色々と忙しい彼だが果たして依頼とは?
朝の5時に目を覚ましシャワーで寝汗を流し身嗜みを整える。
朝の食事を済ませて往診に行く頃には6時を少しすぎた頃だ。
何件か周り患者の症状を確認し、薬を調合しそれを手渡す。
もちろん代金はしっかりと受け取る。
まあ払えない時は払えないで気にしてはいない。
「いつも済まないね先生。」
「気にすんな。そっちこそ資金面は大丈夫なのか?苦しいんだろ?」
「お気になさらず、あまり使い道もありませんから。」
「そうかい。んじゃ大事にな。」
最後の往診を終えたカイは医院には帰らず、次の場所へと向かいながら道中の村に寄る。
何かあったのか野次馬が出来ているから気になったのだ。
人混みを割って入ると応急手当を教えている生徒の数人が倒れている1人の初老の魔族に心肺蘇生をしている。
「何があった?」
「先生!急に倒れて心肺停止してしまって!」
「突然胸を抑え始めたんです!!」
状況を聞きカイは心肺蘇生する生徒を退かすと手を倒れた男の身体に触れる。
そして液体の入った注射器を胸に刺すと注入。
急に呼吸し始め勢いよく体を起こす。
「い、一体どうしたのだ?」
何が起きてるのか野次馬の状況に混乱する男にカイは質問する。
その質問に男性は全て頷くととある食材を持ってくる様に伝える。
しばらくして食材を持ってきた男からそれを受け取ると、全員にその食材の危険性を説明し始めた。
「これは毒キノコだ。周りのキノコに形が似る習性があるから気付きにくいが、まだら模様が根っこの部分にあるから注意すれば分かる。神経毒で仮死状態にする薬の材料にもなるから気を付けろ。」
村人達は驚いた様子で次々と散っていき確認しにいく。
生徒達は流石ですと今回手を貸してもらった事に感謝して去っていった。
今回の事を経験し忘れないうちにまとめておくそうだ。
カイが刺したのは気付薬。
俗に言うアドレナリンだ。
仮死状態から復活させるためのものだ。
その薬の調合から、さっきの仮死状態との見分け方などをカイから聞いたのだ。
カイは勉強熱心な生徒に感心しながら目的地へと歩き始める。
辿り着いたのは正午だ。
昼には少し早いが向かう途中でおにぎりを1つ食べた。
これで十分。
「ようガキども。注射の時間だぜぇ?」
『うわぁぁぁ!!逃げろー!!』
そこは児童施設。
逃げ道のない部屋の中で不敵な笑みを浮かべながら注射器を構えるカイ。
子供たちは逃げ惑うが逃げ道がないからか部屋の隅に固まる。
「さて、誰からやろうかなぁ?」
「や、やめろー!やるなら俺をやれー!」
そう涙目の男の子にカイは一瞬にして近づくと軽く腕を振るう。
目を瞑る少年の頭を軽く撫でる。
「ほれ、終わったぞ?」
「えっ?も、もう終わったの?」
「ほら残りも並べ。痛くするぞー?」
その言葉にわらわらと順に並び始めカイは一人一人注射していく。
流行病に掛からない為の予防接種だ。
全員終わったかと思い帰ろうとした時だった。
「先生!急患です!!」
慌てて入ってきたのはブラッド。
確かこの前の定例会でリパーが国境周辺警備隊に入っていた。
「どこにいる?」
「そ、それが少し問題がありまして…」
「いいから早くしろ!殺してえのか!!」
「こちらです!運べないのでついてきてください!」
その言葉にカイは施設からブラッドと共に駆けていく。
ブラッドは本気で走りその後ろを黙ってついていく。
景色が変わって行く。
国境ギリギリのライン。
おいおい、このままだとドワーフ領だぞ?
侵略行為になりかねないぞ?
そんなことを考えていると国境を超えた。
ため息を吐きながら面倒なことにならないよう祈りながらブラッドの後をついて行くと、複数の魔族に囲まれた部隊が見えた。
その中心に1人の少女が倒れているが魔族じゃない。
ドワーフ族だ。
尻尾と頭に生えた耳が特徴で身体能力が素で高いのが強みだ。
屈強な奴なら一騎当千と噂される。
その種族の少女を魔物から守っているようだ。
通りで運べない訳だ。
ブラッドなら運べそうだが怪我人だ。
無理に運ぶよりずっといい。
「よくやったお前ら。」
「いえ!これも人命救助優先のリパー隊長の指示ですから!」
よく教育が行き届いてる。
さて、少し魔物がうざいな。
『失せろよ。』
その一言に強烈な殺意を混ぜて放つと、魔物の動きが止まりジリジリと後ずさると逃げていった。
これで治療に専念できる。
まずは止血だ。
かなり深く噛まれたのだろう傷に簡易な治療はされてるが、それだけでは不十分とタオルを手に兵士の1人に抑えるよう指示を出す。
次に傷の縫合。
目立たないよう小さく無駄なく正確に縫合していく。
時間をかけると負担が大きくなるため迅速に。
そして傷の消毒から固定までを済ませるとブラッドにGOサインを出す。
これなら運んでもいいが、魔族側に連れていくわけにはいかない。
拉致行為になる。
かといってこのままドワーフ領に乗り込めば侵略行為。
こういう時に融通が効かないのは面倒だ。
「あ、貴方は…誰です…か?」
「ようお嬢ちゃん。あんたこそこんな所で何してんだ?ここは危険なんだぜ?」
目を覚ました少女は指を少し離れた場所に向けるとそこに馬車が泊まっていた。
何かを運んでいる途中のようだ。
「そうかい。ならどこに運ぶ予定なのか分かるか?」
「この先の…大きな村なんです…」
「そこの近くまで運ぶ。後はお前でなんとかしろ。」
そう言って抗生物質を睡眠薬と一緒に飲ませると眠らせる。
「俺が馬車を近くまで運ぶ。この事をリパーに伝えときな。それと今日の講義は休みって事もな。」
「了解です。それでは失礼します。」
敬礼するブラッドと他の兵士に軽く手を上げると馬車に少女を乗せて発車する。
近くの村まで運ぶとそのまま入口までゆっくりと走らせる。
「これで誰か見つけるだろ。」
カイは1人、面倒な事を終わらせた事にため息を吐きながら帰路につく。
誰にも見つからないように。
だが、カイはまだ知らない。
この行為が後にまた面倒な仕事を増やすということに。
極悪人顔のカイ
似合わないですね笑