やはりね、カリスマ性が違うのよ
階段を登ると大広間に出た。
広大な部屋に巨大なシャンデリア。
舞踏会の会場のような場所で2人が剣を交えていた。
「あの力さえあれば!俺も魔王となれるのだ!!」
「馬鹿者が!!その行為がどれほど愚かなことか分かっているのか!」
「あの馬鹿を傀儡にしたのは正解だったな!あの程度の力で魔王を名乗るなど愚の骨頂!俺がキチンと使いこなしてやる!!」
「姫の力を奪うということだぞ!!」
「構わない!!俺が一生守り続けるからなぁ!」
「貴様ぁ!魔王様への忠義を忘れたか!!」
「何処の馬の骨とも分からぬ人間になど!渡してなるものか!!」
戦っているのはギルともう1人同じ魔族のようだ。
話の内容からではよく理解できないゼロは、ハオにギルから事情を聞くまでの時間稼ぎを頼む。
「俺が一番彼女を愛してるんだぁぁぁ!」
「一方的な愛など愛とは呼ばん。ただの自己満足だ。」
ハオはそう言ってギルと魔族の間に割って入ると、剣を指で受け止めギルの怪我を治療する。
突然の訪問者に2人とも驚いている。
「待たせたなギル。」
そしてギルはその言葉にゆっくりと振り返り更に驚きゆっくりと歩み寄ってくる。
まるで幽霊でも見ているかのようだ。
「ゼロ…なのか?本当に?帰って…来たのか?」
「あぁ。色々と大変だったがな。無事に帰ってこれた。」
そう言って頬を掻きながら苦笑いを浮かべるゼロ。
その時の手の甲の赤い紋章こそゼロ本人である決定的な証拠だった。
「遅いぞ馬鹿者…どれだけ姫が待ったと思っている…」
「色々聞きたい。何があった?」
ハオが喚きながらがむしゃらに剣を振るう魔族をあしらってる間にギルから話を聞いた。
魔王が亡き後、魔力の暴走が起きない様に魔法陣で力を制御していること。
その中でしかフェンリルが生きられないこと。
そしてその力の一部を村で揉めた兵士の1人が利用し、新たな魔王として君臨したこと。
そしてその力を手に入れようと四天王の1人が反旗を翻したこと。
「既に四天王の1人があいつに謀殺された。それに気付いた私たちが止めようとしたがこの有様だ。」
申し訳なさそうに目を伏せるギルの肩を叩く。
5年も待たせた自分が悪いと、後は全て任せろと呟きギルの横を通る。
「魔王の力をが無くなれば、あいつは自由になるのか?」
「あぁ。あの力は姫では扱えない。」
「無力な少女になるぞ?」
「ゼロがいれば問題ないだろ。それとも別れ際のあの言葉は嘘か?」
「敵わねぇなぁギルには。」
そんなやり取りを2人とも互いに背を向けたまましている。
これで魔王様との約束を果たすことが出来る。
そう思い亡き魔王への忠義を貫き通したギルは魔王の死後、初めて涙を流した。
(魔王様、彼はやってくれました。これでまた姫も笑ってくれるでしょう。)
感傷に浸るギルだったが、直ぐに涙を拭いゼロの姿を見て更に暴れる魔族へと向かって駆ける。
「貴様の相手は私だ!!相手を見誤るな!!」
ハオが身を引くとゼロの横に立つ。
「行かぬのか?」
「ちょっと緊張してな。」
「さっさと行け。こいつは我が仕留めよう。」
「頼んだ。」
ゼロはそう言って大広間の階段を登っていく。
魔族がそれを止めようとするが、ハオが目の前には立ちはだかりそれを妨害する。
「なんなんだ貴様は!俺の邪魔をするな!!」
「邪魔はお前の方ではないか?人の恋路を見守るのも年長者の務めぞ。」
「うるせえ!ずっと見てきたんだ…小さい頃からずっと!!俺だけの物だ!誰にも渡さない!」
背後から襲いかかるギルを横に剣を一閃薙ぐだけで吹き飛ばす。
実力的には互角だが、闇雲に暴れる目の前の魔族の相手は危険だ。
再び男を止めようとするギルを見つめ、
『下がれ。』
ただそう命じた。
それだけでギルは動くことままならず、ゆっくりと剣を納めながら下がっていく。
歯向かうことを許さず、ただ受け入れることしか出来ないハオの言葉。
それは力でも、魔法でもない。
圧倒的なまでのカリスマ性。
魔王が魔王たらしめるものの一つだ。
「あ、あんた何者だ!?まるで…まるで魔王の様な…」
「様を付けぬ不敬な奴が。我を越えられずして何が魔王か。」
黒い波動が目の前の魔族に当て、広間のど真ん中にまで飛ばした。
ゆっくりと階段を降りるハオにギルはいつの間にか畏まり膝をつき頭を下げていた。
「ギルと申したか。此度の件、誠に大儀である。」
「はっ!勿体なき御言葉であります!!」
ギル自身も謎だった。
彼の言葉がとても心地よく感じた。
一挙手一投足が重なって見える。
自分が忠義を尽くしたたった1人の魔王様と。
「我は異界の魔王。貴様のような雑兵とは格が違う。」
立ち上がり再度立ち向かおうとする魔族に一喝。
『跪くがいい。』
その言葉に抗えず膝をつく魔族。
何故か逆らえない圧倒的なまでの言葉の重み。
ギルは異界の魔王という言葉に納得がいった。
すると建物が揺れ壁や天井が崩れ始めた。
黒い雷のような魔力が壁や天井から穿たれてくる。
するとシャンデリアが耐えきれず落下し目の前の魔族に迫る。
「う、うわぁぁぁぁ!!!」
身動きが取れなかった魔族は潰され地面が崩落し、ギルは下へと落下していく。
それをハオが腰に手を回し抱えると地面へと降り立つ。
「あ、ありがとうございます。」
「気にするな。それよりとてつもない力だな。」
そう言いながら迫る黒い雷を手で払い除ける。
弾かれた雷が別の塔へとぶつかるとガラガラと音を立てて城の一角が崩壊した。
雷の威力もそうだが、それを片手で弾くハオの力に息を呑む。
「おやおや。お戻りですかハオ?」
「む?詐欺師か。巨体な力は彼女の事のようだ。」
「そのようですね。それより、一体何が起きてるのでしょうか?」
「ギル殿!一体何事でしょう!!?」
さっきまで戦闘していたホロウとブラッドだったが事が事だけに休戦したのだ。
「ブラッドか!とうとう戻られたのだ彼が。」
「なんと!ではこれはもしや…」
「あぁ、彼が姫を救ってくれる!」
「我々の本願が叶うのですね…」
ブラッドもゼロには好意的な人間だった。
それもそうだ。
彼の親族があの村に住んでいる。
それを命を賭けて助けてくれたゼロは彼にとっては救世主だ。
それに亡き魔王への忠誠心も見事なものだった。
だからこそ全てを話し協力して貰った。
「申し訳ありませんでした。貴方たちが彼の仲間であったと知らず、数々の非礼お詫び申し上げます。」
「いえいえ、貴方の行為は至極真っ当なものです。」
「その通りだ。ここの魔王は良い部下に恵まれたものだ。これほどの実力者が2人も残っておるとはな。」
ハオはそう言いながら収まりつつある雷を払い除ける。
「精進せよ。貴殿らは今後、姫に忠義を尽くすがいい。魔王亡き今、彼女こそが魔王の形見なのだ。」
『はっ!誠心誠意より一層の努力をして参ります!!』
そう膝をつく彼らにホロウは「見事な手腕で」と拍手している。
そして雷が止んでしばらくすると光が輝き始めた。
今、婚姻の儀がなされたのだとギルとブラッドは喜びに満ち溢れていた。
失われた姫君の笑顔が戻ったのだと。
はい長かったけど1話から先に進めるね!
長すぎたかな?
こっからはちょっとほのぼのしていきたい。
かなり闇な話だったし。
反省してますー棒