異世界行ってダークエルフの高級娼婦で童貞卒業   作:あじぽんぽん

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第2話 冒険者ギルドのルール

 冒険者ギルドというものについて少し語ろう。

 

 ファンタジーラノベなどでは彩を添えると言ってもよいメジャーな組織だが、作品によっては国家権力以上の力を持っていたり、世界中に支部があったり、凄い魔法技術を持っていたりNINJAがいたりとバラエティに富んでいる。

 

 この世界に来て、そんな謎組織が都合よくあったこと自体が一番の驚きだったのだが、実態を知ってからは納得した。他の国のギルドは分からないが王国の冒険者ギルドについて説明するなら、国からの支援で作られた傭兵組織……ようするに派遣会社である。

 そんな組織に権力なんてないし支部もない、謎技術もなければNINJAもいない。

 ファンタジーな異世界まできて夢も希望もないと思うが、依頼掲示板に貼りだされる仕事のほとんどが王国からの請負だったりするのだ。

 

 これについて、今はここまでの情報で十分だ。

 続いて冒険者ギルドに勤める職員について語ろう。

 

 これもラノベだと、ギルドの受付職員は名うての剣士や魔法使いやNINJA、ギルド長は世界有数の権力者とか伝説の冒険者とか汚いNINJAとか様々だ。

 では王国の冒険者ギルドの職員はどうかというと、事務仕事のできる普通の人達である。

 リコット嬢とかはKUNOICHIでしたと言われても不思議と納得してしまう雰囲気を持っているが、実際のところ彼らは極々一般的なリーマンの方々なのだ。

 

 保険や保証なんて何もない世界だ。頭が良くて力も持っている人間なら余程の事情でもない限り、そこそこ安全で高収入な騎士のような国家の後ろ盾のある職を目指すのは必然だろう。

 義理人情なんて薄いモノ、何しろ命は一つ。どこの世界でも個人の力など高が知れている、だからこそ人は群れ、だからこそ寄らば大樹の陰なのだ。

 

 それに対し冒険者ギルドに所属する派遣社員……ではなく、冒険者とは命を担保に危険と隣り合わせで金を稼ぐ肉体労働者。ぶっちゃけるなら計画性の無い阿呆な底辺ゴロツキの集まりである。

 

 さて、ここからが本題だ。

 

 そんな頭のよろしくない冒険者が、頭脳労働者であるギルド職員に弁論で勝てるかというともちろん無理であり、それでも現状に納得できず必死になって食い下がり反論に反論を重ねて頑張って、その結果がどうなってしまうかというと……。

 

 亀甲縛りをされることになるのだ。

 

 

 あの後、ギルド職員と古参の冒険者、そしてカオル達が立ち塞がった。

 狂犬と化した俺は獰猛に唸り、猛り吠えて、怯える子猫ちゃんと化したクロウ少年に本能のまま襲い掛かろうとしたところで邪魔された。

 冒険者ギルド内での私刑や私闘の禁止……そして違反者の鎮圧に対しては自主的に冒険者が協力する。王国の冒険者ギルドは組織としての相互作用が上手い具合に働いていた。

 素晴らしい協力関係だ。真のアットホームな職場とはこういうものか、しかし俺の行く道を塞ぐのならば何人であろうと容赦はしない。

 

 戦いとは先手必勝である。戦闘前につべこべと口上を述べたり、戦闘中に一々話している暇があるならとにかく殴れとは、この世界に来てから学んだことだ。

 説教するだけなら戦闘後にいくらできる。というか、戦う前に得意げにカッコいいこと語って、負けたら凄く恥ずかしいし……ちくしょう。

 俺を取り押さえようと包囲する連中を見据えたまま、口内を激しく振動させる。

 

 俺は口を開き、超音波ブレス(小)を放った。

 

 魔王軍三大将軍との死闘の際に命がけでラーニングした魔技である。

 俺の不可視の攻撃でギルド職員がバタバタと倒れていく。

 頭脳労働者などは相手ではない。お子さん達の運動会に出て、頑張りすぎて翌日筋肉痛になるような微笑ましいお父さん達など所詮は数だけの烏合の衆だ。

 

 だが古参の冒険者達は一人も倒れていなかった。流石は玄人、初めてみる攻撃でも危険を察知して回避したのだろう。各自が適正な距離を取り、攻撃を分散させて受け流す手段に長けている……しかし対ドラゴン用のフォーメーションを人間相手に使うのは如何なものだろうか。遠くから鉤爪付きの鋼鉄製ロープを投げられ手足を掴まれる。

 

 俺は瞳孔の動きだけで魔法陣を描き、幻覚魔法(範囲)を放った。

 

 魔王軍八部衆との激戦の末に編み出した瞳術である。

 古参の冒険者達はアウアウいいながら膝をつき倒れる……彼らを全員無力化させた。

 

 これでも元勇者、怪我人は一人も出していない。

 瞳が赤く染まるほど頭に血がのぼっていても、それくらいの分別はある。俺のその姿を見た者達から「ひっ、化け物!?」とか「ま、魔王!?」などと言う悲鳴が聞こえたが気のせい。

 ゆっくりとギルド内を見渡す。俺に敵対する者は床に倒れ伏し、俺の力に怯えて動く者は誰もいない。その光景、己の圧倒的な強さに酔いしれて愉快になり思わず高笑いをあげてしまう。

 手段の行使で目的を忘れている状態だった。そしてそれは明確な驕りという名の油断でもあった。

 

 無音で宙を舞う、白いローブと黒の古式(ゴシック)ドレスに赤い髪。

 

 気がついたら俺は、アユムのしなやかで柔らかい太ももに首を挟まれ、逆肩車の大しゅきホールドで視界を塞がれていた。

 えいっ! と背後から手を伸ばして抱きついてきたカオルに、おっぱい押し付けられ動きを完全に止められる。質量を持った双球の威力で前かがみになった。

 最後にイズミの激しい腰タックルからの流れるような動きで下腹部を甘噛みされ、腰砕けになったところを床に引き倒されて三人の女達のケツの下に敷かれてしまった。

 余談だけどカオルさんのデカケツが一番敷かれ応えがあって……好きだ!

 

 こうして騒ぎを起こした俺は捕まり、檻にいれられた野良犬のように項垂れたのだ。

 

 

 冒険者ギルドの敷地内にある野外訓練場……体育館二つ分ほどの広さのそこには大勢の冒険者が詰めかけていた。これから始まる訓練という名の決闘を見学しに来た暇人どもだ。

 朝も早くから人生投げ捨てているカスどもめと、心の中だけで悪態をつく慎ましい俺は、根っからの肝の小さい日本人で我ながら誇らしく思う。

 

「うっふふーヒイロさ~ん、似合ってますよ~!!」

 

 正座姿勢で縛られた俺の周りでは、小娘リコットがツインテを揺らしながら嬉しそうにぴょんぴょんと飛び跳ねている。本当に凄く楽しそう。

 クロウ少年が遠くから、同年代の冒険者仲間たちに囲まれ、俺のことをチラチラ恐る恐ると覗っている。

 少し離れたところでは俺を拘束した功労者の三人娘が、特等席として用意された椅子に座って皆からチヤホヤされていた……ねえハーレムメンバー(?)の君達はどっち側なの?

 

 孤独には慣れているが、孤独なことが平気でもない寂しがりやな俺は、チワワのように震えながら横に立つ男を見上げた。

 

 俺の視線に気づき、器用に片眉だけをあげる初老の紳士は冒険者ギルドのギルド長だ。綺麗にそろえたお髭と後ろで縛っている長髪、とてもダンディで若い女の子にモテそう。

 そしてこの雰囲気、実はギルド長はNINJAでしょう?

 そう勘繰りたくなるほどの強キャラ臭をまとっているが、趣味は休日にするクリケットもどきのスポーツで夫婦の会話を大事にしている普通の一般人らしい。

 

 でもNINJAは汚いからな、絶対隠しているに違いない。

 

 プルプルと震えながらも、期待を込めた眼差しでギルド長を熱く見つめる。

 そんな俺に対して彼はため息をついた。 

 

「何だいヒイロ君、まだ不服があるのかね?」

 

 子宮に響きそうな低重音のジュテームボイス、俺は頬を染め首を左右に振った。

 そしてチワワのように瞳を潤ませながらにっこりと微笑む。

 四肢を縄で縛られ口には猿轡をかまされ、正座姿勢以外とれない俺と、その横でダンディに佇むギルド長。しばらく男二人が熱く見つめ合う。

 

 やだもう、この人、本当にダンディすぎる……フェロモン駄々漏れでヒイロ妊娠しちゃうかも。

 

 ギルド長はダンディな仕草でパチンッと指を鳴らした。

 

「リコット、拘束具(ハンディ)を追加だ。ヒイロ君に目隠しを」

「は~い、分かりましたっ!!」

 

 ちくしょおおおおおおおおおおおおう!?

 

 俺はクロウ少年との決闘の前に聴覚と触覚以外の全てを潰されたのである。

 




作者の勝手な脳内キャライメージ

カオルさん……お姉さん風なピローテス
イズミさん……ちょとエッチぃゼルタ姫
アユムさん……特になし
ポーちゃん……ハガレンのラストなロリー

ヒイロさん……爬虫類系男子

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