三匹のとらさん   作:葉虎

1 / 1
第1話

夢……夢を見ている…

 

「いいか?まけたほうがこぶんになるんだからな!」

 

懐かしい夢。

 

夢の中の私は己の身の丈ほどある大きな采配を構える。

 

「……べつにおれはおまえなんてこぶんいらないんだが…」

 

采配を向けられた相手がやれやれと言った態度を取る。

 

手に持った武器を構えることなく……。

 

その姿に私は頭にきて…

 

「やぁあああああ!!」

 

一気に距離を詰めて、思い切り采配を振り下ろした所で……。

 

目が覚めた。

 

 

 

 

 

「それで…唐突に人の結界をぶち破ってまで…部屋の中に入ってきたのはなぜです?」

 

艶やかな黒髪を肩の辺りで切りそろえた、ツリ目で眼鏡……これで身長さえ高ければいかにも仕事が出来そうな美人が出来上がったはずだが、残念ながら…低身長な見た目美少女…いや、幼女ともとれるしれない、そんな彼女は不機嫌そうにそう漏らした。

 

「ちょっと懐かしい夢を見たからな。」

 

「……一回死んで来てください。まぁ、そう思った私は悪くは無いでしょうが一応聞いてあげます。どのような夢だったのです?」

 

「…とらの夢だ。」

 

「とらのゆめ……。あの同人誌販売で有名な…って、冗談ですからその振りかぶった賽を収めてください。景虎さんの事でしょう?……ふむ、やはり私の部屋に不法侵入した理由とは結びつかないのですが……」

 

両手を挙げて降参のポーズとりながら言い直した事に免じて勘弁してやろう。なんかぶつぶつ言ってるけど…

 

「あのバカ……今頃なにしてるんだろうな…」

 

「会いたいですか?」

 

「あぁ、会いたいね。会ってあの時の決着をつけてやる!」

 

そしてあいつを私の物してやるんだ。

 

「はぁ、そうやって物騒な事を言っているとかえって避けられますよ。まぁ、あれですよ。近いうちには会えると思いますよ」

 

「……おい、氏康。お前なんか知ってるのか?」

 

その問いに、氏康……北条氏康は意味深に笑うだけで答えはしなかった。いや…その代わり…

 

「……それよりもさっさと出て行ってください」

 

ピタリと笑いを止め、氷のような表情で私に退出を促してきた。

 

 

 

 

「っくしゅ。あ~、風邪ひいたかな」

 

軽く鼻をかんでごみ箱に捨てる。

 

「春先とは言え、まだ夜は冷える。あんまり薄着でうろつくんじゃねーぞ」

 

「うぃよ。ん、お茶。」

 

「おう、ありがとよ。長尾」

 

時刻は午後五時過ぎと行った所か…。

 

学園から寮へと帰り、寛いでいるところにやってきた寮生である源忠勝にお茶を振舞う。

 

テレビからは大和丸夢日記の再放送が流れている。

 

シリーズもので今の所全23作。今、流れているのは15作辺りか?

 

あの金髪ドイツ娘に聞けば分かるだろうが……。

 

……やめておこう。無駄な長話に捕まりそうだ。っと、ドイツ娘と言えば…

 

「なぁ、源さんや何時も気になっていたんだが…。直江達は毎週何処に行っているんだ?」

 

毎週金曜日には何故か寮生の大半は居なくなる。

 

残るのは俺か源さん。

 

源さんもバイトの日は居なくなり、その頻度は結構多い為、割と一人きりで残ることが多い。

 

「あぁ?直江達なら何時ものだろ。金曜集会っつったか…」

 

「集会?あいつらあっち系なの?」

 

そういえばファミリーがどうたらとか言ってたっけ?

 

やっぱり不良同士の抗争とかやったりするのだろうか?

 

……川神姉と黛がいる時点でレギュレーション違反。大人げない気がするのだが…。

 

「そうじゃねぇよ。仲のいい奴ら同士で毎週金曜日に集まってるだけだ」

 

ほうほう。なるほど…

 

「源さんは行かないの?」

 

「俺はバイトで忙しいしな。それに群れるのは趣味じゃない。そういう長尾は行かないのか?」

 

「……俺、誘われてないし」

 

「………」

 

確かに平日は所要で殆ど出かけてるよ。土日も家に居る事なんてほとんどない。

 

金曜日くらいはって事で、休息日は設けてあるけど。それだと入れ違いなわけで。

 

あれ?一年居るのに俺ってみんなとの接点が少ないね。つか……

 

「俺、ハブられてるのかな……」

 

い、いや。違うもんね。俺から避けてたんだもんね。

 

諸事情で川神百代さんに絡むと色々面倒臭そうになるから避けてただけだもんね。

 

そう自分を鼓舞する。

 

気まずい空気の中、バイトの時間になり源さんが出かけていく。

 

この日を境に……。

 

源さんが俺に優しく接するようになった気がする。

 

その優しさが……目に染みた。

 

 

 

翌朝…寮の誰もが寝静まっている頃、俺は目を覚ます。

 

「んじゃ、軽くひとっ走りするか。今の時期は……サバだな」

 

洗顔、着替えなどの準備を済ませ、外に出る。朝食は現地で食べるとしよう。

 

目的地は銚子だ。

 

ととその前に……

 

「日課のお祈りだな……」

 

まずは山科か……

 

京都・山科

 

俺が毎朝訪れるのは毘沙門堂。

 

川神から京都まで……通常なら数時間かかる距離。それを一瞬で移動する事を可能とする技があり、俺はそれを使っている。

 

空渡り……所謂、瞬間移動である。

 

かの川神の武神。川神百代が使う瞬間回復と同様の稀な技らしい。

 

おかげで全国各地一瞬で移動でき、ご当地もの、あらゆる旬の食材…それを新鮮な状態で入手できる……重宝すべき能力だ。

 

とりあえず本殿へと移動する。祀っているのは名前の通り毘沙門天様だ。

 

毘沙門天様に祈るのは子供の頃からの日課である。流石に京都まで来るようになったのはしばらく前に、空渡りを覚えてからだが、それまでは普通にその場で毎朝祈っていた。

 

最初は強要されていたのだが、それが無くなった今でもやらないと落ち着かないのだ。いいや、京都に来てからはより一層、真剣に祈りを捧げなければならない。その理由は…

 

『ほっほ~♪虎よ。今日も元気そうじゃのぉ♪』

 

本殿で祈っているとそんな幼い少女の声がする。

 

目を開けばそのには着物を着た銀髪の髪の幼女。ふわふわと浮き、体が透け、向こう側が見える事から普通の人間でないことが伺える。

 

……そう、信じられないが彼女こそ…毘沙門天様なのである。

 

俺も最初は信じられなかった……だってさ、日本の神様…それも武神だよ?銀髪の幼女って…

 

イメージ的には厳格そうな髭の生えた筋肉ムキムキの男だったのだが…。

 

『えぇ、すこぶる健康です。これも天様のご加護があるからでしょう』

 

いつも通りの美辞麗句を述べておく。天様とは毘沙門天では長い。もっとふらんくによべと本人から言われたので、こう呼んでいる。

 

この神様は今の所は俺しか見えないし、意思疎通ができるのも俺だけ。

 

長尾景虎が関係しているのか、幼いころからの信仰の賜物か……

 

『あいも変わらず愛い奴よのぉ……。それで…』

 

にこにこと笑っていた天様が一変して睨んでくる。いや、俺を睨んでいる訳じゃない。彼女は…

 

『あの老いぼれと小生意気な似非孫娘は伸してきたのかぇ?』

 

あの川神院の総帥、川神鉄心とその孫…川神百代をよく思っていないのだ。

 

『いえ、あの……ですからそこは…ほら、天様の寛大な心で一つ…』

 

『ならん!!この場にあやつらが雁首習えて謝罪に来るまで妾は許さん!!』

 

がおーっと吠える天様。その姿は愛らしいが……ビリビリと尋常じゃないまでの神気を感じる。

 

この人があの二人をよく思っていない理由。それは自身に挨拶せず好き勝手にふるまっているせいだ。

 

まず、川神鉄心。その奥義には顕現の参・毘沙門天というものがあるらしい。いや、俺は見た事ないから知らないけど。

 

そう、毘沙門天である。

 

勝手に自分の名前を使い、気で顕現されたという点が大層気に入らないらしい。

 

それも一言も無くだ。

 

そしてその孫娘。川神百代。彼女は巷では武神と呼ばれている。

 

そう、武神である。毘沙門天を差し置いてである。

 

『百歩譲っても……武神と謳われるべきなのは妾が加護を与えている…虎、お主であるべきなのじゃ!!』

 

じゃから虎よ。そやつらの首、打ち取ってまいれ!!と次第に熱くなっていく天様をどうにか宥めて、その場を後にする。

 

これでやっと、銚子にいける。

 

 

 

 

 

「おぅ!!兄ちゃん!!今日も来たんかい!!」

 

「おはようおっちゃん!今日もよろしくね!」

 

「あぁ、兄ちゃんが居ると何故か漁獲量が違うからなぁ。今日も頼むぞ!!」

 

港に着き、なじみの漁師に挨拶を交わす。

 

この辺りは俺の趣味だ。

 

昔、とある事情で飢えで苦しんだ時期があり、それ以降食事に興味を持つようになった。

 

死ぬ前に色々な美味い物を食べたいと。

 

ゆえにあちこちで料理の勉強をしたり、名産物や旬の物を調べたりなどを行うようになった。

 

漁師さんに船に乗せて貰い、漁の手伝いなどを行う事で獲った魚などを分けて貰ったりしている。

 

最初はお金がいいかとも言われたが断った。俺には食えるものの方が良い。

 

 

 

 

漁に精を出した後、次に向かうのは川神…ではなく湘南方面。

 

そこには、とある寺がある。

 

極楽院。

 

此処には俺の育ての親ともいえる恩人が住んでいる。

 

「虎。今日も来たんかい」

 

「おはよう。ばぁちゃん…今日も元気そうだね。」

 

挨拶を交わしつつ、上り込んで台所に向かう。

 

「サバは…昼でいいかな。朝飯は適当に冷蔵庫のもんで…いや、折角新鮮なんだし…刺身の一品くらいには使うか…」

 

俺は金曜日以外は此処で食事を作ることが良い。

 

少数だが孤児などが暮らしている為、結構重労働だったりする。

 

今どきの子は食べ盛りだから。

 

「いいんだよ?もう虎も高校生だ…もっと遊びたいだろう…ここへ来るのは依頼が会った時くらいで…」

 

「好きでやってるんだよ。あっ、でも今年からはもうちょっと来る機会が減るかも…」

 

「ふぇふぇ、彼女でもできたのかい」

 

「なら良かったんだけどねぇ……」

 

昨日の源さんとの会話でちょっと不味いんじゃないかと思い始めたのが理由だ。

 

それに少し前に寮長からも怒られたし、部屋を空けすぎだって……。

 

今までは風間という風来坊が隠れ蓑になっていたのだが、とうとう露見してしまい注意を受けたのだ。

 

追い出されたら…此処に戻る事になってしまう。俺的には此処も居心地がいいんだけど……流石に出戻りは格好悪いからな。

 

「……ふむふむ、鍛練は怠っていないようだねぇ」

 

「まぁ。自衛の為に続けてるんだ。面倒だけどサボったら己の身が危ない」

 

それに天様に怒られる。

 

「……それだけの力を持ちながら…誰から身を護るつもりだい。」

 

「目下一番注意しなきゃいけないのはあの髭。」

 

あぁ、忌々しい。あの髭め!!もう攻撃がヤバいのなんのって……当時、小学生だった俺に対してあの容赦のない攻撃。何で捕まらねぇンだよアイツ。

 

「……ヒュームかい…。ったく、難儀な事じゃの…」

 

話しながら手は止めず、食事の準備を続ける。

 

「正直、川神学院に入った時はマジで焦ったよ。だって、九鬼が居るんだもん」

 

俺が川神学園に進路を決めた理由は、目の前の婆さんと天様から勧められたからだ。

 

んでもって、学園で九鬼英雄…あいつを見た時、本当に驚いた。一時期は警戒をしてたんだが…

 

「…問題は無かったのかい?」

 

「うん。どういう訳か俺の事知らんかった。その従者の忍者も…」

 

同姓同名の別人とか思われてるのだろうか?まぁ、藪を突いて髭が出てきても嫌だから、なるべく関わらないようにしているのだが……。

 

 




他2作品の筆が進まないので気晴らしに書いてみた。

まずは、執筆のモチベを高めるところから。

とは言っても、休日に仕事ばかりで時間が取れないんだが……。

安西先生、休み欲しいです。
  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。

評価する
一言
0文字 一言(任意:500文字まで)
※評価値0,10は一言の入力が必須です。参考:評価数の上限
評価する前に 評価する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。