諦めて受け入れるギル。
彼の頑張りを応援しようー
戦争の爪痕が薄れていく中、街を領土を守るための部隊をギルに言われて編成作業をしていた。
書類作業などした事ないリパーは机で頭から煙を上げて唸っている。
ギルは黙々と作業していく。
「こういうのは…ハオの仕事でしょ…」
「いえ、リパー殿にもやって貰います。」
「なんでよ!僕はそもそも部下的なポジションで言われたことをただこなすだけでいいのに!」
「ゼロ様からの指示です。彼らには役職を与えろと。じゃないと自由に何するか分からないからとまで言われてます。」
「くっそー。流石ゼロだ分かってる……」
渋々といった感じで書類を見ながら部隊の編成をする。
数百以上のメンバーの中から適切な者を選出していく。
リパーはそれを机にそれを放り投げると、ブラブラと椅子を傾けながら天井を見上げる。
「ねぇギル、僕が勝手に部隊決めていいんだよね?」
「えぇ、この部隊の統括はリパー殿ですし。」
「ふーん?なら決めたよ。」
そう言ってリパーは今までの態度とうって変わり次々と資料に名前を書き込んでいく。
それも名簿も見ずに記載していくためギルが一度止めようとして記入された資料に目を落とす。
適当に書いているように見えたが、バランスよく長所と短所を的確に捉え補えるような組み合わせ。
それぞれが十全の力を発揮できる役割。
そして完璧といえる配置にギルは目を疑った。
これがさっきまでやる気の見えなかった人物なのかと。
『あいつらは好きにやらせると手に負えないが、何かしら役職を得たらそれを完璧に完遂する。』
ゼロ様の言葉の意味が理解出来た。
今までの警備方法とはかなり違うが、それがまるで間違いだったかに思えるほどリパー殿の編成は完璧だ。
そもそも全ての魔物を覚えているのか?
私でも未だに把握出来ていないというのに。
「リパー殿、名簿を見てない様ですが把握してるのですか?」
「してるよー?あれだけ毎日みんなで稽古してれば覚えるよ。」
簡単に言っているが不可能だ。
戦い方やスタイルなどまで全て把握するとなるとかなりのデータになる。
それさえも覚えているというリパーにギルの額から汗が流れる。
侮っていた。
ゼロ様の友人というだけの認識だった。
確かに腕は立つが、組織という中ではあまりにも自由な彼らは不適合者だと。
そんな認識だった。
特にリパー殿は子供のように気まぐれだ。
寧ろ自分とは真逆に近い性格なため嫌いな部類だった。
だが現実は私よりも広い視野を持ち、組織を活かすことを考えそれを実行するだけの力もあった。
敵わないと本気で恐れた。
自分の今まで築いてきたものが崩れていく音が聞こえた。
「あっそうそう、ギルには統括をしてもらうよー。」
「は、はぁ!?統括は貴方の役職です!!」
「いやだって部隊決めていいって言ったでしょ?だから統括は君、そんで僕は部隊長としてみんなと現場に出るからー。」
あまりにも勝手なリパーにギルの怒りは頂点に達した。
これほどの力を持ちながらなぜ!
どれだけ勝手なのか、ギルは初めて嫉妬に身を焦がした。
そして気づいた時には机に拳を叩きつけリパーを怒鳴りつけていた。
「いい加減にしろ!なんでそう勝手なんだ!!」
その言葉に部屋は静まり返り、その静けさがギルを冷静にさせた。
やってしまったと反省はしているが、ギル自身後悔は一切していなかった。
きっと、彼も面倒な女だと思うだけだろう。
口やかましい、偉そうなやつだと。
「いやいや怒らないでよ。ちゃんと理由があるんだから。」
だがリパーはケラケラと笑いながら、編成表を取り出しその配置地図を広げて説明を始める。
ギルは戸惑っていた。
なぜ、普通でいられるのか。
どうしてそんなにも平然としていられるのか。
「その…叱責しないのですか?リパー殿に…」
「えっ?なんで?勝手なことしてるんだから言われて当たり前のことじゃん。」
子供でも分かるよと首を傾げるリパーにギルは理解した。
懐の広さが、器が自分とは違うのだと。
全てを別の視点で捉えている。
「それに、はっきり言ってギルは指揮する能力がないからね。鼓舞する事は出来ても現場で適切に処理出来るほどの頭はないよ。」
そうだ。
リパー殿の言う通りだ。
さっき怒鳴ってしまったのも嫉妬からきたものだった。
当然のことにグゥの音も出ない。
「こういうのは経験だからねぇー。徐々に覚えていけばいいさ。ギルは負けず嫌いなんだからすぐに覚えるでしょ?」
そう次々と記入しながら笑みを浮かべるリパーにギルは何も言えなかった。
気付いていたのだ。
ギルが抱いた劣等感に。
だからこそ遠回りな発言でギルを刺激し、敢えて思いの丈を発散させた。
少し考えればとんでもないことをしたとギルが気づくことまでを見越して。
そしてちゃんと理由を説明しフォローまで忘れない。
本当に素晴らしい人だ。
ゼロの友人というのも今度ばかりは素直に頷けた。
そして評価を改めた。
彼はゼロに匹敵するほどの人物であると。
同時に思った。
彼の横に並びたいと。
「さて!そんじゃあこれ提出よろしくね!」
「わ、分かりました。」
「おっと!その硬い口調はなしなし!僕とは友達って感じでいいでしょ。」
友達。
友と呼べる存在など自分にいるだろうか。
部下は沢山いる。
だが自分と対等に話せる人は居なかったような気がする。
「そうか、ではリパーよ。これからもよろしく頼む!」
「はーい。僕の方こそよろしく!ギル!」
握手を交わすとギルは握ったリパーの手をじっと見つめる。
自分よりも少し幼く見えるリパーだが、その手は大きく力強い男性の手だった。
「どうしたのギル?」
「は!いや、何でもない!!」
慌てて手を離すギルの顔が少し赤くなっていることに気づいたリパーは額に手を当てる。
「熱かな?ちょっと無理させたしねぇー。ごめんよー?」
申し訳なさそうな顔をのぞき込みながら頭を撫でるリパーの腕を振り払い、資料で顔を半分隠しながら距離を取る。
「だ、大丈夫だ!ただの知恵熱だ!これを提出したら今日はもう寝る!!」
「それがいいねぇー。よし!なら僕も今日は終わり!ギルも早く上がりなよー。」
リパーははにかんで笑うと少し足早なギルに手を振るう。
ギルも少し気恥ずかしそうに小さく手を振って部屋から出ていく。
その足取りは軽く少し嬉しそうにギルは呟いた。
友か、と。
リパー?
えぇ無自覚ですよ?
計算しては出来ません。