県大会で疲れて爆睡しました。
銀メダルとったんで許してくだちい
息を切らして走る黒髪の少年のその顔は喜色に染まっている。
向かうのは森の中、大事な友の待つ月桂樹の下へ
木の下で野ウサギと戯れる少年は見目麗しく、まるで童話の様だった。
きらきらと輝く不思議な髪に海を閉じ込めた様な青い瞳、白磁の肌。触れれば壊れてしまいそうな程に繊細だ。
「どうしたの?」
その微笑みは世間の闇なんて知らない天使の様で、とても美しい。黒髪の少年の頬が赤いのは急いで来たからだけではないだろう。
「聞いてくれ!俺、商船の乗組員になったんだ!モレルさんって人の船なんだけど、「エドモン」っ」
「おいでよ、取り敢えず座りな。」
クスクス笑いながら自分の隣を叩く。
ストンと座ると、
「それで?カッコいいクルーのエドモンくんはどうしたんだい?」
ふふん!と自慢げに
「
モンテゴ商会とは、フランスでは知らない人はいないほどの大きな会社だ。主に香辛料と、布製品を扱っている。
「凄いじゃ無いか!」
でも…と少年、メルは続ける。
「そしたらエドモンとあんまり会えなくなっちゃうね。」
エドモンはハッとした顔になり、考え込んでしまった。
はい、どうもメルです。
うちは結構大きな会社だって知ってたけど、まさかうちの会社に就職(厳密には違うけど)するとは…
会うのは控えないとだな。
エドモンがパッと頭を上げると、
「そうだ!メルも来ればいいじゃ無いか!」
おおん…そうきちゃう?
「俺もそうしたいのは山々だけどね、母さんが許さないし…」
めっちゃショボンとしてるな…
「じゃあ俺、お土産持って会いに行くから!」
「楽しみにしてるね」
取り敢えず話はそこで切り上げて、森の中で2人で遊ぶ。
早く俺は消えなくちゃ…
「じゃあね、メル!また明日!」
「またね、エドモン!」
手を振って帰路につく。
家に着いてからすぐに部屋に行く。
服を着替えて一枚の便箋を出す。
そこにさらりと一文を書く。
【親にバレたからもう会えない】
そして机の引き出しから小さな小さな箱を出す。
古びた木の箱を開ける。
綿をシルクのハンカチで包み、箱の中に入れる。
自分の首にかかったサファイアのネックレスを外し、最近教えてもらった
彼に不幸が訪れませんように。
壊れにくくなるという、ナイ先生直伝の呪いも施す。
「これでよし」
箱にネックレスと手紙(メモと言った方が正しいかもしれない)を入れて蓋を閉じる。
その後はいつも通りに食事をして、湯浴みを済ませ、おやすみのキスをする。
いつも通りに稽古して、勉強をする。
「お嬢様、昨夜魔術を使いましたね?何かありましたか?
…そうですか。まぁ別に怒りませんよ、面白そうですし。」
何故かナイ先生にはバレたけど。
小箱をポケットにしまい込み、月桂樹の元へ走る。
昔は1時間くらいかけてたけれど、今じゃ30分もかけずに着く。
息切れ1つせずに着いたそこにはまだ彼は来ていない。
10分ほど待てばふんわりとした黒髪が木の間から見えてくる。
「お待たせ!さあ、いっぱい遊ぼう!」
15なのにまだ彼は純粋無垢で、とっても眩しい。
将来で復讐鬼なんて呼ばれるとは夢にも思っていないだろう。
日が傾き始めると
じゃあそろそろ帰ろうか、
という話になる。
「待って、エドモン。プレゼントがあるんだ。」
「プレゼント?なんだい?」
きょとんとする顔が面白くて、でも俺として会うのは今日が最後で、凄く複雑だった。
「はい、これあげる…大事にしてね」
「わぁ!ありがとう!開けてもいい?」
ここで開けられると凄く困る。どうしようか…
「うーん…ダメ」
家で開けて!
と言えば素直なエドモンは、
「わかった、楽しみにしておくよ」
とニコリと笑って手を振る。
「また明日!」
「…うん、じゃあね!」
手を振って走り出す。
ああ、バレてないだろうか。
全速力で走っているから、だから心臓が締め付けられるように痛いのだ。
視界がぼやけるのも目が乾いただけだ。
息が上手く出来ないのも。
全部全部、走っているせいだ。
「さよなら、大親友」
俺の親友はとても可愛い。
ただし男だ。
変質者に女の子と間違われて襲われる。
ただし男だ。
俺の初恋の人物である。
ただし男だ。
出会いは10年ほど前、貧乏な俺は少しでも父さんを助けようと思い港で手伝いをしていた。
獲った魚の仕分けなんかを手伝い、ほんのすこしの駄賃をもらっていた。
その帰りに、
「ねえ君、今暇かい?」
綺麗なソプラノボイスが聞こえた。
「えっと…俺?」
きっと間抜けな顔をしていたと思う。
「残念ながら君しかいないんだよね」
「あはは…うん、まあ暇だよ」
帰っても誰もいない家に戻ってすることなど無かった。
「じゃあ俺と遊ばない?」
その時の俺はとても嬉しくて、彼にグイグイ近づいていった。
「本当に?良いの?」
「勿論。だってこっちから声をかけたんだから」
フフ、と控えめに笑った彼は純粋に綺麗だった。
「そうだ!名前!俺はエドモン!エドモン・ダンテスだよ!」
勢いに驚いたのか、少し沈黙して、
「…俺は、メルだよ。よろしくね!」
そして疲れるまで遊んで、また明日!って別れたら、本当に次の日も来てくれて、
「また明日」
は会うための呪文だった。
メルは絶対に約束を破らない。
必ずどちらもまた明日と言って帰っていた。
1日もかかしたことがない。
なのに…今日は無かった
「また明日!」
「…うん、じゃあね!」
ただ、忘れただけかもしれない。
きっとそうだ。
そうに決まってる。
自分に言い聞かせた。
貰った小箱を握りしめて走る。
家の中に入って、
「父さん、ただいま。」
「おかえり、エドモン。…おや?どうかしたかい?」
箱をそっと開ける。一枚の紙が入っている。
そこには、
【親にバレたからもう会えない。】
という一言だけ。
「…うそだ…」
後から後から涙が出て止まらない。
ずっと、ほぼ毎日欠かさず会っていた。
大事な親友だった。
なのに…なのに…どうして?
こんなに急に…
「エドモン…?」
父さんが近づき、紙を覗き込んで
「…メル君からかい?」
こくりと頷くと、
「バレたら会えなくなるような立場だったのに、よく毎日会いに来てくれたね。優しい彼に会えなくなるのは悲しいけれど、エドモン、君の人生は長い。いつかまた会えるはずさ。」
父さんの大きな手が俺の頭をゆっくりと撫でる。
「それに、こんなプレゼントを貰ったんだから頑張らなくてはね。」
プレゼント…?まだ小箱の中に入っていたのか…
「…え…?」
小箱の中に入っていたのは蒼い宝石のネックレスだった。
貧乏な俺は宝石の不思議な輝きに見入ってしまった。
あぁ、メルの瞳とそっくりだ…
「これはサファイアだね。サファイアには危害から守ってくれる力があるそうだよ。」
大事にね。
そう言って笑う父さんは、俺が船に乗ることを心配していたと思えないほど清々しい顔をしていた。
そして数ヶ月後に俺は
2回目の恋をした。
*月¿日晴れ
エドモン君と、メルが別れた。
別に付き合ってた訳じゃないけれど。
エドモン君はウチの会社と取引しているところに入ったらしい。
今度彼の船が帰った時に視察と称していけないかしら。
エドモンとさよならをした。流石に会い続けてたらメル=メリーに辿り着かれそうだったから。
でも、メリーの幸せが1番大切だから。我慢する。
さみしい。
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▼おまけ
右から強さ順
【挿絵表示】
「何ウチの旦那と娘にベタベタしてるのかしら?」
「タスケテ」
「無理だな」
「ご愁傷様です」
この後ガブリエルがどうなったか知るものは本人達しかいない。