ナポレオンは爆死しました
先生が出来てからかれこれ1年経った。
メリーも6歳になったからそろそろ家の外に出たいらしい。
これまではひたすらに筋トレして、いつもと変わらず年中無休で胡散臭い家庭教師(ナイさんと言うらしい)と勉強していた。1ヶ月くらいはずっとふらふらしてたメリーも、今では慣れてぴんぴんしている。
そんな事よりも大切な事がある。メリーが外に興味を持ったのだ。
元々外に出たいとは言っていたが、主な原因はガブリエル先生だ。先生は、戦争から帰るたびに今回はこんな戦いだった、そしてこんな綺麗な所があったんだと教えてくれる。毎回、きっと君に似合うよとか、君が気にいると思って…とか言ってお土産をくれる事も あるせいかもしれない。
とりあえず、メリーが外に出たいなら俺は即座に行動に移す。
ほらそこ、親バカとか兄バカというんじゃありません!やめてくれ
まぁ、行動しますけど?
と、言うことでやってきました!書斎です!
〈それでは突撃!隣のお父様!〉
"わーわーどんどんぱふぱふ〜"
〈目指せ外出!〉
"私をそとにだせー"
「お父様、失礼します。」
「入りなさい」
そっと扉を開けるとそこには…
死人のような顔をしたお父様が…!
「お、お父様!?顔色が悪いです!お休み下さい!」
ただでさえ悪い目つきがさらに悪化して、目線で人が殺せそうな位だ。やべぇ。
「用件を早く言いなさい」
「そんなことどうでも良いです!休まないとお父様が、倒れてしまいますよ!」
「まだ仕事がある。」
いやいやいや、まだ仕事があるって…休んでよぉ!目つき怖いし、元々白い肌がもう真っ白すぎて気持ち悪いよぉ!
〈やべぇ…何がとは言わないけどやべぇ〉
"先生のこと呼んだらおとなしくなるかな?"
〈お母さんの方が良いんじゃないの?〉
"お母さんは『さいしゅうしゅだん』だよ。"
〈じゃあお母さんをダシに脅したら良いんじゃない?〉
"きくかな?"
「お母様に言いつけますよ!」
「ゔっ…しかし…」
多少狼狽えただけだった。ほう?ならばこうじゃ!
ぱたぱたと扉の方へ移動してみる。
「…待ってくれ。彼女を呼ぶのはやめて欲しい。」
ねぇ待って??なんで更に顔色悪くなってんの??これ以上ないくらい真っ白だったのに更に白く…というかもう今にも灰になって崩れていきそうな状態だよ?
〈お母様効果やば…〉
"前に一回お父さんがむりしてた時に、お母さんがへやに行ってお父さんのことなぐりとばしてたから。"
〈お母様つおい…〉
「でしたら是非休んで下さい」
「…………ならばメリーの用件を済ませてから休もう」
どんだけ悩んでんだよ…社畜かよ…メリーから聞いたぞ?お父様社長なんだろ?トップが社畜じゃダメだろ…
「では手短に。外へ行きたいです。」
「却下だ」
即答だな!なんだおめぇ親バカか!過保護か!嫌われんぞ!
「何故ですか?」
「外に出たら危ない事が多いだろう?メリーに何かあったら俺も彼女も心配する。だからダメだ。」
「何歳になったら外に出ても良いですか?」
「…2…0………だ…」
「家出しますよ?意地でも逃げ出して国外に出ますからね?」
「………」
黙りこくってしまった。なんか窶れてるようにも見え始めた。というかこの顔…見覚えがあるぞ?確か…そう、前世で父さんが溺愛してた妹に「お父さん臭い!」って言われてたときと同じ…絶望してる顔だ。
〈黙っちゃったね〉
"どうしよう…早くお父さんに休んでもらいたいのに…"
こちらは無表情を貫いたまま2人で脳味噌をフル回転させる。
その時
「話はぜーんぶ聞いてたよー!」
バーンと扉をすごい勢いで押し開いてきたのはガブリエル先生だ。
「帰れ」
「こんにちはガブリエル先生」
「こんにちはメリーちゃん。良かったーメリーちゃんがこいつに似なくて」
こんな可愛い子に帰れなんて言われたら僕泣いちゃう!
なんて言いながらもお父さんにハグしに行く先生はホモですか?幼馴染だから?さいですか。
「とりあえず!僕からの提案なんだけどね、僕のところ他に弟子がいっぱい居るんだけどね〜?大体メリーちゃんよりもちょっと上の実力の子が教え子の中で1番強い子なんだけど、その子と戦ってみて勝てれば外出。負ければ20までお預け!どう?」
〈どうする?〉
"ちょっとでもチャンスがあるならやる!"
〈了解〉
「…やります!」
「メリーちゃんがこう言ってるんだよ?まだ確定はしてないけど、可愛い娘のお願い叶えてあげれば?」
「…」
さっきから一言も喋んないなぁ
そんな時、お父さんが目を離した隙に先生がスススと近づいてきて
「
おまっそれは!娘が大好きな父親にとって
ええい!背に腹は変えられん!
「…お父様、お願いを叶えくれないのなら私はあなたの事を…大、大、大っ嫌いになりますよ」
がたりと椅子を蹴飛ばしてお父さんはこちらに近づいてくる。
真っ正面に立つと逆光で顔が見えなくなる。
こちらの身長は他の子よりも大きいであろう130cmくらい。6歳にしては大きい方だ。対するお父さんは190cmくらい。でかい。
「…わかった。許可しよう…」
▼お父さん は 何かが 欲しそうに こちらを見ている
〈どうする?〉
"ハグしたら良いんじゃないかな?"
〈本当に?〉
"たぶん"
よぉしメリー、信じるよ?
たぶんって言ったからね!なんて頭に響く声は無視してお父さんに抱きつく。ちょうどお腹辺りに頭があるのでグリグリと擦り付ける。
「お父様、大好きです!」
普段全く以って仕事をしない表情筋を引き上げて笑顔を作る。勿論心の底から嬉しいと思っているのはメリーも俺も同じ事。
つまりは美幼女の心の底からの嬉しい気持ちを表した輝く笑顔だ。
滅多に笑わないメリーの笑顔に驚いたようでお父さんは目を見開く。瞳に映るメリーはそれはそれは綺麗な笑顔をしている。ちょっと待て先生、なんで顔赤くしてんの?ロリコン注意報?そっちに意識が逸れた途端に視界が急に高くなる。
「わっ!」
お父さんに抱きかかえられているようだ。
お腹のところにお父さんの頭があって、さっきと逆転したなぁーなんて思いながらふわふわする癖っ毛をそっと撫でる。
少しだけ撫でてからふと、視線をあげると先生の真後ろにお母さんがいる。それよりもお母さ、お母様の背後にお見えになっていらっしゃるドラゴンはお母様のペットにあらせられますのでしょうか?
"お母さんがおこってる…"
〈どう対処すれば良いのかな!〉
"前にね、ナイ先生が教えてくれたんだけどね、東の方の国には[さわらぬかみにたたりなし]って言葉があるんだって"
〈どうしようもないのかーそうなのかー〉
先生が俺の顔色がおかしい事に気がついたみたいで背後を振り返ろうとした途端、崩れ落ちた。
あ…ありのまま
今 起こった事を話すぜ!
『俺がみている中でお母様の方に先生が振り返った瞬間崩れ落ちた』
な…何を言っているのかわからねーと思うが
おれも何を受けたのかわからなかった…
頭がどうにかなりそうだった…
催眠術とか超スピードだとか
そんなチャチなもんじゃあ断じてねえ
もっと恐ろしいものの片鱗を味わったぜ…
いやな、たぶんお母様が先生の顎に掌底を叩き込んだだけなんだろうけどね?
見えたのかって?そんな訳ないじゃん。ただ先生の左の頬の下の方が赤くなってるからだよ。
ドサリと音がしたせいでお父さんが気づいてしまった様だ。誰がいるのか気づいてしまったお父さんはSANチェック。
抱きついて回復した顔色がどんどん白くなってるから失敗かな。
「あなた?」
「シルヴィ、待ってくれ!話せば分かる!」
お父さんは首を横に振りながらジリジリと下がっていく。俺のことをしっかりと抱きしめながら。
お父さん、巻き込み、いくない。
「メリー、おいで?」
おかしいな…疑問符が付いているような声色なのに命令されてる…そして勿論逆らいませんとも。
先生との修行でつけた瞬発力と筋力をフル活用しながらスルリと抜け出す。
あばよ〜とっつぁん!生きたまま会えると良いなぁ!
タタタタとお母様の隣を走り抜け、後ろに倒れてる先生の近くに行く。
とりあえず小声で話しかけてみる。
返事がない ただの屍のようだ▼
惜しい先生をなくした。
とりあえず白目むいたイケメンとか目に悪いのでそっと目を閉じさせる。
見ろよ、こいつ…寝てるみたいだろ?気絶させられたんだぜ?
とりあえず神に祈っとこ。
〈アーメン〉
"アーメン"
▼月ω日
今日はお父さんに外に行きたいっておねがいした。大体のことをメルがやってくれたから私はほとんど何もしていない。でも、こんどのしあいはメルはアドバイスだけしかしないって。私なんかがかてるかなぁ?心配だけどいっぱいれんしゅうしたし、メルがついてるし、だいじょぶだよね。
お母さんが怖かったです。
さて、とりあえず外出するチャンスを取り付けることができた。あのチャラチャラわんこ系脳筋め、メリーに手を出したらゆ"る"ざ ん"!
ちなみにあの後にあった事は何も知らない。知らないったら知らない!
1つだけ。安らかな顔をしてたよ…うん。本当に。
お母様を怒らせてはいけない
この日はこのページで終わっているようだ。