俺と私の日記帳   作:竹俣 兼光

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グロ注意報


奪い取る日

銃声が鳴り響く

 

 

兵士の雄叫びが響く

 

 

耳を劈く悲鳴が響く

 

 

 

汗の匂い

火薬の匂い

血の匂い

 

全部が混ざってむせ返る

 

 

 

さっきまで隣で話していた奴はもう冷たくなっている

 

 

さっきまで笑ってた奴らは血の海に沈んだ

 

 

さっきまで震えていた奴はおかしくなった

 

 

 

死臭と

狂気と

恐怖が

 

全てを飲み込んだ混沌とした場所

 

 

戦場とはこんな物だ

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「いらっしゃい兄さん!何を飲むんだい?」

 

ガヤガヤとした喧騒の中でもよく聞こえる声だ

 

「ふーむ…取り敢えずエールにしようか!」

 

古びたローブを羽織り、如何にも旅慣れしている様な青年だ。

 

「あら〜おにーさんイケメンね♡私がお酌してあげよっか?」

「キャー♡本当にイケメーン!私がお酌するわー!」

「えー貴女達よりも私の方がいいわよ〜、ねーお兄さん!」

 

「本当?でも俺、こんな可愛い子達に囲まれたら緊張してお酒の味分かんなくなっちゃう」

 

「「「いやーん!!可愛い〜!!!」」」

 

少し眉根を寄せて上目遣いをすれば女達は黄色い悲鳴をあげる

クスクス笑ってカウンターに座れば周りの男が声をかけてきた

 

「よお、兄ちゃんモテモテだなぁ!かぁ〜っ!羨ましいぜ!」

 

「あんたどっからきたんだい?」

 

「俺はフラフラ色んな所旅してるね。この前はフランスだったよ」

 

ドンッと大きな音でジョッキが置かれる

 

「うへぇ〜フランスなんてクソ喰らえだね!」

「そーだ!あんな気取った奴らの鼻っ柱叩き折ってやりたいぜ!」

 

注文したエールを受け取り、ちびちびと飲みながら

「そーいや俺聞いたけどさ、今度フランスと戦争なんだろ?」

 

 

「ああ!俺が指揮をする事になってるんだ!俺たちがあんな弱小国に負けるはずがない!」

 

誇らしげにする男の顔をジッと見つめる

 

「そっか、じゃあ安心だね!」

 

 

 

 

 

 

 

 

「命令を下す。

メーガス・グランツフランス陸軍中将

これより、1万の兵と共にアルジェリアへ赴き、侵略して参れ!」

 

何を馬鹿な事を言っているんだと怒鳴りたいが、シャルル10世に怒鳴る事など出来はしない

 

Oui monsieur(了解致しました). 必ずや貴方様に吉報をお届けします」

 

 

 

 

 

 

 

淡々と

 

 

唯、淡々と

 

 

 

命を刈り取ってゆく

 

 

 

将が前に出るのは愚策だと笑う敵は、笑いが恐怖へと変わった

 

 

少し前に見た顔を探す

 

 

共に酒を飲み

 

共に笑い

 

共に語り合った

 

ひとりの男

 

 

だがそんな物は仮初めでしかない。ただ、一番情報を持った者である。ならば殺さずに捉えねば

 

 

敵にかける情けなど存在していない

 

 

口元が歪に歪む

 

Je l'ai trouvé.(みぃつけた)

 

兵を切り裂いて、前に立つ

 

「ひぃ!く、来るな!化け物め!穢れた悪魔め!」

ニコニコと笑って、自慢げに話していたあの顔はもう痛みと死に対する恐怖で染まっている

 

「首を振るだけで答えろ」

それを言えばガクガクと壊れた玩具の様に首を縦に振り出した

「お前が指揮官だな?」

ピタリと止まってから、一度だけ縦に首を振った

「お前より情報を持った奴はこの戦場にいるか?」

次は横に振る

「そうか。じゃあ、殺しはしないでおこう」

あからさまにホッとした顔になった。こいつは分かっているのか?情報を持った奴が自分しかいないなら、拷問されるのだと分かるだろうに

 

「こいつを捉えて連れて行け」

「「「はっ!」」」

部下に任せて、自分は愛馬に乗って敵を踏み潰しに行く。彼女は厩で暴れまくって、手が付けられないと同僚からの愚痴を聞き、面白半分で会ったら意気投合した。大きな黒毛の雌馬だ。この駻馬の名前はカージュ(勇猛)という。馬だろうが人間だろうが容赦なく踏み潰すヤベェ(ヤツ)だ。

 

 

さて、悪魔らしいんでね。それらしく暴れて来ようか、なぁ相棒?

 

一際大きな嘶きが殺戮(アソビ)の合図になった

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「ひいいあぁぁぁあ"あ"あ"!!!!痛い、痛いいだいイィィ!!!」

 

 

頑丈な鉄格子の向こうから悲鳴が聞こえる

 

「お疲れ様!どぉ?情報吐いてくれた?」

「メーガス中将!…いえ、悲鳴をあげるだけで情報は全く…」

 

そう答える彼の手元を覗き込めば、何も書かれていない報告書が握られている。

 

「あ"あ"あ"!!!やめてくれ!もう嫌だ!!!」

 

あれだけ叫ぶ割には情報を吐かないとは

 

「一旦拷問(コレ)中断しようか。」

 

「しかし…」

 

「この後は俺がちょっとやってみるね。」

 

鉄の扉を開いて、声をかける

 

「一度休憩しないかい?俺が責任取るから」

「…了解しました」

 

 

 

ぞろぞろと部下を引き連れて休憩する為に、食堂へ来た。

「丁度昼時だし、小腹もすいてるだろ?」

 

各々、食べたい物を注文して食事を始める。

俺も昼飯を食べる。さっさと食べ終えて、料理長に話しかける。

 

「やあ、料理長。今日のご飯も美味しかったよ。」

「あらそぉ?なら良かったわぁ〜こんなカワイイ子に褒められたらアタシってば調子に乗ってなんでもしちゃうかも♡」

体をクネクネとさせているのは少し長い金髪を後ろでキツく結った筋骨隆々な大男だ。それでも心が乙女なら、ちゃんと女性らしい扱いをするのが俺クオリティ。あとその方が色々融通利かせてもらえるし

「流石料理長!話が早いね。ちょっと譲って欲しい物があるんだけど…」

「いいわよぉ〜何が欲しいの?」

「……なんだけど」

「あらそんなもの?ちょっと待っててねん、今持ってくるから。」

「やっぱり良い女は懐が広いね!」

「んもぅ!貴方が既婚者じゃ無かったらアタシが意地でも貰ってたのにィ!」

 

そう。俺は既婚者になったのだ。まぁ別にライリーと結婚した訳じゃない。メリーと結婚した事になっているのだ。そうでなければメリーの持ち物を俺が持っているのはとても怪しい

 

「ほら、持ってきてあげたわ。古いからもう交換しようと思ってたし、あげる」

 

「ありがとう、料理長。」

「今度は別にアタシのこと貰いに来ても良いのよ?」

ケラケラと笑い

「俺には勿体ないから貰えないよ。それに、俺は彼女だけを愛するって決めてるから」

「知ってた。だって、そこが気に入ったんだもの」

 

 

しばらくお喋りを楽しんでから別れた

この後はまたお仕事があるからね

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「おはよう。指揮官さん。気分はどうだい?」

 

ズキズキと身体中が痛む。叫びすぎて喉が渇いた。手足の指先には爪が一枚もない

「身体中が痛くて最悪だ。」

さっきの陰気な奴らとは違い、キラキラと輝くような、大輪の向日葵のような青年だった。あの時に出会った、旅の青年だった

軍服を着て、髪の毛をぴっちりオールバックにした青年は、紛れもなく一緒に酒を飲んだ青年だった

「お前は…」

「覚えてるかな?俺と酒飲んだの。あの時に話してくれたでしょ?指揮官は俺だー!って」

ニコニコ笑う男は場所もあいまってすこぶる不気味だ

「戦場でも俺以外に情報を持っている奴は居ないって教えてくれたでしょ?」

思い返せば、戦場で俺を捕まえたあの悪魔も同じ顔だった

「だからさ、情報吐いてくれない?」

「断る!」

いくら辛くても仲間を売る程腐っていない。死ななければまだマシだろうと思う

「…………そっか」

笑顔が消えて、無表情になる。

「お腹空いたでしょ?食べさせてあげるね」

そう言って取り出したのは何も乗っていない皿と銀のスプーン、そして…チーズスライサー?何をする気だ…?

 

「お肉は好き?」

「は?」

 

チーズスライサーを片手に持ち、俺の手を掴む。いや、嫌だ、まて、待て待て

「やめてくれ!」

「やだ」

スライサーが指先に食い込む。ミチリ、と音がして激痛が走る。

「やっぱり筋っぽくて削れにくいなぁ」

 

ぐちゃり

スライサーに絡まった肉を皿に盛っていく

「流石に少なすぎるか。あ!止血しとかなきゃ死んじゃうね。」

俺の肘に紐をぎちぎちに巻いた。だんだんと感覚は無くなっていくが、肉が削れる音が、骨が削れる振動が、俺に痛みを与えている

 

「ほら、あーん。口開けて?」

「ん"ーーー!!!」

スプーンに乗った、赤く血生臭い物体は、たった今俺から削り取られたモノだ

食べたくなくて口を固く閉ざして首を振る

顔を掴まれて無理矢理口に入れられる。

ぐちゃりとしていて生臭く、鉄の味がする。硬いものは削れた骨なのだろう

 

「美味しいでしょ?自分なんだしさ。」

吐き出したいが、口を押さえられ、無理矢理顎を動かされる

嫌悪感からボロボロと涙が溢れ出した。

 

 

 

 

「ねえ、情報教えてくれる?それともまた指食べたい?」

 

 

 

教えたのならば、もうこんな苦痛を味わうことは無いのか?

 

 

 

「教えてくれたら助けてあげる」

 

 

 

口から手が離れる。口に入ったままの肉を吐き出し

「全て話す!もう…こんな苦痛は味わいたく無い!」

恐怖と安堵から涙が止まらない。笑顔を浮かべた男は、

「ありがとう。じゃあ教えて欲しいな。でも先に手当てしようか」

そう言って優しく頭を撫でてくれた

 

 

 

 

 

 

「情報は充分かな?うん、じゃあ用済みだね。殺しちゃおう」

 

「了解です。死体はどうしますか?」

 

「そうだなぁ…首だけ切り取って、送りつけてあげようかな。」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

أو الاستسلام؟(降伏か?)

هل تموت؟(死か?)

أيهما تختار؟(どちらを選ぶ?)

 

指揮官の首とともに送られてきたメモ書きにはそう書かれていた

彼の指揮していた軍はこの国での戦力を殆どつぎ込んでいた。だというのにあの悪魔は…金の髪の悪魔は!全て踏み砕いた!

元々人間だったことなど分からないほどに!

 

「皆の者!我々は悪魔になど屈しない!悪魔の国、フランスを討ち取るぞ!」

 

 

 

 

 

 

 

 

「そうしてもらわないと歴史が狂う」

 

柱の陰には血のように赤い服の青年が1人

老人の様な白い髪は目立ちそうなものだが、誰も気がつかない

 

「ああ、解っているとも。また殺せばいいのだろう」

 

 

 

 

しばらく様子を見ていた男は、ポツリと呟く。

 

 

 

 

「……これが正義なのか…?」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

人を殺す事で人を守る

 

より大きな善の為に

 

小を切り捨てる

 

 

本当にそれが正義なのか…?

 

 

 

 

悩める者は双剣を手に

 

 

空気に溶けるように消えていった




◉月▶︎日





最近の奴らは少し心を折るとすぐに情報を教えてくれるから楽だ。とはいえもう俺も34歳になる。そろそろ無茶はできなくなるか…
それでもまだ20そこそこだと思われる事も多いから大丈夫だと信じてる。
息子ももう15、6歳になる。俺の真似してか、女の子に声をかけて遊びまわっていると、ミアが苦言を呈し始めた。
楽しいならいいけど、女の人を不用意に泣かせるならケツ引っ叩いて説教するか。





この日はここまでのようだ




友人Y田よ、やっと推しが出るぞ、喜べ!
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