでお譲りできません。征服王」
「ケチ臭いのう。しかし、余を相手にその物言い、略奪されると思わんのか?」
「できるなら、どうぞ」
薄い微笑みを浮かべて、繍は切り返した。
イスカンダルが動きを止め、ずい、と身を乗り出した。
「小知恵の回る矮小な者かと思いきや、なかなかどうして良い面構えになったものだのう。どこぞで、一戦交えでもしたか?」
「さぁ、そうかもしれませんし、そうでないかもしれません」
ライダーは膝を叩いて呵々と笑う。
「言い寄るわ。おい坊主、せめてこやつぐらいの腹芸はこなせるようにならんとなぁ」
「う、うるさいな!で、オマエ本気でアインツベルンのトコへ行く気かよ?」
「応とも。ではこれより、セイバーへの手土産を探しに、街へ繰り出すとする!」
「はぁぁぁ!?」
以蔵は桜の耳をそっと塞いだ。いくら何でも喧しすぎる。
繍は繍で耳をふさいでおり、目が合うとそっと首を振られた。この大嵐イスカンダルが通り過ぎるまで諦めろ、ということらしい。
以蔵が鼻を鳴らすのを聞きつけたのか、ライダーの視線が以蔵に向く。
「何を他人事に構えておるか、貴様ら。アサシンと小娘共、無論貴様らも伴をするのだぞ?」
「なんじゃと!?」
「えぇえ……」
拒否権のなさそうな王の誘いに、繍ががくりと肩を落としたのだった。
マッケンジーさんちへの訪問の話。
狗神使いマスターが、何故神霊降臨に拘るかは次回で…。