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では。
アインツベルン城が、二度目の襲撃を受けたのは、日没より数時間経過した頃だった。
ランサーのマスター、ケイネス・エルメロイ・アーチボルトにより、破壊された城内を見て回っていたアイリスフィール・フォン・アインツベルンは、即座に異変を察知した。
森に張られた結界は、彼女の魔術回路と繋がっている。
遠慮容赦ない結界の破壊により、回路に術の反動が襲いかかり、ふらつく。
瓦礫と埃で汚れた廊下に倒れかかったとき、彼女の体を受け止めたのはセイバーである。
「アイリスフィール!」
「ええ、敵襲でしょう。切嗣の不在が痛いけれど……」
「私の側から離れないで下さい。また、あの刀のアサシンが現れないとも限りません」
ケイネスの襲撃に便乗して現れた刀のアサシンは、セイバーのマスターであり、アイリスフィールの最愛の夫である衛宮切嗣に、重傷を負わせた。
切嗣の最大の武器で、魔術礼装であるコンテンダーは破壊されたが、あれを盾にしなければ、生命を落としていたほどの傷である。
それを治すために、アイリスフィールは一つの宝具を使った。
自らが体内に隠し持っていた、セイバーの宝具、聖剣『
持ち主であるセイバーでなくとも、所持しているだけで瞬時に傷を癒やすそれは、切嗣が切り札として、セイバーにすら存在を隠していた品である。
セイバーへの隠し事が、思わぬ序盤で露見したことになったが、切嗣は鞘を用いて全快し、セイバーはそれを戦略であると許容した。
だが、令呪を切らされ、セイバーの真のマスターが誰かということを、刀のアサシンとランサー陣営に知られたことは、痛かった。
駆け付けたランサーがアサシンに加勢してセイバーにとどめを刺すことを躊躇い、思わぬ髑髏のアサシンの横槍で助かったが、あれがなければ、早々にアインツベルンの聖杯戦争は終わっていたところだ。
刀のアサシンとその主は魔術師殺し、衛宮切嗣と似た、或いは同じ思考回路の持ち主なのだ。
一人になった無防備なマスターに容赦なく奇襲を仕掛け、他人の戦いに便乗し、不意討ちも騙し討ちも、彼らは躊躇わない。
セイバーやランサーのように、尋常な勝負にも騎士の誓いにも、拘りなどないだろう。
切嗣の最優先の警戒対象が、刀のアサシン主従に切り替わるのは速かった。
だが未だ、街に降りた切嗣は彼らを発見してはいない。
刀のアサシンの真名も不明だ。
彼が戦闘の際に使っていた掛け声からして、日本の九州に伝わる、とある流派の剣術使いでないかという予測はあるらしいが、喋り方には四国地方の訛りがあるという。
そして、アサシンのはずなのにセイバーの剣を受け止める技量もある。ちぐはぐなのだ、彼は。
「ええ、そうね。セイバー、油断せずに行きましょう」
「無論です。……しかし、憚ることを知らぬこの出方は、恐らくライダーでしょう」
スーツの上から銀の鎧を纏ったセイバーと共に、アイリスフィールは城内を駆け抜けた。
エントランスホールからは、ライダーの胴間声がセイバーを呼ばわっている。
駆け込んでみれば、そこにいたのは確かに、戦車に乗ったライダーである。
「応、何だ、セイバー。のっけからその無粋な戦支度は?今宵は戦いに来たのではない。一献、酌み交わしに来たのだ」
戦車に仁王立ちし、酒樽を掲げたライダーの足元には、そのマスターである小柄な少年魔術師が真っ青な顔で座り込んでいた。
だが、その近くにもう二人、乗り込んでいる人影があった。
ひょい、と戦車から飛び降りたのは、灰色と白、二色の長い髪を紐で束ねた細身の少年。その襟首を掴んだのは、着崩した黒いスーツの青年だった。
どちらも、顔立ちからしてこの国出身の人間に見えた。
「うわぁ……。これを丸ごと結界で隠してたのか」
「マスター、こら。まだ頭出すんやない」
見知らぬ少年をマスターと呼び、彼を止めた青年が、エントランスホールを見下ろす階段の上に立つ、セイバーを見上げる。
視線が交わった瞬間、セイバーの闘気が膨れ上がった。
「貴様は!」
即座に抜剣したセイバーの様子に、アイリスフィールは悟る。
「セイバー、まさか……あれが刀のアサシンなの?」
「間違いありません」
「じゃあ、あの子がそのマスター?」
悪辣な襲撃を命じただろう、刀のアサシンの主。
その当人が、あんな少年だというのだろうか。
顔は優しげで線は細く、歳の頃は恐らく十四か五。外見だけならば、セイバーと同じか、少し下程に見える。
身の丈に明らかに合っていない茶色のコートに、赤い毛糸のマフラーという出で立ちのせいもあってか、まるで、一般人の学生か旅行客だ。
最愛の人、衛宮切嗣を殺し掛けた憎むべき相手だというのに、思い描いていた姿との違いに、アイリスフィールは戸惑う。
「オマエら、本気で警戒されてるじゃないかぁ!」
一方、ライダーのマスターは涙目で頭を抱えていた。
アサシンのマスターは、じとりとした目で腕組みをした。
「言ったじゃないか。ボクら連れてきたら、門前払いになるだろうって。……だからって、門ごと吹き飛ばすとは思わなかったけど」
「細かいことは良いではないか、アサシンのマスターよ。なぁに、鬱陶しい森をちょいと伐採して、見晴らしをよくしてやったまでよ」
水を向けられた当人は、特に否定もしない。さりとて肯定もせず、マフラーを引っ張り上げて半ば顔を埋めている。
その横でアサシンは、鬱陶しげにライダーを睨んでいた。
セイバーは未だ剣を下ろさない。
「ん?こいつらを警戒しておるのか、セイバー。案ずるな、今宵は王と王が酒を酌み交わし、何れの王が聖杯に相応しいかを問おうと思って訪れたまでのこと。こ奴らはついでだ」
「オマエ!それ逆だろ!聖杯に関して調べるべきだからわざわざここまで来たって、う、ぎゃあっ!」
ライダーにどつかれて御者台に沈むマスターに、アサシンのマスターは無言で手刀を切っている。
顔を上げた少年は、明るい茶色の瞳を、アイリスフィールの方へ向けた。
「えーと、アインツベルンの御令嬢、こんばんは。見ての通り戦いに来た訳ではないので、城に立ち入ってもいいか?」
答えを返さず、唇を引き結ぶ彼女を見て、アサシンのマスターは首を横に倒した。
「ありゃ。やっぱり駄目か」
「当然じゃろう」
「完全にこっちのせいではあるけど、困ったなぁ……。うん、じゃあ、こうしよう。アサシンの真名を明かすから、それで入城を許可してもらえないか?」
「え?」
「何?」
アイリスフィールとセイバーの驚きに、少年は、頷きを返した。
アサシンのほうはと言えば、こちらも驚いたのか一瞬目を細めるが、念話でも交わしたのか、勝手にせぇ、と呟いている。
「嘘はつかない。なんなら、ギアスのスクロールでも使うか?」
「結構よ。でもそれだけじゃ足りないわ。アサシンのマスター、あなた自身の名も明かしなさい。それを聞かせるなら、アインツベルンは、あなたがたを受け入れましょう」
「アイリスフィール!」
セイバーが警戒の声を上げるが、アイリスフィールは彼女を手で制した。
少年のほうはと言えば、名を明かせという言葉に素直に頷いた。
「構わないよ」
何の衒いもなさそうに、屈託なく彼は頷く。
セイバーは憤懣遣る方無いという顔で、少年の背後に控えるアサシンを睨み据えていた。
「セイバー、堪えてちょうだい。今は情報を得るのが先よ」
「……わかりました」
手元から剣を消し、セイバーは具足を鳴らして進み出た。
「いいだろう、ライダー。貴様の挑戦を受けて立とう。アサシン、貴様もだ」
にやり、とライダーは、雄々しくも挑発的に笑う。だが、アサシンは一層気怠げな顔になり、収まりの悪い黒い髪をかいた。
「わしは問答に興味なんぞないき。マスター、終いになったら適当に呼べや」
「あっ、待った」
そのまま、アサシンはふいと姿を消……そうとして、当のマスターに腕を掴まれていた。
「気配遮断のアサシンが姿なんて消したら、暗殺予告したもおんなじだよ。霊体化は無し」
「ちっ」
「舌打ちしても駄目だったら」
「……しゃあないの」
何なんだろう彼らは、とアイリスフィールは目の前で、気安いふうに言い合う姿に目眩を覚えた。
だがそれでも、この少年とそのサーヴァントは敵なのだ。
隠し持った切嗣との通信機のスイッチを入れ、アイリスフィールは城の奥へと彼らを誘うのだった。
『このような形で失礼する。私はランサーのマスター、ケイネス・エルメロイ・アーチボルトだ』
「ええ。聞いているわ。私はアインツベルンの代表、アイリスフィール・フォン・アインツベルン」
冷たい夜の空気が漂う城の中庭。
白い花が咲き乱れる庭園の中央が、アイリスフィールの選んだ宴の場所だった。
サーヴァントたちと少し離れて、マスターたちも一応円座になって座る。その中央に、アサシンのマスターだという少年、佐保繍は鞄から取り出した、金属製の小鳥を置いた。
そこから流れるのは、なんとランサーのマスター、ロード・エルメロイの声である。
本人が登場しない代わり、彼は刀のアサシンのマスターが持って来た通信礼装を介しての参戦となった。
「あのなぁ、ケイネスとも連絡取ってたんなら言えよ」
『聞こえているぞ、ウェイバー・ベルベット。気づけなかった自らの怠惰を、棚に上げるのはやめたまえ』
「……」
『とはいえ、シュウ・サオ。君がそこのウェイバーと共闘関係にあるとは、私も気づいていなかった。上手く隠したものだ』
「いやぁ、隠していたというか。どちらにも聞かれないので、言わなくていいか、と」
「オマエ、ほんっとイイ性格してるよな」
「それほどでも」
「褒めてないからな!」
彼らは、どうやら時計塔を通じての知り合いらしい。
佐保繍、というのが少年の名前だった。
やはりこの国の生まれで、時計塔に留学していたことがあるという。切嗣が調べ尽くすだろうが、今のところその名前はアイリスフィールには、とんと聞き覚えのないものだった。
そして刀のアサシンの真名は、岡田以蔵。
百年と少し前この国の都を騒がせた、人斬りと呼ばれた暗殺者たちの一人が、その正体だったのだ。
神秘の度合いはともかく、この国での知名度とそれに伴う能力値の補正は、かなり高いものが見込まれる。
おまけに、真名を知られたことで致命的となる弱点も、人斬り以蔵には特にない。
マスターの少年は、恐らく自分たちにはさして重要でもない情報を、対価にしたのだ。
どちらも狙ってやったことならば、かなりの食わせ者である。
ウェイバーに睨まれて、首を縮めている姿からは、どうも想像できないが。
「アインツベルン、こっちはあんたたちに聞きたいことがあるんだ」
『そうだ。……主に、第三次聖杯戦争のことについて、なのだがね』
眉にしわを寄せたウェイバーと、通信礼装の向こうにいるロード・エルメロイの声がアイリスフィールに向かう。
セイバーは、王の問答としてライダーと差し向かいに座り、ここにいない。彼女は一人で、彼らと相対しなければならない。
おまけに、である。
「岡田さん、そんな誰彼構わず睨まなくても」
「ここは敵ん土地じゃ。おまんの分まで警戒しちゅうだけやき」
刀のアサシンこと岡田以蔵。
彼は聖杯に相応しい者を問おうという聖杯問答には、本当に興味がなかったらしく、完全に放ったらかしにし、少し離れているとはいえ、自分のマスターの側にいる。
セイバーが挑発しても、まったく乗ってこなかった。
尤も、彼の武装だという二振りの刀は、実体化されて繍が持っていた。
柄にぐるぐると魔力糸の封印まで掛ける厳重さである。こうすれば、確かにすぐに抜刀できない。
律儀なのか狡賢いのか、判断のつかないマスターだった。
ともかく、アイリスフィールは彼らと一人で相対していた。
「情報が欲しいと言うけれど、あなたがたの問いに、私たちアインツベルンが答える義務はあるのかしら?」
『よく言ったものだ。姑息な手段に訴え、魔導の薫陶を忘れようと、誇りだけは一流かね?』
アイリスフィールは小鳥を睨みつけた。
ランサーのマスターが言っているのは、紛れもなく切嗣のことだろう。
「ロード、お願いしますから、出し抜かれた怒りは一旦置いてください。話が進みません」
『む……』
「アインツベルンの方も、ボクが言っても怒りが増すでしょうが、少し待って下さい」
そういう彼が、一番の警戒対象なのである。どの口が言うのだ、とアイリスフィールは思った。
アイリスフィールの心中はお構い無しなのか、彼はウェイバーの方を向いた。
「ウェイバー、説明頼むよ。……聖杯降臨が成るか成らないかの、重大事項だろう?」
「オマエが説明するんじゃないのかよ!」
「君がボクより上手いから頼むんだ。適材適所ってやつ」
「なんですって?」
聖杯が降臨しない、という可能性の指摘に、アイリスフィールは声を上げた。
「じゃあ言うけど、今から話すのは仮説だからな。あんた方にも関わりがあるから、こうやって来ただけだ」
眉にしわを寄せたまま、ウェイバーが語る。
驚くべきことに、彼ら時計塔からの参加者たちは、聖杯戦争の裏事情までも掴んでいた。
どうやら、ライダー陣営は間桐邸を襲撃した際に資料を持ち出し、ランサー陣営は、長老の臓硯から情報を吐かせていたらしい。
そして、彼ら二つの陣営どちらとも関わり、情報を集めたのが刀のアサシン主従。
二つの陣営を結び付けてここまで来たのも、刀のアサシンのマスターが手を出したからだという。
『その様子では、君たちアインツベルンも、間桐家の凋落は知らなかったようだな』
「ええ。旧き盟友が、そんなことになっているとは、思いもよらなかったわ。それで、聖杯降臨に差し障りがあるかもしれないというのは、どういうことなの?」
「ボクたちが調べた中で、あんたたちアインツベルンが召喚した英霊に、アンリマユって名前があったんだ」
ウェイバーの説明は、淀みが無かった。
かつて、アハト翁が参戦した第三次聖杯戦争にて、アインツベルンが喚ぼうとした拝火教の邪神・アンリマユ。
この世すべての悪を司る絶対悪が、大聖杯に留まっているのではないか、というのだ。
「根拠は間桐家の情報、それに時計塔のロードの見識とこいつの知識と勘だよ。まぁ、あんたらにとってこいつは憎い奴だろうけど、神霊降臨に関しちゃ一家言ある家の当主なんだよ、これでも。こんなぽけぽけでも」
「ウェイバー、ぽけぽけはひどくないか?」
「うるっさい。それからもう一つ、聖杯が最初に選んだ七人目は、こいつじゃなくて、連続殺人犯だった。召喚されかかってたのも、恐らく反英霊のサーヴァント。……聖杯がマトモなら、もっと正純な英霊が喚ばれるもんじゃないのか?」
「召喚キャンセルして正解だったねぇ。でないと、怨霊に出会う羽目になってたよ」
呑気に構える繍だが、アイリスフィールはそれどころではない。
そもそも、本来なら聖杯戦争に反英霊、つまり悪行を成したことで結果的に人々を救い、英霊へと昇華された者は、喚ばれないはずなのだ。
聖杯の異常、など考えたこともなかった。
だが確かに、第三次は途中で聖杯の器が破壊されたために、儀式として失敗した。それを補うために造られたのが、アイリスフィールというホムンクルスである。
失敗し、根源に至る孔を穿つ為に使われることなく、大聖杯に溜まったサーヴァントの魂。
それがもし、どうしようもなく汚染された代物だったとしたら。
─────大聖杯そのものが、穢された?
─────じゃあ、切嗣の願いは?
彼が、この戦いに賭けたもの、アイリスフィールが彼と愛娘のためにと決意したこと。そのすべてが、無駄になってしまう。
『どうなのかね、アインツベルンの名代』
「……待って、少し考えるわ」
そう答えた時点で、アイリスフィールは疑いの念を晴らせないと言ってしまったようなものだ。
セイバーに尋ねたい。この疑念を晴らさなければ、戦えなくなる。
そう思って、アイリスフィールがサーヴァントたちの問答へと目を向けたときだ。
「戯れはそこまでにしておけ、雑種共」
傲慢な声の主が、圧倒的な気配を持つサーヴァントが、庭園に降り立つ。
黄金の甲冑に身を包んだ英霊を見とめた瞬間、アサシンが唸り声を上げた。
「なんで、あん男がここにおるがじゃ」
「オマエらがいないときに、ライダーが街中で声かけて……。本当に来るのかよぉ」
「王様らしいから、王様問答に欠席するわけないじゃないか。ウェイバー、アーチャーに声かけてるんなら言えよ」
アサシンのマスターが、刀を抱え直す。
獣のように唸るアサシンに向けて、彼ははっきり首を振った。
「動いたら駄目だ。彼、君が殺そうと思ったら殺しに来るよ」
「マスター」
「駄目なものは駄目だ。刀は返さない」
胸の前で抱き締めるように刀を離さないマスターに、アサシンは諦めたように肩をすくめた。
「ほう、野良犬とその主も来ていたのか」
だが、それで済まさないのがアーチャーである。酒の入った盃を揺らしながら、彼はアサシンに嘲笑を含んだ目を向ける。
「綺礼はやはりしくじったか。そこな雑種を問い殺す勢いだったが、まんまと逃げられていたとはな」
びくり、とアサシンのマスターの肩が小さくはねた。
綺礼とは、あの言峰綺礼のことだろう。
切嗣に執着する素振りを見せ、城では髑髏のアサシンを救援に差し向けて来るという、不気味な行動を取る神父である。
その彼と、刀のアサシン主従に一体何の因縁があると言うのだろう。
アイリスフィールの戸惑いには気づかず、少年のマスターはアサシンの腕を掴んだ。彼のサーヴァントは、アーチャーを睨み殺しそうなほどの眼光を放っていた。
「やめろ、アサシン。それ以上動くなら、ボクは君に命じなきゃならないよ」
「マスター」
「死にたいのか」
主の放つ低い声に、アサシンはようやく元の通り腰を下ろす。
それを見て、アーチャーは鼻を鳴らした。
「詰まらぬな。だが狗使いよ、心せよ。貴様の元には、いずれ綺礼めが問いを投げに来るぞ。たまさか言い当てられた己の本質の片鱗に、随分と執心していた故な。奴の求道に、貴様が潰されるならば、その様は良い見物になろうさ」
盃を掲げ、愉快で堪らないというふうに呵々大笑するアーチャーである。
アサシンは歯を噛み折りそうなほどだった。膝の上の拳には、血管が浮き出ている。
だが、彼は耐えた。やめろ、というマスターの言葉に従う。
アサシンの腕を押さえていた、彼のマスターの手が離れる。
ライダーが、呆れた目をアーチャーに向けた。
「そこなマスターと刀のアサシンは今は捨て置け。ここは王の為の宴だ」
「急くな、雑種。宴の席には、道化の余興が付き物であろう。あの野良犬とその主は、そういう類の玩具だ。先日、我が決めた」
「……アーチャー、それは」
「なんだ、気に食わぬのか、セイバー。次は貴様が王を語る番であろう。我と征服王の王道を否定するならば、当然、それなりのものを見せるのであろうな」
それきり、アーチャーは興味を無くしたのか、セイバーへと向き直る。刀のアサシンのマスターの肩から、力が抜けた。
尚も続く王同士の問答を聞きながら、アサシンのマスターは深いため息を吐いたのだった。
王様問答、不参加。人斬りと神職には畑違いも良い所。
そして日本人故、まぁまぁ童顔に見られた話。