文才とかそういうのが家出したまま帰ってこず1話毎もすごく短いものですが楽しんでいただければ幸いです
はじまり
【一】
「ぼくね、おおきくなったらおつきさまにいきたい!まだとってもとおくにみえるけどぼくがおおきくなったらてがとどくかもしれないもん!」
はて…『月に行きたい』そう思い始めたのはいつからだろうかととある兎は考える。初めて月を見た時だろうか。肩車してくれた父が「月に届くかな?」と言ったあの時だろうか。母に月に住む兎の絵本を読んでもらった時からだろうか。
それらの考えを彼は「いつからでもいい。ただ僕は月に行きたいんだ」と呑み込んだ。
「おー…さ…。ウ…ギく…。ウサギ君!」
呼ばれて(叫ばれて?)ウサギは振り返る。
「あ、ゴメンゴメン。ちょっと考え事しちゃってた」
ウサギは自分を呼んだ友達に謝った。
「もう、呼んでも返事しないからその大きな耳はいらないかと思っちゃったよ」
言ってる事が怖い気がする?多分気のせいだ。少なくとも指摘しなければ害は無いだろう。
「で?ウサギ君がそんなに熱中する考え事はやっぱり月の事?」
「うん、そうだよ。いつから月を目指すようになったのかなぁって思って。」
「うーん…私も覚えてないかな…気付いたら『月に行きたい!』って言ってたし…。で、結局いつからなの?」
それなりに長い付き合いの彼女でもいつからなのかは覚えてないようだ。
「んー…結局わからないや。でもやっぱり月に行きたいって事は確かだよ」
「そっか…小さい頃から言ってたもんね」
ウサギにはそう言う彼女の様子がどこか寂しそうに見えた。
「どうかしたの?」
「え?何が?」
見間違いだったかな?とウサギは思った。
「あ、いや、ゴメン。勘違いだったみたい」
と誤魔化す
「ふーん…まぁいっか…で?ウサギ君はいつになったら月に手が届くのかな?」
彼女はイタズラっぽく聞いてくる。
「うっ…それは…まだです」
そう、彼はあまり身体が大きくない…いや、同い年である彼女と比べてもやや小さい。彼は大きくなりたい、と内心ため息を吐いた。
【二】
あれ(一)からしばらく経ち、二人とも成長した…ん?ウサギはちゃんと大きくなったかって?
「ウサギ君はちっちゃくても可愛いから大丈夫だよ」
「フォローになってないよ…はぁ」
つまりはこういう事である。ウサギは大きくなれない星の下に生まれたようだ。
「大きくなれない星って何!?」
「?どうしたのウサギ君…」
「え?うーん…どうしたんだろ。つっこまないといけない気がした」
ウサギ君…ダメだよ地の文に干渉したら…
「ふーん…変なの」
こういう反応されるに決まってるじゃん。
「誰もやろうとしてない『月に向かう』って事しようとしてる時点で僕が変わってるのは分かってるでしょ?」
まさかの開き直りである。
「まさかの開き直りだった…それで?その夢は叶いそうなの?」
「うーん…難しいかな…」
「でも出来ないとは言わないんだね」
「そりゃまぁ…まだやれる事をやり尽くしたわけでもないからね。僕だけでは空を飛べないなら僕が飛べるようなモノを造ればいい」
「そっか…でもどうやって飛ぶつもりなの?」
「うーん…まずは鳥の翼をマネした物を作ってみようかな」
そう、兎は飛べない。跳ぶ事はできるが跳ぶだけでは落ちてしまう。だからウサギは飛ぶための物を造りたいと考えた。
「鳥の翼を…?でもそれをどうやって羽ばたかせるの?」
「うーん…そうだなぁ…手に着けるか…羽ばたかせるための物も造るか…」
「手に着けると疲れそうだね…」
「ずっと腕動かすからねぇ…でもまずは翼を造らないと。軽くて大きめに造ろう!」
地道に設計、素材集めをし、二ヶ月かけて翼が出来上がった。
「ようやく翼が出来たね」
「うん、でもまだ翼だけ。それにまだこの翼で飛べるかどうかもわからないけどね」
嬉しそうな彼女とは反対にウサギはまだ次があると先を観て言う。
「まずは腕につけて羽ばたいてみよう」
結果から言おう失敗だ。腕に着けた時点で持ち上げる事すら叶わなかった。それでもウサギは挫けない。
【持ち上がらないのなら次だ。元より腕に着けるだけで終わらせるつもりじゃない。なら『次』だ】
と、彼は前を、空に浮かぶ月を見ながらそう言った。
楽しめて頂けたでしょうか?
極力気をつけてはいますが誤字脱字、文章の違和感の指摘等があればお申し付けください
それでは失礼します