俺と私の日記帳   作:竹俣 兼光

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ハッピーニューイヤー!!





サリエリ先生!サリエリ先生可愛よ可愛いprpr


音楽の日

「メーガス・グランツ。貴方を陸軍中将に任命します」

 

厳粛な雰囲気の中、ゆっくりと前へ出る

 

膝をつき、こうべを垂れる

 

「慎んで拝命致します」

 

 

 

 

 

 

王宮を去ろうと歩を進める

 

 

何処からか悲しさを感じるメロディーが流れている。俺はそっちが気になり、目的地を変えた。

 

 

 

音の聞こえる扉を見つけ、そっと開く。そこではこちらに背を向けて誰かがピアノを弾いている様だ

 

 

これは…きらきら星、だろうか

 

 

ピアノの音が終わり、彼はひと息つく様だ。ほぼ盗み聞きだけれど、聞かせてもらったならば感想を言うべきだろうか。ほらそこ!うわぁとか言わない!別に覗きじゃないんだし!

 

拍手をしながら、

「とてもお上手なのですね」

 

と、当たり障りないコメントを伝える。俺がいるとは思っていなかった様で、とても驚いた様子だった。

 

「それはどうも、ありがとう。いつから君は居たんだ?」

 

「そうですね、俺がここに来たのは五分前位です」

 

ニコニコ悪びれなくしていれば、流されてくれるだろう、たぶん

「そうか…それで君は…確か…グランツ少将だったか?」

 

おらって有名だったんけ〜そげな事知らんかったばい…

嫌だなー!エセ方言になるくらい嫌だなー!なんか知らんけど街歩くたびにヒソヒソされてるんだよなー!!!

やだぁ…なんでぇ?ちょっと軍に入って2、3年で少将…じゃねえや中将になっただけやん!きっと先生だってやってるよ!

 

「ええ、俺はメーガス・グランツ。正しくは先程中将の位を頂きました」

 

「おお、それはおめでとう。私はアントニオ・サリエリというしがない音楽家さ」

 

アントニオ・サリエリ?マジで?モノホン?

それを聞いた瞬間、彼の手を即座に握り締めた。うん、もう無意識だね

 

「本当にアントニオ・サリエリですか!?俺、貴方の事大好きなんです!オペラ全部見ました!」

グイグイいったにも関わらず、少し驚いた後にはにかむサリエリさんまじサリエリさん

 

「有り難いね。こんな私の事を気に入ってくれるなんて。しかも今話題になっている軍人さんが」

 

おろ?話題?

「話題って…?」

ポロッと口に出てたらしい。サリエリさんが教えてくれた

 

「知らなかったのかい?確か…物凄くイケメンで、物凄く強くて、何でもできて、凄く優しい…とか。最近は君をモデルにした絵が人気になってるみたいだ。」

 

はへ?何その漫画のキャラクターみたいな奴?俺?

「嘘ですよそんなの。俺は強くないし、カッコよくないし、全然優しくないし、何にも出来ないですから。」

 

だって友達1人すら、自分の半身でさえも助けられない奴が強いはずないでしょ

 

「そんな事ないさ、取り敢えず君が物凄くイケメンなのは私が保証しよう。」

 

えぇー本当にござるかぁ〜?

 

「きっとモーツァルトの方がイケメンですよ」

 

"モーツァルト"と聞こえると、サリエリさんの肩が震えた。だんだんと震えは大きくなり、やがてしゃがみこんでしまった。

 

「…て…い…私は…ヴォルフィを……」

「サリエリさん!?」

 

彼の瞳からポロポロと涙が溢れる

ただ、譫言の様に

「私はヴォルフィを殺していない」

と呟き続けている

 

「落ち着いて下さい、サリエリさん」

同じようにしゃがみこみ、肩を抱く

「貴方がモーツァルトを殺していないというならば、俺は貴方を信じます」

子供をあやす様に背中や頭を撫でる

「たとえ貴方がモーツァルトを殺したと言っても、俺は絶対に貴方は殺していないと信じます」

 

 

 

 

「すまない。見苦しい所を見せて…」

目元が赤いサリエリさんは少し気まずく思っている様だ。まあそりゃそうさな。自分の半分も生きていない様なガキの前で泣いたらそうなる

 

「いえ、気にしてませんよ。誰にも言う気は無いですし」

 

正直、泣いてるのを見て嗜虐心が(げふんげふん可愛かっ(ん"ん"っ何でも無いよ

 

「…その…さっきの事は本当かい?」

さっきの事?さっきって?

「私の事を信じると…」

「どうして初対面で嘘つく必要あるんです?」

ギュッとサリエリさんが抱きついてくる。頬に髭が当たってチクチクするけど、でもそれが心地よく思えた

「…ありがとう…」

「ふふ…どういたしまして!」

ふふ…というかんふふ…っていう笑いだけど、気持ち悪いとか言われなかったしいいよね?内心思ったりしてないよね?

 

 

 

 

 

 

 

少し、彼のことを思い出していた

彼が死んでから二十数年経っている

 

 

私の可愛い教え子

"私が殺した"教え子

 

 

ヴォルフィの作った曲を弾く

 

鎮魂歌(レクイエム)から始まり、ピアノ交響曲、オペラ

最後にきらきら星を

 

 

弾き終わり、鍵盤から手を離すと後ろからパチパチと手を叩く音がした

 

 

「とてもお上手なのですね」

 

柔らかな声が鼓膜を震わせる

気づかなかった。あまりピアノに集中し過ぎるのはよく無いな

「それはどうも、ありがとう。いつから君は居たんだ?」

振り返れば、ニコニコとした美しい青年がいた。ヴォルフィと同じくらいの背丈の青年は、子供の様だった。ただ、ヴォルフィの様な悪戯っ子ではなくてどちらかというと優等生の様だ

「そうですね、俺がここに来たのは五分前位です」

あぁ、この笑い方はヴォルフィそっくりだ。悪戯をして、怒られる時にこんな顔をしていた。

どこかで彼を見たことがある様な気がする

「そうか…それで君は…確か…グランツ少将だったか?」

思い出せば、最近貴族の間だけでなく庶民の間でも噂される様な有名人だと気づいた

軍に入ってすぐに少尉になり、無茶苦茶な事を仕出かし続けて3年程かからず少将になった化け物らしい。正直最初はゴリラを想像していたが、パレードで見た時にこんな細いとは思わなかった。今でも自分の愛馬が怪我をしたからと担いで来た噂は信じていない。彼の愛馬は他の馬のふた回り以上大きかった。キメラだといわれても信じる

 

「ええ、俺はメーガス・グランツ。正しくは先程中将の位を頂きました」

 

「おお、それはおめでとう。私はアントニオ・サリエリというしがない音楽家さ」

まあそれなりに知られてはいるが、彼の様な有名人が知っている筈が無いだろう

そう思ったが、思い込みだった様だ。勢いよく手を握られ

 

「本当にアントニオ・サリエリですか!?俺、貴方の事大好きなんです!オペラ全部見ました!」

鼻が触れ合う程顔を近づけてきた。

近くで見た彼の瞳は澄んだ青色で、太陽の光を浴びた海の様に輝いていた

 

「有り難いね。こんな私の事を気に入ってくれるなんて。しかも今話題になっている軍人さんが」

自分の事に頓着しないのか、噂を知らないらしい。コテンと首を傾げている

「話題って…?」

思わずといった様に漏れ出た言葉に答えてあげる

 

「知らなかったのかい?確か…物凄くイケメンで、物凄く強くて、何でもできて、凄く優しい…とか。最近は君をモデルにした絵が人気になってるみたいだ。」

「嘘ですよそんなの。俺は強くないし、カッコよくないし、全然優しくないし、何にも出来ないですから。」

即答だった。

 

「…だって友達1人………助けられてない……」

吐息の様に弱い声だ。こんなに近くでなければ聞き取れなかったかも知れない

 

「そんな事ないさ、取り敢えず君が物凄くイケメンなのは私が保証しよう。」

此方を疑っている様な目線で、

 

「きっとモーツァルトの方がイケメンですよ」

 

何の悪気も無い言葉だった。けれど、"モーツァルト"と聞いただけで震えるほど追い詰められていたらしい。

 

「…て…い…私は…ヴォルフィを……」

「サリエリさん!?」

 

溢れる涙を止めることが出来ない

周りからずっと「お前がアマデウスを殺した」と言われ続けた

あまりに長く言われて、自分でも自分を疑い始めた

 

「落ち着いて下さい、サリエリさん」

子をあやす母の様にそっと抱きしめて、ゆっくりと白い暖かな手が頭や背を撫ぜてゆく

「貴方がモーツァルトを殺していないというならば、俺は貴方を信じます」

「たとえ貴方がモーツァルトを殺したと言っても、俺は絶対に貴方は殺していないと信じます」

今は彼の優しさを信じて縋る事しか出来ない。

 

 

 

 

「すまない。見苦しい所を見せて…」

涙も止まり、顔を上げれば色の濃くなった肩が目に入る。ああ、自分は六十も過ぎて何をしているのだろう。自分の半分どころか下手すれば三分の一位の若者に縋って泣くなど…

 

「いえ、気にしてませんよ。誰にも言う気は無いですし」

屈託のない笑みが逆に心に刺さる事を彼は知っているだろうか

話を少しでも変えようと、話かけてみた

「…その…さっきの事は本当かい?」

また、コテンと首を傾げた。どうして彼はこうも幼い行動が似合うのだろう。

「私の事を信じると…」

「どうして初対面で嘘つく必要あるんです?」

本当に一瞬で答えてくれた。ただ1人だけでも信じてくれている人がいる事を知れば、本当に楽になる

また潤み始めた瞳を隠すために彼の首筋に顔を埋める

「…ありがとう…」

「ふふ…どういたしまして!」

 

 

 

 

何かお礼をしたいと言えば、

 

 

「俺の友人(先生)になって欲しい…じゃダメですか?ピアノを教えて欲しいんです」

 

 

こんな老人が教えられる事なんて無かっただろうが、彼と過ごす時間は素晴らしかった

 

 

 

「私は…君の様な教え子(友人)がいて…幸せ者だ……」

 

 

最期の時でも、他の教え子たちが信じてはくれなかった

 

「私はヴォルフィを、殺してなどいない」

 

彼だけは…

 

「勿論、知っています。その時は俺は産まれていないけど、それでも分かります。だってサリエリ先生は嘘つけないもの。先生が俺のお菓子こっそり食った後なんて挙動不審になってからすぐに謝りに来たじゃないですか。そんな人がこんな大きな嘘を死ぬまで吐き通すのは無理ですよ」

 

ただそれが嬉しかった

なんて無い事の様に言ってくれた

 

 

 

 

 

 

もう尽きる命だが、天国でもいい。地獄でも構わない

もう一度彼と過ごす事が出来ればとても嬉しい

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

幸せな時間をありがとう




●月♦︎日




アントニオ・サリエリと会った。本物と会う事が出来てとても嬉しい!今度、ピアノを教えてくれる事になったから、楽しみだ。




この日はここで終わっている…
下に小さく1825年☆月@日と書いてある

☆月@日




サリエリ先生が倒れた。
もうあまり長く無いらしい。

どうしてみんなおれのことおいてくの…?

さみ◼️いよ、まだしなないで…
◼️うして◼️◼️◼️こと◼️い◼️いくの?


所々涙で滲んでしまっている
この日はここまでの様だ
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