異世界行ってダークエルフの高級娼婦で童貞卒業 作:あじぽんぽん
高級娼館には店主に呼ばれて行ったのだとカオルにそう説明した。
多分誤魔化しきれてないと思うけど、それを追及せず笑って受け入れてくれるカオルの寛容さが、ありがたいのと同時に底の見えぬ恐ろしさを感じさせた。
そして漫研仲間の鬼畜エロゲーマイスター・イズミと会わせ、何か一悶着あるかと思えば何事もなく、二人は手を取り合い和気あいあいと再会を喜び合ったのだ。
そう、冒険者ギルドで食事の注文をするまでは……。
宿を出て向かったのはギルドの食堂。
俺とカオルは張り出される依頼の確認を兼ねて、朝食はギルドで取る事にしている。
ルーチンワークと化しているそれは、冒険者の朝の習慣ってやつだ。
「いっらしゃいませ~ご注文は何になさいますかぁ?」
職員で食堂の看板娘でもある少女リコットが、俺達の居るテーブルに注文を取りに来てくれた。
このおませな十三才の小娘が今回の騒動の発端である。
「うふふー、ヒイロさんとカオルさん、相変わらずお似合いの
「も、もう、いやね、リコットちゃんったら!?」
普通に考えれば、釣り合うはずもないキモメンと極上の美人だ。
しかしカオルは口元に左手をあてて本当に幸せそうに笑う。
俺はこのやり取りに対してはいつもノーコメント……そうせざる得ないのだが諸君らは察してくれるだろうか?
カオルの左手で輝く指輪がひどく重い。
とまあ、これで注文して食事が来るまでは、のんびりと会話しながら待つのが普段なのだが、今朝は少々違った。
リコットがイズミの存在に気づいたからだ。
「む……むむ? ヒ、ヒイロさん! こちらのスンゴイ美人さんはどなたですか? ハッ!? もしかしてヒイロさんの新しい奥さんですか!?」
小娘がギルド内に響き渡る大声で、とんでもない発言をしてくれやがった。
そのすぐ後に「ナンチャッテ」とか愛らしく舌をペロリと出していたが誰も聞いていない。
騒がしくなるギルド、大勢の好奇の視線が俺達に集まる。
でも、まだこの段階では騒ぎというほどでは無かった気がする。
そう……やつが頬を染めながら腰をくねくねさせ、意味不明な事をほざいたりしなければ。
「あら、わたくし達の魂と下半身で深くつながったドロドロの熱いパッションは、何も知らぬ第三者にも語らずとも見えてしまうものですかね? 困りましたね……あ・な・た?」
愉快な鬼畜エロゲーのイズミが、非常に頭が愉快な事を仰って、俺の肩にしな垂れかかるように抱きついてきたのだ。
たまにカオルが見せる、うっとりとした
おかしいよね? 俺いつの間にTS清純系ビッチの好感度を稼いでいたんだ?
そして、たわわなエルフおっぱいを押し付けられて俺は知った。
乳肉の硬度って女の人によって随分と違うものなんだね……と。
隣に座るダークエルフ美女を見る事は……もちろん俺には出来なかった。
二人の美しい白黒エルフによる、前世まで持ち出した罵りあいの末に始まったのが……俺の正妻の座を賭けた高級娼婦の技巧勝負であった。
俺は周りの男達から殺意に等しい憎悪の視線を頂戴する事となる。
勝負方法が決まる前、二人はどちらの体の方が
俺は断固として拒否した。
……やめろ、俺に公衆の面前でそんなプレイを楽しむ性癖はない。
まじで、やめろって、い、いやぁーお母さぁん!!
泣きながら必死に抵抗した。
二人のTS娘が目と口をピエロのような三日月状に変化させ、舌なめずりしていたのが心底恐ろしかった。
じゃ、じゃあ、俺の体でよければ勝負に使ってくれよ!?
などと鼻の穴を広げて
その後、何人ものギルド関係者を巻き込んで協議した結果、シャドウボクシングならぬ、シャドウ槍磨き(隠語)で勝負をする事になる。
俺を中心として挟んだテーブルに二人の美女が向かい合い、更にその周りには冒険者達が詰めかけ壁を作り、神聖な夜の技能勝負が始まったのだ……おい、なんだよこれ?
それから十分以上は経過した。
二人の右腕の上下反復運動は依然止まらず、むしろトップギアさえ上げているように見える。
これでも俺は世界を救った男、武術や戦闘術にもそれなりの慧眼をもっているつもりだ。
夜の技能は専門外だが、それでも彼女達の勝負がかなり高いレベルで行われている事は分かる。
お互い右手を動かしたままポーカーフェイスで微笑んでいるが、たまに目線や口元、長耳がやり取りをするかのように微妙に動き、それを受け腕や指の位置がさり気なく変化していく。
言葉には出来ない深い心理戦というか、多分カ〇ジとかのギャンブル漫画的な読みあいとか駆け引き、そんな感じの事が二人の間で行われているんだと思う。
……すまん嘘吐いた、正直、俺にはどういう勝負なのかよく分からん。
ただもういい加減にしろよ……お前らの腕の動きは酷く生々しくてエグイんだよ!
見ろよ、いかにも田舎から出てきて冒険者になったばかりの純粋で素朴そうな少年達が、顔を赤くして前屈みになってるじゃねーか。
若い女の子達ももじもじして、ひどく赤面しているよ!
俺も危なかったよ! お前らのTS前の姿を知らなかったらヤラレてたよ!?
というか俺の後ろで無邪気に応援しているリコット嬢は、絶対に意味が分かってないよね、ちくしょうめっ!!
そんな大多数が理解できない勝負だが、決着は突然だった。
余裕の顔だったイズミが不意に何かに気づき、カオルの右手を見て、それから何故か俺のほうを見て、驚愕の表情を浮かべる。
そして悔しそうに目をつぶると、右手の運動を停止させたのだ。
「…………わたくしの負けです」
あっさりとしたイズミの敗北宣言だった。
カオルも当たり前のようにそれを受け入れて返答する。
「私の方が情報が多かったね……アンフェアだったかな?」
「そんなことはありません。勝負に対しての認識の甘さ、それが明暗を分けたのですから」
先程までの激しい戦い(?)を繰り広げていた割には静かなやり取りである。
お互い見つめ合い、長耳をピコピコと動かし、やがて二人はうなずいて微笑み合う。
その表情には全力を尽くした者だけが分かるシンパシーがあった。
ただ、スポコンものみたいに〆るのはいいんだけど、お前達以外はなんで勝負が付いたのかさっぱり理解できてないぞ?
「あ、あのぅ……どうして勝敗がついたのですかぁ?」
二人の雰囲気が爽やかすぎて、物怖じしなさそうな小娘リコットですら遠慮ぎみである。
やっていた事は爽やかとは程遠い、卑猥な手〇キだというのに……。
リコットの質問に、イズミは右手で架空のナニかをつかんで見せた。
「わたくしが想定したのは、この……今まで致した方々の平均からの割り出した大きさです」
そう言って右手をシュッシュッ……どうして無駄にエロくするかな、このエロフ。
「しかし、カオルさんが想定したのは……」
カオルはにぎった右手をイズミの隣に差し出してきた。
そのにぎりはイズミのにぎりにくらべると明らかに一回り小さい。
そしてイズミは俺の股間を透視でもするかのようにジッと見つめてくる……もの凄い嫌な予感がするんですけど?
「そう、この勝負の本題を考えれば分かり切ったことです。万人を想定したわたくしと、あくまで
「………………」
イズミの説明に、理解ができた者から俺に対しての同情の視線が向けられた。
何人かの男達に優しく肩を叩かれる……強く生きろとばかりに無言で叩かれる。
や、止めてくれよお前ら……まだ憎悪の視線と言葉を投げられた方がましだよ。
そんな中、カオルが俺の前に立つ。
彼女は俺の全てを受け入れられると言わんばかりに大きく手を広げる。
母性あふれる豊かな胸……そして慈母の微笑みを見せながら俺にささやくのだ。
「私は君の全てを知っているのよ?」
俺は顔面をテーブルに叩きつけて泣いた。
この話を投稿した時点でUA4000を越えました
つまり世の中で漢字4000文字分を覚える機会が永遠に失われたということです