文字数も安定しない。書きたいときに思うまま書いているからこんなことになるんですよね。
西住まほとの、そして黒森峰との決別から月日は流れ、大洗女子学園で新年度を迎えた西住みほは眼前に広がる
現実とは誰かの予測通りに進むことなど全くと言って良いほど有り得ない。それは己の道を見つけ、
だが今回の場合、想定外の事由はみほにとってはある意味で僥倖と呼ぶべきものだろう。
戦車道の復活。誰もやらないなら自分がやる予定だったのだが、良い意味で当てが外れた形になった。
(だけど、あまりに性急すぎる。大洗は確かに戦車道をやっていた過去はあるけど、二十年以上も前に廃止されている。当然、戦車道分野での実績もない。それは私が転校先を選ぶ際の
プロモーションに続いて始まった履修に関するオリエンテーションなどそっちのけで、みほは現状の分析を開始していた。
(ならば裏には、間違いなく戦車道を
この時点で、みほは大洗に突如として降りかかった何かしらの脅威若しくはそれに類するものの正体をおおよそ掴んでいた。
「……なるほど。これは
そしてそれは、みほにとって新たな手札が増えたことを意味していた。
「ねえねえみぽりん。さっきからどうしたの?」
「ふえ?」
目まぐるしく展開される未来予想は、隣からの声によって止められていた。
「もー。オリエンテーションくらいしっかり聞いておかないとダメだよ?」
声の主――武部沙織がぷんすかといった様子で話した内容を聞いて、初めてみほは己がかなり深く思考に没頭していたことに気付いた。反対側では、やはりこの学園艦に来て出来た友人の五十鈴華が、あらあらと言った様子で自分たちを見つめている。
そして同時に、沙織が言うオリエンテーションなるものの存在にも始めて気付いた。当然、話を聞いていなかった自分には何のことかさっぱり分からない。
「えへへ。……ごめん。聞いてなかった」
己に非があるならばしっかり認める。これはとても大切なことである。
なお、この後の履修選択では三人ともしっかり戦車道を選択した。
履修用紙を提出したその日の放課後。みほは迷わず生徒会室へと足を運んでいた。沙織と華も同行を申し出たが、今回に関しては込み入った話になる可能性が高いため、申し訳ないが断っている。
「失礼します」
アポイントメントはすでに済ませてある。扉を叩き、一礼して入室したみほを迎えたのは、当然だが生徒会の面々である。
(生徒会長の角谷杏さんだけ、か。事前に聞いた限りでは、多少問題はあってもこの学園と生徒に対しては非常に真摯だとおおむね良い評判だったけど……)
百聞は一見に如かず。自分自身で確かめもせずに人を決めてかかるなど愚の骨頂。今より始まる会談でその正体を確かめる。
(その予定だったけど――)
思わず笑みを浮かべてしまう。
「やーどうも。待っていたよ西住ちゃん」
気だるげに椅子に腰かけてこちらを見やる生徒会長。一見すればやる気がなさそうに見えるが、みほには分かる。
この人は、
「いやー。戦車道履修してくれて助かったよ。西住ちゃんがいるなら百人力だ」
「その口ぶりから察するに、貴女は私のことを知っているんですね」
「まーね。こっちとしても色々あるから、西住ちゃんが戦車道選ばなかったらどうしよっかなって思ってたけど、杞憂だったみたいで助かったよ」
「色々、ですか」
「そ。……ねえ、もう腹の探り合いはやめない?」
こちらの考えていることなど、向こうも織り込み済みということか。
「ふ、ふふ――」
「ふふ、ふふふふ――」
思わず私たちの口から笑い声が漏れた。最初は小さく、しかしだんだんと大きくなっていったそれは、やがて生徒会室に響き渡る哄笑となっていた。
「ふふふふふふふふ、ふふふふふふふふふふ――!なるほど、なるほど素晴らしい!……単刀直入に聞きましょう。戦車道復活、その裏にあるものとは一体何ですか?」
「この学園艦、そしてそこに住まうみんなの未来。それを奪われるなんて、あたしは絶対に認めない。だから、絶対に全国大会で優勝する」
ここで初めて、杏の口調から遊びが消えた。声に宿った熱が、彼女の本気を余すことなく伝えている。
「私一人でもやるつもりでしたけど、本当にこれは僥倖ですね。……いいでしょう、会長。私西住みほは、全霊を以て貴女に協力しましょう。互いの利害が一致している者同士、宜しくお願いします」
「こっちこそ。……さて、それで今日は話をしたいってことだったけど」
「会長の本音が聞けた。それで目的は達成ですよ。戦車道復活の理由についても、これで把握できましたし。……最後に一つ、よろしいですか?」
「ん」
日が沈み始め、徐々に朱色に染まっていく生徒会室。その扉に手をかけ退出しようとしていたみほは、ふと思い立ったように振り向いた。
「私がもし、戦車道を選んでいなかったら――会長。貴女はどうしていましたか?」
自分のことを生徒会は既に把握していた。そして、「戦車道を選んでくれて助かった」と言った。つまり、少なくとも角谷杏は西住流の家に生まれ、黒森峰の副隊長を務めていた自分の過去を知っているということに他ならない。
そして、彼女にはのっぴきならない
ならば一般的には、何としても手に入れたいと考えるのが普通だろう。
「そんなの、決まってるじゃん」
当たり前のように、杏は答える。
「どうもしないよ。選ばないってことは、それが西住ちゃんの選択だったってことじゃん。それについてどうこう言う権利なんかあたしにはないんだから」
「……そうですか」
予想外の、そして予想以上の答えに歓喜の情念が止まらない。
杏は、本気で自分たちの力で高校戦車道を制覇する気だったのだ。自分の存在など、彼女にとってはせいぜい便利な地図程度のものでしかないのだ。自分がいようといまいと、杏の道は変わらない。
なんと真っ直ぐな輝きだろう。なんと素晴らしい気概だろう。
その本気に、思わず見惚れてしまいそうだ。
「でも、西住ちゃんは来てくれた。……まさか、こんなにもカッコいいとは思ってなかったけどね」
「だから、一緒にてっぺん目指そう。そっちにも事情があるのは知ってるけど、西住ちゃんの言う通り利害が一致してるなら問題はないよね?」
「当然です。今の歪んだ戦車道の世界を壊す。高校戦車道の優勝は、あくまでもそのための手段の一つですから」
「……こりゃまた。とんでもないのを味方にしたみたいだねー」
苦笑気味の声に見送られて、生徒会室を後にする。
既にみほの胸中は、ある確信が生まれていた。
「私たちは、優勝できる」
誰が聞いても分不相応な大言壮語と嘲笑するであろう。戦車道の経験者もおらず、備品も何もかも存在するかさえ怪しい無名校が、全国大会で優勝する。
空想上の物語ならいざ知らず、そんな奇跡は現実には起こり得ないのだから。
――だが、近い将来に人々は知ることになる。
本気の恐ろしさを。意志の力の強さを。
「諦めなければ、夢は叶う」
何故なら彼女は光の奴隷。
定めた道を違えることなど、絶対に有り得ないのだから。
会長は完全な光の奴隷じゃないよ!逆境の中だから覚悟決めて頑張ってるんだよ!まあ、光側なメンタルなのは否定しませんが……。
あと、原作とほとんど変わらない描写は基本飛ばしてます。