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朝食を済ませ、ゆったりとしたソファに腰掛ける
「それで、要件とはなんです?」
目の前の男…トマが問いかける
「もう少しゆっくりしたって良いじゃないですか。せっかちですね」
「それが家主に言う事か?」
「さぁ、どうでしょう。でも、短気は損気ですよ」
湯気の上がるコーヒーを啜る
コーヒーは結構好きだ
香りも落ち着くし飲めば目が冴える
どちらかといえば浅煎りコーヒーの方がフルーティで好みだ
前世にはどちらにしろ泥みたいだと言うやつもいたが…
ふぅ、と溜息をついてみる
「こっちが溜息をつきたいです」
本当にもう怒りっぽいなぁ
「だから女の子にモテないのでしょうね」
「聞こえてますよ、余計なお世話です。というか早く本題に入ってください」
あなた、いつもはこんなに揶揄うことなんてないでしょう。
「…仕方ないわね。ストレートに言う事にするわ。私は軍人になりたい。その為には何だってする。」
トマの手から滑り落ちたマグが床に落ちた
ガシャンと耳障りな音が響く
「………貴女、婚約者が捕まったからって気でも可笑しくしたのでは?」
「私が狂ってるように見える?」
「…いえ、そういえば貴女が突拍子も無いことを言い出して無理矢理押し通すのはいつものことでしたね。」
「失礼なひと!まぁ自覚はあるけれど」
クスリと笑ってからすぐに真面目な顔になる
「本気ですか?」
「勿論よ」
そう言ってから俺はナイフを取り出して髪を切った
「このくらい本気よ」
残った髪は頸が見えるほど短くなった。
こんな事をするとは思わなかったのかトマは目を見開いた
「分かりましたがどうするんですか?私が出来るのは軍に入るための手引きくらいですよ?」
「大丈夫ですよ、私…いや、俺は一応魔術もかじってるから見た目どうこうは問題ない。」
持っていた髪を魔術で全部燃やす
ごめんねメリー
君の髪は俺には邪魔だったんだ
伸ばせたら伸ばしてみるね
「分かりました。では着替えてきて下さい。それを見て私が判断しましょう…貴女、元々実力は申し分無いですから」
「ありがと。俺、トマのそういうところが好きだよ」
「…はぁぁ…私は貴女のそういうところが嫌いですね」
あはは、いけずだなぁ
そう言ってドアの向こうに消えた彼女は本当に人が変わったようだった。
初めて会ったのはいつだったか…
もう十数年も経つと考えると感慨深いものがある
それこそ人形のようだと思っていた
私は女性が苦手、確かにそうだ
けれど最初の彼女は少女というよりは人形だと思っていたので何ともなかった
しかし、だんだんと成長して女性らしくなってからだ
見た目だけは一級品で、顔を見て話しづらくなった
ただ、そんな物はすぐに無くなった
亡くなったと言ってもいいかもしれない
見た目がアレでも中身がバトルジャンキー一歩手前な女に湧く羞恥心は即座に死んだ
下手をすればそこらの男よりも男らしい精神をしている彼女に女性だからと剣を向けない事も出来た
それをすればおそらく死なない程度に嬲られるだろうが
しかし4、5年前から様子が変わった
婚約者が出来てしおらしくなった
見た目どうりの深窓のお嬢様になった
それでも欠かさず鍛錬はしていたようだ
そしてまた、今度は女を捨てた
彼女が髪を切った時
ずきり、と痛んだ胸の事はきっと無視しなければいけない
そうしなければ、彼女を裏切る事になる
床の茶色い水たまりを見ればひどい顔をしている自分がうつる
染みて取れなくなる前に片付けなければ
割れた破片とともにこの感情も捨てられれば
どれだけ楽になるだろうか
ドレスを脱いでコルセットを外す
綺麗な靴もずっと使っていた黒いシルクのチョーカーも外す
ドレスは処分しよう。どうせなら質に入れる方が良い
靴ももう履くことは無い
それでもチョーカーは手放したく無かった
これはメリーが初めてエドモンから貰ったプレゼントだから
「これはメリーだけの物だから…」
昔着ていたシャツに袖を通し、丈の長いズボンを履いた
少しヒールのあるブーツを履いてジャケットを着る
トマの整髪料を少し拝借して髪を整える
まだ魔術は使っていないけれど取り敢えずはこれで良いだろう
「着替え終わったけど、どうかな?」
俺の事を見たトマは一瞬だけ悲しそうな顔をした
「ええ、男に見えるので良いのでは?それにしても魔術とは便利ですね」
このままで男に見えるなら重畳だな
「まだ俺は魔術使ってないよ」
魔術を使えば俺の見た目が変わったのか驚いた顔をした
「違和感は全くなくなりましたね。取り敢えず交渉してあげますが、貴方家はどうするのです?」
「このままここに住んじゃダメ?」
「ダメです」
ケチー!ちょっとくらい良いじゃん!
まぁお金はそのために持ってきたんだけど
「安心してよ。あてはあるからさ」
ドレスや靴、少しの宝石を持って来る
「取り敢えずこれを質に入れ来ようと思うんだけど良いかな?」
「どうして私に意見を求めるんです」
「…なんとなく!」
だって君、俺が正直に寂しいからなんて言ったら笑うだろう?
《貴女にもそんな可愛らしいところなんてあったんですね》
とかさ
でもね、
君は知らないかもしれないけどね
独りぼっちはとっても寒いんだ
だから今だけは一緒にいてね
☀︎月@日
意外とトマが上の立場にいたのが良かった。
家も調達できたし良いこと尽くめだ。
模擬戦なんかもしてすぐに5日後には仕事が入ったしまた忙しくなりそう
余計な事を考えなくて済みそうだ。
この日はここで終わっている
どんどんお気に入りが増えてビビってる作者です
世の中って物好きが多いんだね!