それは何に?
資料の量が日増しに増えていくのが分かる。
それもそうだろう。
人間との戦争が終わり滞った流通画流れ始めたからだ。
それにリパーのいきなりの部隊の総入れ替えと配置替え。
規律などの改正などまで始末させられた。
結果としてはかなりの成果が上がっている。
それこそ、領地内の問題が次々と報告されてくる。
その結果が目の前の莫大な量の書類だった。
問題が早く解決出来るのはいい事なのだが、これだけの書類を目の前にすると気が滅入ってしまう。
そんな時にブラッドと呼ばれる魔族の元四天王がドアをノックして中に入ってくる。
その手には黒いファイル。
それにため息を吐くハオにブラッドは申し訳なさそうな表情で苦笑いを浮かべている。
「また…問題か?」
「えぇ…ですが今回は他よりも優先度の高い問題になるかと。」
「見せてみよ。今度はなんだ?道の整備か?それとも傷痕の撤去か?」
「さらにややこしい事になるかと。」
それ以上の問題にハオは眉間を抑えながらまたため息を吐く。
向こうの世界でも問題は色々とあったがここほどではない事に元の世界が恋しくなる。
ブラッドから受け取ったファイルの中を確認し始める。
警備部隊についての行動とその後の顛末、そしてそこにカイが介入した事にハオはファイルを閉じる。
「いかがしましょう?」
「外交に関してはゼロに任せる。魔王だからな。」
「おや?それでしたら私がいきましょうか?交渉は得意ですよ?」
そう言ってハオの手からファイルを奪うと、窓際でそれを確認する1番の問題児。
こいつに任せるのは不安しかない。
いや不安どころか寿命が縮む思いだ。
1番見つかってはならぬ奴に見つかってしまったようだ。
「お前だけでは行かせん。それに毎回思うが、お前のは交渉ではなく脅迫だ。」
「これは心外ですね。私だってやれば出来るものです。」
「今までの行いが悪い。『貴様』だけでは行かせん。これは決定事項だ。」
今にも姿を消し外交に向かおうしているホロウに、割りと本気で言うと渋々と言った様子で諦めた。
ファイルを返そうとするホロウにハオは手を突き出すとゼロに渡すよう伝える。
ホロウはそれに一礼して答えると消えていった。
「リパーには伝えてあるのだな?」
「はい。城に行くのが面倒だと言ってましたね。」
「まったく、小間使いとは御苦労であった。下がってよいぞ。」
ハオの言葉に敬礼し部屋を出るブラッド。
その顔は満足そうな表情を浮かべている。
ハオは1人になると書類を次々と処理していく。
(さっさと終わらせるか。今日は忙しくなるな。)
そんな愚痴を心にしまい込みただひたすらに書類へとサインを書いていく。
終わった頃には昼になりカイが部屋へと入ってきた。
少しバツが悪そうな表情をしている。
ハオは綺麗になった机に飲んでいた紅茶を置く。
「別に気にはせん。お前の行動は称賛されるべきことであって咎めるような事ではない。」
「まあそうなんだけどよ…ほら、他国だろ?また面倒なことにならねぇかと思ってな。」
「フフッ、なに。先に動いたのは我々ではなく魔族達だ。もし大事に至った場合、彼らにも責任は取ってもらう。」
ハオはソファに座るカイの前に紅茶を出すよう誰かに言うと、カイの後ろから紅茶が差し出された。
振り返るとホロウがニコニコとした笑顔を顔に貼り付けて立っていた。
「相変わらず神出鬼没だな。それに何考えてるかまったく分からねぇわ。」
「褒め言葉として受け取っておきますね。」
カイは紅茶を飲むとハオは本題を切り出した。
「さて、誰が外交に行くかだが…やはりゼロと姫に行かせるか?」
「それが無難ではありませんか?ゼロは誰よりも頭のキレる人ですから想像以上の結果を持ってくるのでは?」
「想像以上?」
ハオはホロウの言葉に頷くと何かを考え始め、ホロウはカイは何のことだか分かっていない様子だった。
そんなカイにホロウが言う。
「えぇ、同盟などでしょうか。」
「同盟だって?今もそんなもんだろ?」
「いや違う。我も考えていたがこの世界は同盟を結ぶことが最優先事項でもある。」
ハオはそう言うと指を弾いて取り出したホロウの白いボードに世界を書き込んでいく。
次々と領土とその国の種族を書き込んでいく。
書いているとホロウが指を鳴らし、ここにいないリパーとギルそしてブラッドを呼んだ。
重要な役職に就いた者には聞いておいて欲しい話でもあるからだ。
「さて、それでは講義を始めるぞ。」
「それよりゼロとあの嬢ちゃんはいいのかぁ?」
「構わん。ゼロも馬鹿ではない。フェンリル嬢にも説明している事だろう。」
ハオはそう言って説明を始める。
「率直に言う。この世界の種族の半分、いやそれ以上滅びを迎える。」
ハオの言葉に魔族勢が驚いているが、聖域勢はそこまで驚いてはいないようだ。
恐らくそこまではリパーもカイもなんとなくで把握していたのだろう。
「まず、繋がりがない。最低限の資材や食料などの流通はあっても種族間の出入りが圧倒的にない。」
「それのどこが問題なのですか?」
「それだけ他国との関係が良好ではない。ということは滅びを迎えてもなんらデメリットがないということ。種族の滅亡とは、概ね誰の助けも得られずして滅ぶものだ。」
「ですが、それだけなら…」
何とかなるのでは、と言葉を続けようとするブラッドにカイとリパーは甘いと斬り捨てる。
「人間側が攻めてきた時。圧倒的な物量にどう対抗する気だ?」
「僕達が居なかったらどうなってたか考えたことある?」
2人の言っていることは最もな事だ。
ギルとブラッドもその言葉に苦い顔をしている。
滅んでいた事を理解したのだろう。
状況的には城に警備をろくに配置することも出来ず、侵入を許してしまった事実があるからな。
我々が来なければ既に魔王城は乗っ取られていたであろう。
それだけギリギリの所であった。
「話を続けよう。同盟国が居ればこのような危機も、ましてや攻めいられるような事もなかったであろう。これが同盟のメリットの1つでもある抑止力だ。」
「抑止力…ですか?」
ギルは首を傾げている。
本当に分からないのか?とハオはため息を吐く。
1から全て教えるとなるとどれだけ面倒な事か…
「私にお任せを。」
そう言って頭を下げるホロウ。
正直、こういった話をわかり易く説明するならホロウが適任だ。
我では話を難しくするようであるからな。
頼むと一言呟くと、ため息を吐き同時にギルとブラッドが消えた。
「カイはなんとなく分かったか?」
「あぁ、あいつらの反応。他国との交流が一切ない。」
「それは問題だよねぇー。というかよく物資の流通が出来るね。」
「それも最低限だ。よくここまで自分たちの領域だけで生計を立てられるものだ。」
恐らく魔王城での暮らしもあまりいいものではなかったのだろう。
だからこそ耐えられたが、人間側はそうもいかず攻め込みやすい魔族領を狙ったのだろう。
ゼロが魔族側についたのが救いだな。
はっきり言ってしまえば、魔王のフェンリルの首を取るだけならゼロ1人でも可能だろう。
それだけこの国は、この世界を知らない。
そしてそれは他国にも言えることだ。
平和が思考を鈍らせる。
ため息しか出ない
はいそういうこと。
まったく他国と手を取り合わずに鎖国状態の種族たち
結果、低い生活水準ということです