光ってやっぱいいなあ(ガンマレイキメー)
飾り気のない自室の天井を見上げながら、西住まほは今日一日のことを想起していた。
あの決勝戦。みほは確かに私たちの敗北に直結するミスをしてしまった。だが、それだけが理由などとは口が裂けても言えない。
そもそもあのような足場の悪い地点を通るよう指示を出したのは自分だ。そのような状況を作ったのも自分だ。
だというのに、母も、チームメイトも、そしてどこの誰とも知れぬ世間の風潮も、皆一様にみほだけを糾弾し続けている。
「……っ!」
それを浴び続けている妹のことを想うだけで、知らず知らず拳を強く握っている自分がいた。
今のみほには、支えてくれる仲間が一人もいない。それは厳然たる事実であり、そして黒森峰と西住流の在り方を鑑みれば、非常に口惜しいが当然の流れなのかもしれない。
黒森峰の隊長として、そして西住という家の跡取りとして。自分は
そんな無力な自分が、何より憎らしくて仕方がない。
「ならば――」
そんな自分が今できること、今為すべきこととは一体何だ。
西住流の後継者、黒森峰の隊長――それらの飾りで覆い隠された、西住まほという一人の人間が、人間として、そして何より、あの子のたった一人の姉として、為すべきこととは――
「私は、おまえの――」
その答えを口にしようとした、まさにその時。
「お姉ちゃん、いる?」
部屋の扉を叩くノックとともに、妹の声が聞こえた。
そしてそれこそ、更なる混乱と憔悴の日々の始まりを告げる烽火だったのだ。
「み、みほ。おまえは一体、何を言っている?」
眼前で日ごろの鉄面皮からは想像もできないほど狼狽した私の様子を眺めながら、みほは淡々と答える。
「全部そのまま、言った通りだよ。お姉ちゃんはこれからも
それは、つい先ほど決めた覚悟を見透かしたかのような内容だった。額面通りに受け取れば至極真っ当で正しいのに、それを言っているのは当事者も当事者、渦中の人物であるみほ自身。しかもその
「――っ!おまえは、おまえは自分の言葉の意味が分かっているのかッ!?隊長?後継者?ふざけるなッッ!私は、私は――」
「――もう一度だけ、言うよ」
冷や水を駆けられたかの如く、私は凍り付いた。
違う。目の前のみほは、今までとは決定的に何かが違う。
「自分の務めを果たして。近いうちに私はお姉ちゃんの敵になる。その時チームがバラバラじゃ、本当の意味で私の目的は果たせない。西住流次期後継者が指揮する最強の黒森峰を、私は真っ向から叩き潰す。そうすることでこそ――」
これは何だ。言っていることはどこまでも真っ当なのに、なぜみほのことがこんなにも恐ろしい?
開き直りでも、自棄になっているわけでも、まして立ち直ったわけでもないのに、どうしてこうも
そしてそれを、誇ることも喜ぶことも一切せず、ただ当然のように話すおまえは一体、どうしたというのだ。
「――西住流に、ひいては戦車道の世界に蔓延る勝利至上主義を消し飛ばすことが出来る。もう二度と、戦車道の中で涙を流す人が生まれないように」
そんな大言を、なぜそうも当然の未来だと言わんばかりに顔色一つ変えずに語ることが出来る?
「自分の矛盾なんて、全部承知の上。勝利を以て勝利を求める価値観を壊すなんて、狂っていると自覚してる。それでも、ここで足を止めて一体何になるの?」
言葉に込められた熱量――魂が、まるで物理的な圧力を持っているかの如く肌を刺す。
文字通り、みほは本気だ。本気で夢を語り、本気でそれを成し遂げんとしている。
「
「諦め?逡巡?そんなものはいらない。だからお姉ちゃんも、好きにしてほしい。力でも、言葉でも、どちらでも全力で尽くせばいい。だけどそれでも絶対止まらない」
その光に、私はただただ圧倒されるばかりで言葉が出ない。そんな私をどこまでも真っ直ぐな瞳で見据えながら。
「――私は負けない。バイバイ、お姉ちゃん」
みほが背を向けて去る。去ってしまう。
待て――――待ってくれ、みほ。おまえは一体、
その背中に手を伸ばしても、既に手遅れだった。
ぱたん、と扉が閉じられる。
後を追うことは、なぜか出来なかった。
光の奴隷・亡者の特徴其の一
・割と言ってることは真っ当なことが多い